1979年11月30日、本国英国で『ザ・ウォール』は発売となりました。それから38年後、日本で紙ジャケとしてリリースしたわけですが、ここまで大変な作業になるとは・・・。

 

今日は今回の紙ジャケで使用したマスターテープの音源について書いてみます。最初は『ザ・ウォール』のDISC2から始まりました。

 

(紙ジャケ『ザ・ウォール』DISC2レーベル面色校)

 

今回の紙ジャケで使用したマスターは2011年発売のいわゆる「2011リマスター」盤のマスターを使ってます。表記も「2011リマスター」としていますので、なーんだ2011年に出たのと一緒じゃんって思ってる方もいると思います。でも、実はちょっと違うんです・・・

 

2016年1月にピンク・フロイドの全カタログがソニーに移籍となり、すぐに国内盤CD をリリースしたかった。でも、できなかった・・・。これは要するに、これまで出ていたEMIとワーナーから、今回日本でのプレス工場がSONYに変わるので、フロイドの音を司どるプロデューサー、エンジニア、ジェイムズ・ガスリーのチェックを受けないと、許諾を得ないとリリースしてはならん!というお達しがあったため。

 

ということで、実際の工場でプレスした製品と全く同じもの、販売されるのと一緒、皆さんが実際に耳で聴くのと同じ状態の「テストプレス」を送れと。

 

(『The Wall』 テストプレス盤)

 

まずは、『ザ・ウォール』DISC2の2011年リマスター音源の「データ」が送られてきました。即効スタジオで過去のEMIから出たものやワーナーから出たものと聴き比べてみたところ・・・あれ?ちょっと違うぞ??はっきりわかるのは音圧・レベルの違い。レベルは過去CDよりも押さえられてるし、はっきりくっきりというよりも、まろやかな、よりアナログ的とでもいいましょうか。

 

そこで、海外に新たにリマスターしたの?って問い合わせたところ、あくまでも「2011年マスター」だと。でも、それ以上は突っ込んでも教えてくれなかったのです。2011年のマスターはジェイムズ先生がオリジナル・マスターから最善を尽くして作り上げた渾身の作品。なので、それがベースになってるのは間違いなし。でも昨年のアナログ発売の際、クレジットで「Mastered by James Guthrie and Joel Plant」と明記されているので、そこでなんらかのアナログ用のマスタリングが行なわれたはず。なので今回送られてきたマスターはそれが元になっているのではないかと想像しています。2011年のマスターなんだけど、更に今の時代に合ったマスタリングが施されたような気が。

 

最初は当然のことながらBlu-spec CD2で出そうと思っていたので、この『ザ・ウォール』DISC2をBSCD2でテストプレス作って送りました。が、残念ながら先生からはNGとのメールが。ある箇所がデジタリーに聞こえると言われ。。。今は音もデータで送られてきますから、理論上はマスターテープ自体の中身、状態が変わるはずないんです。でもカッティングやプレスの過程での微妙な音の違いをジェイムズ先生は許してくれないんですね。

 

(『The Wall』 DISC2テストプレス盤)

  

そこで、工場でカッティングを少しづつ変えてもらいながら、プレスのラインも変えてもらいながら、テストプレスを作っては送り、作っては送り・・・何度送ったことか。そのたびにスタジオで出来上がったテストプレスを聴いて、過去のCDなどとともに聴き比べをこちらでもするわけで。もう嫌ってくらい『ザ・ウォール』のDISC2聴きました。

 

しかし、ジェームズ先生の耳にはBSCD2はどうもあわなかったみたいなんです(もっとアナログ感が欲しいみたいなことを最後まで先生はおっしゃっておりました。我々レベルでは非常にいい感じだったんですが)。その時点でかなり時間を要してましたし、もうこれ以上やっても変わらないだろうという結論にも達し、結局通常のCDのフォーマットで行くことにしました。

 

そこで、ジェイムズ先生側から新たに送られてきたものは、データではなくPMCDというフォーマットのもの(CDRみたいな)。これで作ってくれと。あまりこの形式でマスターを作ることは推奨されていないのですが、しょうがないので、そこからマスターを制作。それからまた何度かCDでテストプレスを作り、なんとか最終的に「これで行こう」となり、他のアルバムのテストプレスを作っていったわけです。

 

(テストプレスはレーベル面が印刷されないため、どっちが表でどっちが盤面かわからなくなる時あります)

 

『永遠(TOWA)』を除いて、ジェイムズ先生のアプルーヴをもらわなくてはならないものが全部で14タイトル、16枚分あるわけでして、各タイトルごとに様々なカッティング、プレスを試し、何度もテスト・プレスを作成してジェイムズ先生へ送付、確認、そして彼からこうしてほしいという要請を元にまた再度繰り返し。テストプレスを作成し、送り・・・

 

(紙ジャケ『ザ・ウォール』DISC1レーベル面色校)

 

最初のスタートが『ザ・ウォール』のDICS2だったのですが、最後の最後までOKがでなかったのが『ザ・ウォール』のDISC1だったんです。最終的に2017年7月末、『ザ・ウォール』のDISC1が許諾され、全タイトルのアプルーヴがおりました。『ザ・ウォール』のDICS2から1年半・・・最終的にジェイムズ先生も納得の、彼らが求める音を再現するための最良のソニープレスを実現することができました。

 

(『The Wall』 DISC1テストプレス盤)

 

ピンク・フロイド2011年CDマスターを使用したソニープレスの国内盤初CD化。「2011リマスター」としか表記できないんですが、過去のもの比べるとちょっと違う。時代の違いでマスタリングの志向も変わってくるんですが、昔は音圧重視みたいのがあって、リマスターといえば突っ込んで、できるだけレベルを上げる方向になった時期もありました。でも、近年は音圧はどっちかというと抑え気味、というか音圧、音をいじるというよりも、オリジナルのイメージを損なうことなく、大切に丁寧にマスタリングしていく傾向がありますから、今の時代に合わせたものに微調整したのかもしれませんね。

 

是非EMI盤やワーナー盤お持ちの方は聞き比べてみていただけますと。ちょっと違ってるはずですので。

 

 

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