低炭水化物食の全死亡率と原因別死亡率 NHSとHPFSの研究 その2 の続きである。

 

 

 

 

いろいろ気になる点はあるが、このようなFFQ結果をもとにして、全死亡と原因別死亡のリスクを算出した。

 

低炭水化物食スコアが一番低いD1群を対照として、一番高いD10群のハザード比とP trendは以下のようになった。

NHSは女性、HPFSは男性のコホートである。

 

[全死亡]

総低炭水化物食スコア

NHS 1.07 (1.01-1.24) p<0.001

HPFS 1.19 (1.07-1.31) p<0.001

動物性低炭水化物食スコア

NHS 1.17 (1.08-1.26) p<0.001

HPFS 1.31 (1.19-1.44) p<0.001

植物性低炭水化物食スコア

NHS 0.79 (0.73-0.85) p<0.001

HPFS 0.81 (0.74-0.89) p<0.001

 

[心血管死]

総低炭水化物食スコア

NHS 1.00 (0.84-1.20) p=0.54

HPFS 1.15 (0.96-1.37) p=0.008

動物性低炭水化物食スコア

NHS 1.07 (0.90-1.28) p=0.102

HPFS 1.21 (1.01-1.44) p<0.001

植物性低炭水化物食スコア

NHS 0.77 (0.66-0.91) p<0.001

HPFS 0.77 (0.65-0.92) p=0.002

 

[がん死亡率]

総低炭水化物食スコア

NHS 1.10 (0.98-1.23) p=0.056

HPFS 1.32 (1.11-1.57) p=0.008

動物性低炭水化物食スコア

NHS 1.15 (1.02-1.29) p=0.001

HPFS 1.45 (1.23-1.72) p<0.001

植物性低炭水化物食スコア

NHS 0.94 (0.84-1.06) p=0.39

HPFS 1.00 (0.84-1.18) p=0.35

 

全死亡率は、男女とも総低炭水化物食、動物性低炭水化物食で高くなった。

一方で、植物性低炭水化物食では男女とも低くなった。

 

心血管死亡率は、男性において総低炭水化物食、動物性低炭水化物食で高くなった。

しかし、植物性低炭水化物食では男女とも低くなった。

 

がん死亡率は、総低炭水化物食の男性と、動物性低炭水化物食の男女で高くなった。

植物性低炭水化物食では、男女とも影響は見られなかった。

 

 

ということで、印象としては、たしかに低炭水化物食で死亡率が上がりそうだけど、男性に比べれば女性への影響はそれほど大きくなさそう、という感じ。

また、植物性低炭水化物食の場合は、むしろ死亡率を下げるようなのが興味深い。

FFQの結果を見る限りでは、植物性たんぱく質の摂取量よりも植物油の影響が大きいように思う。これは、オリーブオイルの効果だろうか?

 

日本人の場合、もともとラードやバター、チーズなどの動物性油脂の摂取量が少なく、むしろサラダ油の過剰摂取が問題視されているくらい。

また、日本人はもともと大豆、大豆製品の摂取量が多い。

なので、日本人が標準的な食事から植物性低炭水化物食に変更したとして、どこまで効果があるかは未知数だ。

 

少なくとも、アメリカの標準食を低炭水化物食にすることはそれほど大きな問題ではなく、植物性低炭水化物食に変更することはメリットが大きいようだ。

 

ただ、今回のデータでは、低炭水化物食と言ってもそこそこ炭水化物を摂取しており、いわゆるロカボ(1日の糖質摂取量130 g以下)にも及ばない。まして、スーパー糖質制限(1食の糖質摂取量20 g以下)では全くない。

なので、厳しい低炭水化物食の場合は、健康へのデメリットが生じる可能性はこの論文データでは否定できない。

 

一般的に、極端な食事法はデメリットがあるので、バランスよく摂ることが重要であり、制限するなら緩めの制限がよい、と言われる。

おもしろいのは、極端な食事法を信奉している人たちは、「中途半端な制限では効果がない!」と主張すること。糖質制限も菜食も、どちらも全く同じ主張をしている。

 

ベジタリアン食やヴィーガン食だって、やり方によっては健康被害が生じるし、正しい知識できちんとやれば健康的になる。

厳しい糖質制限も同じだと思う。やり方次第。糖質制限をしている日本人は、主食代わりにおからや大豆粉、高野豆腐を利用していることが多いから、自然と健康的な糖質制限を実践してるんじゃないだろうか。

でも、「肉食べ放題だ!」と喜んで、野菜は嫌いだからほとんど食べない…とかやっていると、死亡リスクが上がるのかも。

 

正しい知識で実践できる人は多くない(糖質制限には肉好き野菜嫌いが飛びつきやすい)ので、下手にこれらの食事法に手を出すとデメリットがあるからバランスよく摂った方が無難、ということになるんじゃないかな。

 

やっぱ、いつも書いているように、デンプン質でない野菜、豆類(豆製品)、きのこ、海藻、ナッツ類などをしっかり摂り、その上で乳製品、卵、魚介類、白肉(鶏肉)、赤肉(牛肉、豚肉、羊肉)を摂ればいいんだと思う。調理に使う油は、オリーブオイルを基本にして。

 

となると、外食や中食はできるだけ避けて、自炊することになるんだよな〜

 

ま、ボチボチやっていこう!