先日、またプカさんが考えさせられるネタを提供してくださった。

プカさんの記事にあるリンク先によると、

現在の日本の医療は、

不特定多数の患者を統計で一括りにして

エビデンスワールドという仮想世界を構築し、

個々の患者を仮想世界に当てはめてコントロールする、としている。

それに対して、欧米では

患者の自己管理能力やライフスタイルも含めた

リアルワールドを生きるひとりの患者に対して、最適なエビデンスを適応する。

医師は情報を提供し、決定するのは患者、

つまり、インフォームド・チョイスが重視される。

 

患者の自己決定権、か。

これは、わたしも重視しているところである。

 

血糖コントロールを今以上によくしてやろうと思いたち、

そのためには何をすべきか?を医師に相談せず勝手に自分で考えた。

そして、糖尿病を患っている血縁者を見渡し、

肥満ではないにも関わらず発症している場合が多いことから、

もともとインスリン分泌能が低い家系であろうこと、

さらに、自分の場合は高血糖を長年放置し、

酷い状態まで陥ったことから、

インスリン分泌能はかなり失われてしまったであろうことと推定した。

そして、血糖コントロールには糖質を制限するのがいいという考えに至った。

 

その結果、それまでの食後の血糖値爆上がりを

ある程度抑えることができるようになった。

それを確認した後に、医師に緩い糖質制限を始めたことを告白したのである。

幸い、クリニックの医師は患者に干渉するタイプではない。

逆に言えば、熱心な指導もしない放置タイプであったので、

わたしはなんの支障もなくそのまま糖質制限を続けられている。

欲を言えば、一緒になって食事療法についていろいろ話をしたいが、

たとえ医師にその気があったとしても

短い診察時間の中では難しいことだろうと思っている。

 

このように、患者自らが考え行動し、

医師がそれをサポートしていく形が理想だとは思うけれども。

これはこれで、患者視点の仮想世界ではなかろうか、とも思う。

 

医師視点でのリアルワールドでは、

ある患者は厳格な糖質制限をしたいと主張し、

次の患者は厳密な脂質制限で糖質リハビリをしたいと主張し、

ある患者はとにかく筋トレすれば糖尿病は完治すると主張し、

別の患者は何も考えず、先生にお任せします、と言う。

その一人一人の背景まで踏み込んで考慮し、サポートするのである。

糖尿病に限っただけで、この事態である。

大きな病院の専門医ならいいけれど、

小さなクリニックの町医者が

他の疾患全てで同様の対応をしなければならないとすれば、

さて、現実問題として可能なのだろうか。

 

可能か不可能かは別にして、

おそらく、問題となるのは医師本人の主義主張が多分に影響してくる点であろう。

患者と同様に、医師も疾患に対して自分の主義主張を持っているだろう。

先に紹介したリンク先では、インフォームド・チョイスとは

たとえ患者の選択が医師の意に沿わなくとも患者の決断を受け入れる、とあるが、

医師とて人間である。

糖尿病には糖質制限が最適だと思っている医師のところに

脂質制限派の患者が来て糖質リハビリをしたいと言ったとき、

果たして患者の側に立ったサポートができるだろうか。

こうなってくると、患者は自分の主義に合う医師を探し出す必要が出てくる。

硬直化していると批判されるガイドラインに沿った医療の場合、

メリットはどの病院、どの医師にかかっても

ばらつきが少ない標準的な治療が保証されるという点ではないだろうか。

 

ネット上では患者同士が熱い議論を交わしてたりして、

みんな熱心に自分の疾患と取り組んでいるように見受けられるけれど、

実際は大多数の患者は医師にお任せタイプではないかと思う。

自分で考え行動せよと決定権を与えられたところで、

何をどうしていいか分からない、

医師に任せた方が簡単、そう思っていないだろうか。

 

なぜそうなるのだろうかと考えてみるに、

やはり、皆保険制度のデメリットではないかという点にたどり着く。

検診を受けて注意されても真剣に考えず放置し、

発症してしまってから仕方なく治療を受け始める。

これは、いつでも気軽に治療を受けられるという安心感があるからだろう。

もし、発症すれば高額な医療費がかかるということであれば、

検診で注意を受けるとみな、

発症を少しでも抑えるためには何が必要か、

その病気に対する知識を積極的に学ぼうとするのではないだろうか。

 

と、治療を受け始めてから、

それも治療を始めて1年以上経ってから、

ようやく真面目に取り組み始めたわたしがエラそうに語ってみた。

 

皆保険には皆保険のいい部分がたくさんある。

全ての人が平等に治療を受けられるのは素晴らしいことだと思う。

この制度と、患者主体の治療が両立できればいいのだけれど、

今の医療体制に求めるのはちょっと酷ではないかという気もする。

 

ま、糖尿病に限定すれば、

全患者(可能であれば発症前の段階から)に

血糖値測定を義務づけ毎日の血糖値変動を可視化すれば、

患者の意識は大きく変わるとは思うけどね。

そのためには、SMBGよりも

穿刺しなくていいリブレのようなFGMがいいと思う。

食後のピークとか分かりやすいし。

なにをどれだけ食べれば高血糖になるのか、

どんな運動をすれば血糖値が下がるのか、

これが見えるのと見えないのとでは理解がかなり違うと思う。

 

ただ、患者がどんな選択肢を選ぼうとも、

それに向けて努力するには最低限の知識が必要だ。

どの食事療法を選ぼうと、

どんな食材にどんな栄養素が含まれているのか、

ある程度は理解しておかなければならない。

根菜は糖質が多いから食べないと言いつつ、

鈴カステラを食べるようでは困るんである。

 

ま、90歳にもなったら、好きな物を好きなだけ食べてもいいような気はする。

ちなみに、上記エピソードの大叔父の姉、

つまりわたしの祖母も長年糖尿病だが、

今年96歳、杖なしで歩くし、認知症の欠片もない。

同居家族と折り合いが悪いせいで、自分の食事は自分で用意している。

栄養バランスなんてあまり考えていないだろうし、

医師から指導されても対応なんてできないだろう。

もう、この歳になったら、食を楽しんでほしいと思う。

 

話が逸れた。

 

ということで。

自分の個人的な希望だけ述べると、

いろいろ語って相談できる茶飲み友だちがほしい!という、

ここにたどり着くのであった。