鼻の穴が痒い。
恐らく鼻毛の仕業だろう。
指で鼻毛を掴み抜くことを試みた。
『ちょっとした勇気』が必要だ。
恐る恐る掴んだ鼻毛を勢いよく抜いてみた。
長い。
長い鼻毛が数本抜けた。
中には白髪になったものもある。
鼻に違和感がある時はこの白髪が主犯格な時が多い。
黒い毛と違って、白いのはコシがある。
再度、恐る恐る掴んだ鼻毛を勢いよく抜いてみた。
ちぎれた。
ちくしょう。大物を逃した気分だ。
ふと、我に返った。
就寝前に、何をしているのだ。
抜けた鼻毛をじっと見る。
日常はくだらない事をしている時間の方が長いのかもしれない。
そんな事をして寝て目覚めた今、この一枚を聴いている。
奥田民生の1995年に出したソロ・ファーストアルバム『29』だ。
奥田民生が色々なアーティストから影響を受けたのがよくわかる一枚だ。
アコースティックな1曲目は古井戸やディランIIを彷彿させる。
3曲目はビートルサウンドを散りばめている。
このアルバムで一番秀逸なのは4曲目『息子』だろう。
父親の目線で見た息子との関係性が良く描かれていて、ほっこりさせる。
ユニコーンがいったん解散したのが1993年で、このアルバムを出すまでに2年近くかかっている。その間にシングル『愛のために』を出してミリオンセラーを出し、やりたかったサウンドを発散するかのように『民生ワールド』が展開される。
1996年にPUFFYをプロデュースしデビューさせる。
翌年の1997年には井上陽水とコラボした『井上陽水奥田民生』を結成。
ちなみに奥田民生は小泉今日子ファンだ。小泉今日子ファンはセンスがいい。
飄々としているが、割とアンチイズムをもっていて、今の音楽に対してのパロディで批判するような作品作りもしている。
僕は個人的にこのアルバムの中から好きな曲を上げるならば『30才』だ。ちょっと『民生っぽくない』曲で、お洒落な音の使い方をしている。
このアルバムは奥田民生の『コア』だと思っている。
その後にやっている仕事も帰結すると本作に辿り着く。そんな一枚だ。
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