糖質制限をすると死亡率が上がるので危険。

そういう情報をしょっちゅう目にする。

今まであまり気にしたことなかったけど、代表的な論文のデータを自分の目でチェックしてみた。

 

Low-carbohydrate diets and all-cause and cause-specific mortality: Two cohort Studies

Ann Intern Med. 2010 Sep 7;153(5):289-98. doi: 10.7326/0003-4819-153-5-201009070-00003.(ここ

 

この研究では、Nurses' Health Study (NHS)とHealth Professionals' Follow-up Study (HPFS)という、医療従事者の2つのコホートを研究対象としている。

 

NHSは1976年に開始した30〜55歳の女性看護師121,700人を対象としたコホート研究で、参加者は1980年、1984年、1986年、1990年、1994年、1998年、2002年に食事頻度アンケート(FFQ)に回答した。

 

HPFSは1986年に開始した40〜75歳の男性の足病医、検眼士、薬剤師、歯科医、獣医師51,529人を対象にしている。参加者は1986年、1990年、1994年、1998年、2002年に食事頻度アンケート(FFQ)に回答した。

 

FFQの回答から低炭水化物食スコアを算出した。さらに、摂取した食品を動物性と植物性に分け、動物性食品が多い動物性低炭水化物食スコア、植物性食品が多い植物性低炭水化物食スコアも算出した。

 

今回の研究では、NHSの場合は最初のFFQが回収された1980年をベースラインに、HPFSの場合は1986年をベースラインに設定した。

ベースライン時にがん(非黒色腫皮膚がんを除く)、心臓病、糖尿病の既往がある人を除外した後、1980年から2006年まで追跡調査が行われたNHS(女性)85,168人、1986年から2006年まで追跡調査が行われたHPFS(男性)44,548人を対象とした。

 

26年間追跡したNHSでは12,555人が死亡し、そのうち2,458人が心血管死、5,780人ががんによる死亡だった。

20年間追跡したHPFSでは8,678人が死亡し、そのうち2,746人が心血管死、2,960人ががんによる死亡だった。

1986年の時点でのデータによると、総低炭水化物スコアが高い人、および動物性低炭水化物スコアが高い人は、男女ともBMIが高く、現在喫煙者である可能性が高く、一方で野菜と果物の摂取量が低かった。反対に、植物性低炭水化物スコアが高い人は、アルコールと全粒穀物の摂取量が多い傾向があった。(1986年は、男女のデータの一貫性のために選ばれた)

 

Table 1抜粋

スコアによって10群に分けている。

D1が一番スコアが低かった群(つまり、高炭水化物群)

D10が一番スコアが高かった群(つまり、低炭水化物群)

 

 

とあるのだが…

この時点で、FFQの精度に疑問が生じる。

 

[NHS](女性)

総低炭水化物食スコア

D1 1821 kcal BMI 24.0

D5 1795 kcal BMI 24.2

D10 1641 kcal BMI 24.8

動物性低炭水化物食スコア

D1 1817 kcal BMI 23.9

D5 1804 kcal BMI 24.3

D10 1630 kcal BMI 24.8

 

[HPFS](男性)

総低炭水化物食スコア

D1 摂取カロリー 2012 kcal BMI 24.7

D5 摂取カロリー 2007 kcal BMI 25.4

D10 摂取カロリー 1881 kcal BMI 26.5

動物性低炭水化物食スコア

D1 摂取カロリー 2010 kcal BMI 24.5

D5 摂取カロリー 1995 kcal BMI 25.4

D10 摂取カロリー 1867 kcal BMI 26.6

 

NHSもHPFSも、D1群は一番摂取カロリーが高いのにBMIが低く、D10群は一番摂取カロリーが低いのにBMIが高い。

こんなこと、あるだろうか?

これは明らかにD10群のアンケート回答が不正確であることを示していると思うのだが…

 

たしかに、アンケートの回答によると、HPFSの場合は活動量に違いがあったようだ。D1群に比べて、D10群は明らかに活動量が少なかった。しかし、NHSでは活動量に違いは見られなかった。なので、少なくとも女性に関しては、摂取カロリーとBMIの関係に疑問符がつく。

 

長くなるので、次回に続く。