朝、目を覚ますとシトシトと春の雨が降っている。
何となく、カフェオレが飲みたい気分だ。
インスタントのカフェオレがあったので、封を切ってマグカップに入れてお湯を注ぐ。
この作業が、なんだか貧乏くさくて嫌いだ。
ひと手間かけることで「飲む」というたったそれだけの作業にも、深みが出る。
しかし、そこまでの元気がないので、何の意味もない「飲む」という事に重点をおいて簡素なカフェオレを飲む。
せめて、音楽だけはこの春雨にマッチしたものを聴きたいと、いつものように棚の前に立つ。
「今の俺はなにが聴きたいんだ。」
ウェス・モンゴリーに目が行く。
いいんじゃないのか。
「The Incredinle Jazz Guitar Of Wes Montgomery」を棚から出し、プレイヤーにのせかける。
「信じがたいジャズ・ギター」という邦題のついた本アルバムは『グルーヴ・ヤード』『フル・ハウス』と共にウェスの名を高めた傑作だ。
いきなりアップ・テンポの「エアジン」で始まり印象的なリフのオリジナル「Dナチュラル・ブルース」に続く2曲が特に素晴らしい。フラナガンとのピアノとも相性がよく、寝ぼけた頭を覚醒させてくれるのが解る。
そこに、外から聞こえてくる雨音と、カフェオレの湯気から香るカフェオレの香りがマッチしてなんとか、心地よい気分になってきた。
朝の、こういう時間を雑にすると一日がかなり台無しになる。
現代人には作法がない。
自分なりの作法がある人は、私の知る限り品格がある人が多い。
自己満足と言えばそれまでだが、このひと手間で大きく人としての器が変わるならやった方がいい。