和久井光司さんの最新著NYパンク以降のUSロック完全版』を読んだ。単なるNYパンクのディスクガイド本ではなく、そこからいかにその後のUSのロックに繋がっていっているか、その切り口がとっても面白かった。

 

僕は1979年、大島から東京に出てきた高1の頃からいろんな音楽を聴くようになったので、すべてが後追いなわけですが、パンクと言えば最初は英国ロック=>ロンドン・パンクの流れで聴いてたので、思想やファッションや背景など全く分からないまま、ロックン・ロールの延長線上で聴いてました。その後いろんな本でいろいろ知るわけですが、最初は全然知識なんてないので、好きな音から入って、そんなんでNYパンクの入り口としてはロックンロール=>ニューヨーク・ドールズ=>ジョニー・サンダース、スプリングスティーンからのパティ・スミス、全米トップ40聴いてたのでブロンディ・・・的な感じくらいでした。

 

でも圧倒的に何かが変わったのがトーキング・ヘッズ。1980項高2の時に『リメイン・イン・ライト』聞いた時はぶっ飛びました。どっちかというと英国のロック、メロディ大好き、ヒットしてたポップスを中心に聴いてた僕にとっては、既成概念をぶち壊されたというか、わけわからん、でもこんなのもありなんだと、思った記憶があります。ちょっと背伸びした感じで聴いてる感じというか。


和久井さんが本の中で書いてた、最初にNYパンク、New Waveなるものを聴いた時「とっても頭のいい人の音楽だ」「ただのミュージシャンではない感じ」と思ったという感じは、「たしかに!」と。僕自身もすご~く思そんな風に思ったことを読みながら思い出したりしてました。

 

そこからテレビジョンやらラモーンズやらいろいろ聴きました。ただ、その先のニュー・ウェイヴまでは行きつかなかったんですけどね。OLD WAVE好きだったもので(笑)。僕なんかだと「最先端」についていけなくなっちゃって、まあ当時はLP買えるお金も限られてたってのもありまして。

 

でも、僕がこの本の中で個人的に面白かったのが、なかなか日本では語られないNYパンクとブルース・スプリングスティーンの関連性や、ブロンディ~ザ・ナック、マイク・チャップマンというプロデューサーの話、そして、パワーポップ~アメリカン・ニュー・スタンダードの話。その後聴いてきた、僕が大好きなアルバムが、NYパンクからこんなところまで繋がってるんだなあと思ったりしたのは新鮮でした。

 

ビッグ・スター、ラズベリーズ、チープ・トリック、ジェリーフィッシュ、更には(個人的大好物な)The Shoesやなんとスポンジトーンズまで入って語られているなんて、ちょっとびっくりでした。そして、REM、スマパン、ピクシーズからBECK、グリーンデイ、フィオナ・アップルまで。NYパンク本と呼ばれるものの中にここまで入ってるのないですよね。

 

「パンクは進化を促す思考だ。固定概念を粉砕しないと"自由につくる場所"がアタマの中にできないから、スペースを確保するためにブチ壊すしかないときもある」と書かれていた言葉が印象的。今だからこそ体系化できるってこともあるんでしょうけど、こんな流れがあって、こんなところまで影響があって、なんてのを今改めて知ると、この年になってもまだまだ聞いてない魅力的な音楽があって、ちょっと聴いてみようって気になる・・・そんな気にさせてくれました。CBGBやMax's Kansas City、一回行ってみたかったなあ。。。

和久井さんの展覧会「和久井光司 私をつくったもの展」が今ちょうどやってますので、もしよろしければ
https://shell102.com/wakui_koji2022/

 



●『NYパンク以降のUSロック完全版』

https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309256887/

目次
1 THE STORY of NEW YORK PUNK
2 PATTI SMITH,TELEVISION,RICHARD HELL
3 RAMONES
4 TALKING HEADS,DAVID BYRNE
5 NEW YORK PUNK/NO WAVE
6 JONATHAN RICHMAN & THE MODERN LOVERS
7 BLONDIE,THE KNACK
8 DEVO
9 POWER POP/AMERICAN NEW STANDARD 123

 

内容説明
いいかげんオールド・ウェイヴとはおさらばしよう。「パンク以後の半世紀」をいまこそ語るべきだ。ラモーンズ、テレヴィジョン、トーキング・ヘッズ、ブロンディらNYパンクの主要バンドから、ディーヴォ、ジョナサン・リッチマン、ノー・ウェイヴ一派、パワー・ポップ、その後のUS型ニュー・スタンダード・ロックまで600枚のアルバムを掲載した世界初の究極ディスコグラフィ。

<河出書房新社>
和久井光司氏入魂の新刊は45年に及ぶUSロックの精神史を網羅するディスク・ガイド
75年に発表されたパティ・スミス『牝馬』から、デイヴィッド・バーンの世界的大ヒット映画『アメリカン・ユートピア』まで、45年に及ぶUSロックの精神史を網羅するディスク・ガイド。
 
<著者>
和久井光司 (ワクイ コウジ)
1958年生まれ。総合音楽家。スクリーン等を経てソロ活動を開始し、ボブ・ディラン公認カヴァー集『ディランを唄う』等の作品を持つ。著書に『「at武道館」をつくった男』『放送禁止歌手山平和彦の生涯』等。