お小遣いはボブ・ディランのために・・・即売所で見かけた男の子。

Legacy RecordingsのFBページに掲載されたちょっといい話を転載します！

お小遣いはディランのために・・・即売所で見かけた男の子。

ボブ・ディランの東京公演が昨日終わった。来日記念盤が出たので、連日、レコードの即売所で販売のお手伝いをした。様々なお客様が色々な表情をしながらボブ・ディランの作品を買ってゆく。ある日、ディランのTシャツを着た小学生の男の子が大人に混じって商品を見ている。近くにいるのは両親とお兄ちゃんだろう。親に言われてかなと思ったら、その男の子が『ブロンド・オン・ブロンド』のLPを指し、「これに入っている曲とかさならないのはどれですか？」と訊いてきた。該当する2枚を示すと、その2枚を眺め、やや悩んだ末に「買います」と。1万円を超える代金なので親が支払うと思ったら、その男の子がポケットから小さな財布を取り出しお金を店員に渡したのだ。この男の子、何者？・・・目の前の驚きの出来事が信じられずにいた。

その神々しい男の子への興味が消えない中で迎えた最終日、グッズ売り場で同じ一家を発見。母親に自己紹介の上、驚きを伝えアレコレ質問する。ディランは11歳のお兄ちゃんの方が好きで、どうしてももう一回観たいというので自分のお小遣いならばという事で今日は来ました、私とお兄ちゃんが観るんです、と。兄弟は親の影響でディランが好きになったのではなく、音楽をストリーミングで楽しんでいるうちに吉田拓郎が好きになり、拓郎の歌に似ているのでディランが好きになり、もう1年経つそうだ。11歳の兄はライヴのチケット代、10歳の弟はLP代、貯めてた二人のお小遣いはディランの来日で無くなってしまったようだ。

今回の日本ツアーは16日で見納め。待ち焦がれていたものが終わると寂しくもなるが、二人の男の子が何処かで大好きなディランを聴いていると思うとなんだか嬉しくなってくるものだ。

＜文・栗爺＞