初・糖尿病教室 前編の続きである。

 

教室の前半は医師による話だった。

医師の話は…まあ、こんなもんかな。

よどみなく話す点では聞いていてストレスなかったけど、

ちょっと淡々としすぎかなーと思った。

ま、相手が高齢者だしね。あんなもんかもね。

 

肝腎の中身については、全体として結局何が言いたかったのか

ポイントがよく分からなかった。

大まかには、糖尿病の基本的なことで、

受けた印象は、最終的にはカロリー制限が大事ってことだろうか

(わたしの個人的な感想)。

 

途中、血糖値と炭水化物の話が出てきたのでちょっと期待した。

(管理栄養士の話の前だったからね)

丼物とバーベキューの写真を並べて、

どっちが血糖値を上げる?と患者に問いかけてきた。

そして、丼物の方が炭水化物が多いから血糖値を上げますよ、

というのはいいとして。

そのあと出したグラフが、

炭水化物は1時間くらいで血糖値を上げるけど、

脂質は6、7時間くらいにダラダラ〜っと血糖値が上がります、というもの。

↓こういうグラフのタンパク質なしバージョンね。

 

 

脂質は長い時間をかけて糖に変換されるから〜との説明。

 

問題は、医師の説明の仕方が、

血糖値を上げるのは炭水化物だけじゃなくて、

脂質も時間をかけて血糖値を上げるのだという

印象を強く与えるように聞こえたこと(わたしの個人的な感想)。

上のグラフが示すように炭水化物はしっかり血糖値スパイクを起こすのに比べ、

脂質での血糖上昇幅はわずかなんだけど、

そんな説明はなくて「脂質も時間をかけて血糖値を上げます」と。

そして、このグラフを見て聴衆も

「炭水化物は血糖値をすごく上げるんだな」じゃなくて、

「やっぱりアブラはアカンなー」と納得してる!

脂質はよくないという意識は頭にしっかりあるんだね。

その意味では、ちゃんと教育されていると言える。

まあ、わたし自身、今でも飽和脂肪酸についてはスタンスが固まってないからね。

人のことは言えないな。

 

それから、運動についての話で。

最近は筋肉が重要だと言われているから、

有酸素運動だけじゃなく無酸素運動、つまり筋トレも大事だと言われてます、と。

そこまではいい。

でもね、有酸素運動は呼吸しながらする運動で、

無酸素運動は息を止めながらおこなう運動、っていう説明はどうなのー!

たしかに、歯を食いしばって力を入れる運動だと、

思わず息を止めちゃうけども。

でも、有酸素と無酸素って、呼吸をするかしないかの違いじゃないやん?

ミトコンドリアでクエン酸回路から電子伝達系によって

酸素を使ってATPを作りながらおこなうのが有酸素運動で、

酸素を使わず細胞質での解糖系のみでATPを作りながらおこなうのが無酸素運動。

って、こんな説明しても高齢者には難しいんだろうなぁ。

そこを分かった上で、

聞き手に分かりやすいように息をするか止めるかで区別してるならいいんだけどね。

 

最後に駆け足で、ちょっとだけ専門的な話が出てきた。

そのひとつが、アカゲザルのカロリー制限実験。

2匹のアカゲザルの写真を並べて、どっちが若く見えますか?

実はどっちも同じ歳で、若く見える方はカロリー制限したサルなんですよ、と。

 

もうひとつが、インスリンって重要でいろんな生物にあるんですよ、

そして長寿と関係していることが分かっていますと、

線虫・ショウジョウバエ・マウスの

インスリン様シグナルを簡単に示して話は終わった。

↓こんな感じの図ね(B図のみバージョン)。

 

 

図の詳しい説明はなし。

一般向けの内容じゃないから、それは当然なんだけど。

医師の話し方からすると、聞き手は

「ああ、インスリンは健康長寿に重要なんだな」ということと、

「カロリー制限が健康長寿の秘訣なんだな」ということを

強く印象づけられたと思う。

 

でも、上の図の意味が分かる人だと、

インスリンシグナルが長寿を阻害してるってことが明らかなわけで。

長寿のためにはインスリンを大量に出さない方がいいんだなって思うだろう。

 

医師の話から受ける印象とは真逆だよね。

 

注)こういう図では、↑(矢印)マークは活性化を示し、Tマークは阻害を示す。

つまりインスリン/IGF-1シグナルは下流のAkt/PKBを活性化し、

Akt/PKBはFoxoを阻害することが示されている。

そして、A図を見ればDAF-16(マウスでのFoxoに相当)が長寿遺伝子を

発現させることが分かる。

 

それから、アカゲザルの研究の話。

 

サルにおいてカロリー制限が寿命を延長するかどうかというのは、論争の的だった。

最初に「効果あり」とする論文が2009年に発表され

(医師が紹介した2匹のサルがこれ)、

その後、「効果なし」とする論文が2012年に発表され、

この2つの報告をした研究者たちが自分たちのデータをすり合わせて、

最終的に「効果あり」という報告を2017年に出している。

 

うん…そうなんだけどね。

 

この研究は、大まかに言うと

自由摂食群に比べてカロリー制限群は

加齢性の疾患による死亡率が低かったというもので。

「効果なし」とした研究では、

コントロール群のサルは実際には完全な自由摂食ではなく、

過体重にならない程度に食事量を抑えられていた。

また、「効果なし」の方では自然の食材に近い餌を与えていたのに対し、

「効果あり」の方は各栄養素を揃えやすいように

人工的な栄養素を用いていた。

たとえば、タンパク質源はラクトアルブミンだし、

炭水化物源はショ糖が45%を占めていた。

 

自由摂食というのは、自分の本能の赴くまま、

お腹いっぱい食べるということだ。

その上で、半精製材料を用いた餌を与えた場合だと、

カロリー制限食の最大限の効果が見られるのかもしれない。

 

つまり、ヒトに当てはめると、

精製糖や精製穀物、加工食品を多用しながら

食欲の赴くまま食べるような食生活を送っている場合、

カロリー制限をすればメリットがあるかも、ということになる。

そりゃそうだろうね。

逆に、普段から少し気をつけて、

未精製穀物や自然の食材を多用し、肥満にならない程度の食生活をしていれば、

それ以上のカロリー制限をしてもメリットはないかも、ということ。

 

それから、別の研究だけれど、

マウスやサルのカロリー制限群は、コントロール群と比べて活動量が増えるらしい。

お腹が空くから、餌を求めてウロウロするのではないか?と推測される。

 

それに比べて、ヒトがカロリー制限した場合、

筋肉量が落ち、骨密度が低下してしまうという報告があるようだ。

ヒトはお腹が空いても自分で食物を得ようと動き回らないし、

逆に体がしんどくて動きが鈍るのかもしれない。

 

カロリー制限の研究がアメリカで盛んなのは、

日本よりも肥満が多く、それによる疾患が大きな問題とされているからだろう。

動物実験での摂取カロリー30%減の制限食というのは

過カロリーを適正カロリーに抑えるという意味であり、

適正カロリーを30%減にすることを意味するものではない。

この点を誤解しないように気をつけないとね。

 

この前の初診で感じがよかったから期待したけど、

ちょっと期待しすぎたかな。

ま、どうでもいいや。

どうせ次回からは元担当医に戻ることだし。

しかし、上司がこの方向性だとしたら、若手下っ端も同じかなぁ…

 

予想はしてたけど、参加する意味はなかったな。

でもまあ、糖尿病専門医がどんなふうに話すのか知りたかったし、

糖尿病教室ってのがどんな感じで開催されているのか分かったし、

その目的は達成できたかな。

来月は違う糖尿病内科の専門医が担当するようだ。

わたしとは今後も接点がなさそうだけど、

どんな医師なのかちょっと見てみたい。

でも、それだけのために参加するのは時間の無駄かなぁ。

それに、来月は教室終了後、「生き生き会?」の総会とやらがあるらしい。

やっぱ、参加はこれっきりかな。