退院してしばらくして、

病院で渡されていた手紙を開業医に持って行くことにした。

 

まず、内科のクリニックで市立病院からの手紙を渡す。

一応、ここの医師も糖尿病学会の専門医だ。

「これからの治療は、市立病院で続けるんやな?

 まあ、頑張りや」

そう励まされて、話は終わった。

手紙を渡しに来ただけということで、

診察料もなく帰された。

 

次に泌尿器科のクリニックへ。

入院前にここでもらった尿バッグではなく、

市立病院でもらったレッグバッグを装着していた。

ここでも手紙を渡して終わりかと思っていた。

まだ、排尿障害の薬は残ってるし。

と思ったら、

 

「バルーンカテーテル、抜きましょう!」

 

バルーンカテーテルを使い続けると、

自力で排尿することがますます困難になるということは

ネットで見て知っていた。

だから、いずれは止める方向になるだろうなとは思っていたが、

このタイミングだとは思ってなかったので驚いた。

 

バルーンカテーテルと尿バッグを止めるということは、

自己導尿するということである。

マジかー!

 

「90歳のお婆さんでも上手にされてるから、大丈夫」

 

そう医師に言われても、大丈夫な気がしない。

女性看護師に付き添われ、トイレで練習することに。

思わず、

「男性なら簡単そうなのに…」ともらすと、

「でも、男性の場合は尿道が長いから痛みが強いみたいよ?」

と看護師さん。

そう言われると、男性の方が大変かもしれないと思った。

 

看護師にアドバイスされながら練習したものの、

たった1度の練習で、果たして自分一人で上手くできるのか?

不安になりながら、

自己導尿用の使い捨てカテーテルを受け取って帰宅した。

自力で全く排尿ができない今の状態だと、

1日に4回、時間を決めて自己導尿すること、と指示された。

 

バルーンカテーテルを抜いたことで、

尿は膀胱に溜まり続けているはず。

しかし、時間がたっても一向に尿意を感じることはできなかった。

仕方ない、自己導尿をしなければ。

 

クリニックではそれほど苦労せずにできたのに、

いざ一人でカテーテルを入れようとしても、

焦るばかりでなかなか上手くいかない。

ようやく上手くいったときは、どれほどホッとしたことか。

 

こうやって、最初はなかなか上手くできなかった自己導尿だが、

いつの間にか、割とすんなりできるようになっていった。

慣れってすごい。

そりゃそうか、90歳のお婆さんでもできるようになるんだから。

 

しかし、こんな手技、いくら上達したって

誰にも自慢できないのが残念だ。

 

自己導尿ができるようになったおかげで、

尿バッグの煩わしさからは解放された。

足に装着するレッグバッグにしても、

やはり邪魔になるし鬱陶しい。

他人の目もなんとなく気になる。

市立病院で新しくもらった尿バッグとレッグバッグは、

使われないままサヨウナラとなったのだった。