寝台特急「北斗星」の深き沼 その13 | 夜汽車の汽笛への憧情

寝台特急「北斗星」の深き沼 その13

毎度ご覧いただきありがとうございます。

 

「北斗星」の車両紹介シリーズもラストに近付いてまいりました。

模型工作ネタはもう少しだけ先になりますので、もう少々お待ちくださいませ。

 

さて、今回は「北斗星」の縁の下の力持ち。電源荷物車について書いてみたいと思います。

 

第八章 電源荷物車

 

 

今更ですが、「北斗星」には24系客車が使用されています。

24系客車はサービス電源を電源車から供給する集中電源方式を取っており、そのためには発電機を積んだ電源車が必要となっています。

 

「北斗星」も例に漏れず電源車を連結していますが、「北斗星」の電源車は空きスペースに小さな荷物室があり、電源荷物車となっています。

一般的な荷物輸送は1986年に終了しているものの、新聞や雑誌などの荷物輸送は今でも引き続き行われており、「北斗星」でも東北地区の朝刊などが運搬され、荷物室も本来の用途で利用されていました。

ちょっと脱線しますが、24系客車には荷物室のない電源車も存在し、カヤ24形という形式となっています。荷物室がない分短い車体で独特の存在感を放っていました。

 

さて、24系客車の電源荷物車といえばカニ24形が一般的ですが、「北斗星」も例にもれずカニ24形が活躍しています。酷寒冷地に対応するため様々な装備が行われ、500番台の番台区分が付きました。

ところが、1989年の定期列車増発に伴いカニ24形が不足し、異例の50系改造車、マニ24形も加わっています。

カニ24形、マニ24形ともJR東日本とJR北海道に配置されましたが、同じ「北斗星」用ながら両社で独自の歩みを遂げ、細かな仕様も異なるものになりました。

以下、そんな個性派揃いとなった両社の「北斗星」の電源荷物車を紹介していきたいと思います。

 

・カニ24形500番台

 

 

カニ24形500番台は、北海道に乗り入れる「北斗星」に使用するためカニ24形に酷寒冷地装備を施したものになります。

JR北海道、JR東日本の共通形式となっており、番号も続番号となっていますが、経年により独自の変化がもたらされています。

 

・JR北海道

JR北海道に配置されたカニ24形は3両で、番号は501〜503となっています。全てカニ24形0番台からの改造車です。

この3両はオロネ25形500番台などと同様国鉄時代に改造され、JR北海道に継承されています。

いずれも他の北斗星車両に合わせて金帯で、発電機器は廃車になるまで原型の物を使っていました。

このうち501は初期型であるカニ24 2からの改造車で、マイクロスカートが残っているのが特長でした。JR北海道にしては車両毎の変化は少なく、502と503はほぼ同じ姿となっています。

細かな特徴としては、JR北海道のカニ24形のHゴムは全て灰色のままで、発電機関も原型だったこともあり、比較的原型を保っていたというところでしょうか。経年変化としては、荷物ドアは改造当初金帯となっていましたが、後年通常のステンレスドアレールに変わっています。

 

外観はこんな感じです。灰色のHゴムで、屋根には4基のラジエターファンが見えます。側面にはガラリ窓がたくさんついているのも特徴です。金帯となっている以外はかなり原型に近い姿です。室内には排気量31Lの430psディーゼルターボエンジンが2基+発電用が搭載されています。

 

後部妻面は12系などから引き継がれた折妻ながら非貫通のHゴム3枚窓という独特の風貌になっており、幕式のトレインマーク表示器があります。

 

反対サイドです。不規則に並ぶ狭窓とガラリ窓がいかにも電源車の趣きです。発電用エンジンの音は勇しく、夜行列車の風物詩にもなっていました。

 

 

さて、JR北海道のカニ24形500番台は運行開始とともに1・2号に使用され、1989年の3・4号定期化に伴い、JR北海道担当編成の3・4号にも使用されます。1999年の2往復化後は1・2号及び臨時列車に使用されますが、2008年の1往復化後には定期運用を失ってしまいます。この時に501と503は廃車となり、仲間と共にミャンマーに旅立っていきました。502だけはトラブル対応時の予備車として車庫の片隅で居眠りをする日々を過ごし、稀にJR東日本車のカニ24が故障した際には廃車と見紛うほどのボロボロの姿ながら、ピンチヒッターとして活躍していました。2015年3月の定期運行終了時に最終運転で上り列車に使用したJR北海道車を札幌まで回送する際に使用され、これが最後の舞台となりました。

 

模型の方はTomixから初期の金帯バージョン、後年のステンレスドアレールになった姿双方ともモデル化されており、マイクロスカート付きの501も別途モデル化されています。流石に細かいところにこだわるTomixらしいところですね。Hゴムはちゃんと灰色になっています。なお、501については伝説の「瞬殺セット」に含まれていたため、中古価格も高く、入手はかなり困難になっています。KATOの方は旧製品で503がモデル化されています。運行当初時がモデルになっているためHゴムは灰色です。安心安心w

 

・JR東日本

「北斗星」においてはJR北海道とJR東日本を比べると大抵JR北海道の方がバリエーション豊富で沼になっていますが、この電源荷物車に於いてはJR東日本の方がバリエーション豊富で個性派揃いになっていますw

JR東日本のカニ24形500番台は全部で8両で、番号は504~511となっています。JR北海道の3両に対して随分数が多いですが、これは臨時列車を基本的に東日本で持っていたことと、「北斗星」以外の北海道乗り入れ列車に対応することを想定したことによるものです。

このうち、北斗星運行開始当初に用意されたのは504~509で、いずれも0番台からの改造でした。

このうち、マイクロスカートを持つ初期型(1~8)からの改造車も3両含まれていますが、いずれもマイクロスカートは撤去されています。

いずれも金帯を巻き、北斗星の「顔」として活躍しました。

一方、510および511は増発等によって1990年頃に増備されたもので、こちらは種車が100番台となっています。このため、車体は若干長く、後部妻面も切妻となっていました。

中でも510番は異色の存在で、帯は100番台由来の車両としては珍しい白帯(本来100番台車は銀帯または金帯)となり、配置も青森でした。これは「北斗星」用ではなく、青森地区からの臨時の北海道乗り入れ列車に使用する事を想定されたものだと思われますが、実際には「日本海」や「出羽」等に使用されたほか、「北斗星」にもピンチヒッターとして登板したことも何度かあるようです。このため、「北斗星」としては異例の「白帯電源車」として知られる事になりました。

なお、「北斗星」の担当だった尾久客車区(現車両センター)は「出雲」も担当していたため、夏季等には「出雲」用の100番台がピンチヒッターとして「北斗星」に入る事もあったようです。

さて、JR東日本のカニ24形500番台の特徴としては511番を除いて1991~1993頃に機関更新が行われていることで、発電用エンジンが小型で強力かつ防音ケースが付いて静かなもの(DMF15Z-G)に変更されたほか、発電機も更新されています。これに伴い、側面のガラリ窓の廃止やラジエーターファンの減少(4→2)が行われ、原型よりだいぶスッキリした姿になりました。

 

左がJR東日本の更新車、右がJR北海道の原型車です。ラジエーターファンが減っているのが判りますね。
 

511番だけは何故か更新対象から外れて、金帯となった以外は比較的原型を保っていました。

 

もう少し細かく形態を見てみましょう。

 

0番台改造の504~509の外観です。機関更新後の姿で、ガラリ窓のないスッキリした姿になってます。屋根もシンプルになりました。
発電エンジンはカバー付になり、音も少し静かになりました。(とは言え、それなりの音量はでてますがw)
大きなJRマークが目立ちますが、504~507、509は上寄り、508だけは下寄りについていました。
 

反対側はこんな感じ。4つあったガラリ窓が消えてスッキリしてます。Hゴムは東日本の更新車らしく全て黒でした。

510と511は100番台改造車なので、車体が少し長く、後部妻面は平面です。このうち、510は貫通扉が埋められ窓が拡大&Hゴム固定化された変形車で、何とも言えない独特の風貌となっています。(これはカヤ27となった後もそのままでした。)

510および511については模型をもっておらずここで画像を紹介出来ないのが残念ですが、510については夏に入手予定となっているので、その際には改めてアップしようと思います。

 

さて、JR東日本のカニ24形500番台はJR北海道の同形車に比べて複雑な生い立ちとなっています。

1988年、「北斗星」運行開始と共に504~509が登場し、5・6号および季節列車の3・4号で活躍を始めます。1989年の3・4号定期化の際にこれにともなう輸送力列車「エルム」が運行開始となり、こちらでも活躍を始めます。

1990年に臨時列車の北海道乗り入れの増強により増備を行うことになり、100番台改造車が登場します。品川に511が、青森に510が配置されました。一見「北斗星」と無関係に誕生した両者ですが、後に「北斗星」に関わって来ることになります。

1994年、品川客車区閉鎖に伴い、「出雲」用の客車が尾久に転属してきます。これに伴って511が尾久にやってきて、「北斗星」の一員として活躍するようになりました。なお、逆に「北斗星」用だった504~509が「出雲」での活躍も始めるようになりました。

青森配置の510は「鳥海」「出羽」「あけぼの」「はくつる」「日本海」の他「カートレイン北海道」で活躍。基本的には「北斗星」に入らなかったものの、多客期や検査都合等で尾久の500番台が不足した際にピンチヒッターとして「北斗星」でも活躍しました。

1999年の「カシオペア」運行開始と「北斗星」2往復化行われますが、これに伴い青森の510が「カシオペア」用の予備電源車カヤ27 501に改造されました。カヤ27として元510が尾久にやってくる代わりに504が青森に転属しています。また、運用範囲も「北斗星」3・4号と臨時列車、「出雲」となっています。

2006年、「出雲」廃止に伴い500番台車の「出雲」運用が終了します。この際に形態統一のためか100番台改造車の511が青森に転属し、コンバートされる形で0番台改造の504が尾久に復帰。再び「北斗星」の一員に加わりました。

一方、青森に移った511は「日本海」「あけぼの」用となり、「あけぼの」として上野に顔を出すことはあるものの、その後「北斗星」として使用されることはありませんでした。

2008年の「北斗星」1往復化により、ついに廃車が発生します。504と509が離脱し、505~508の4両体制となりました。その後、JR北海道の502の支援を受けつつ老体に鞭打って活躍を続けましたが、2015年についに「北斗星」の定期運用が終了。臨時化後も活躍を続けましたが、同年8月に「北斗星」の終焉を迎え、505~508も運命を共にしました。

青森の511も2015年春の「あけぼの」廃止に伴い廃車となり、カニ24形500番台は全て過去帳入りとなるのでした。

なお、511は解体を逃れ、小坂鉄道レールパークで動態保存され、時折発電機も回して保存車の電源車として活躍しているようです。

 

さて、模型の方ですがTomixは見事にフォローしています。504~509については「東日本編成」セットおよび「混成編成」セットに入っており、中古の弾数も多く比較的入手しやすいです。ただし、あまり古い製品はバックサインの照明が電球で室内がガランドウになっているので注意です。最近の製品は発電機のモールドまで再現されてますが原型のものであり、更新された角形の筐体は再現されていないようです。

「さよなら北斗星」セットでは北斗星最終運行時の508番が入っており、低い位置のJRマークをしっかり再現しています。さすがですねw

ただ、「さよなら」セットは瞬殺かつ元々機関車同梱で高価だったこともあってか、高値取引されているようです。

100番台由来の510と511については、510はモデル化がまだですが、今年8月発売のセットに収録されることになっています。511については「エルム」セットの電源車として番台されています。Hゴムは実車同様いずれも黒です。安心ですw

一方KATOはDX編成セットとして505が、「日本海」セットとして511がモデル化されています。100番台改造の511は貫通扉横の手摺が立体化されている優れ物です。KATOのDX編成セットは何度か再生産されて弾数も多いので比較的入手しやすいです。一方、「日本海」セットは意外と中古で出回っておらず、入手には苦労するでしょう。

 

・マニ24形500番台

 

これまでも何度か書いてきたとおり、「北斗星」は1989年に定期列車が3往復となり、それに対応して車両増備が行われています。

電源荷物車も例外ではなく、ちょうどカニ24形の余剰が無かったことから、なんと遊休車となっていた50系の荷物車、マニ50形を改造してJR東日本とJR北海道にそれぞれ充てることになりました。

こちらが改造前のマニ50形です。
これにDMF13Z-G形発電用エンジンとDM109形発電機を取り付け。さらに後部は監視窓とトレインマーク表示器を取り付けました。全体的な意匠を24系と合わせるためダミーの屋根カバーを取り付けた結果
こうなりましたw
なんと言うことでしょう!w
50系と狭い車体は生かしつつカニ24形に似せようとした妻面の狭い3枚窓が独特の風情を醸し出していますw
側面の窓配置は実は種車を生かしていますが、荷物ドアが撤去されたことで大幅にイメージが変わってますね。前部(写真では奥)の荷物ドアは半分サイズとした上で小型荷物室に生かされています。
サイドビューはこんな感じ。トイレは撤去され、元乗務員室部分に配電盤が設置されました。荷物室の大半は機関室となりました。
前部(写真左)はカニ24形同様の小型荷物室となってます。前後にデッキがあるのはマニ50形の特徴で、マニ24形でもそのまま受け継がれました。
 ラジエーターは床下装備となったためカニ24形の様な屋根上ラジエーターファンはなく、排気管のみ確認できます。
 
反対サイドはこんな感じです。カニ24形は左右で窓配置が異なっていましたが、マニ24形は種車どおりほぼ同じです。
こちらサイドは乗務員室側デッキ横の窓のみ種車から窓一個分移動しています。
 
24系客車に合わせた青20号に金帯三本の装いはどこか誇らしげにも見えます。カニ24をスリムにした様な顔が面白いですねw
上野~尾久で推進運転をする事からワイパーが付いていますが、改造当初はWアームワイパーだったのが、JR東日本車、北海道車とも時期不明ですがシングルアームワイパーに変わっています。
 
マニ50時代はは荷物列車や急行列車の荷物車として地味な活躍をしていた事を考えると、豪華寝台特急の殿を務めるのは大抜擢と言えますね!
さて、この魔改造車マニ24形500番台、民営化後に登場したものですがJR北海道、JR東日本の両社に1両ずつ配置され、仕様もほぼ同一とされましたが、生い立ちは異なるものとなりました。
以下、会社別に解説していきます。
 
・JR東日本
JR東日本のマニ24形はマニ50 2048から改造された501番でした。
特徴としては、全てHゴムは黒で、後部デッキの乗務員扉がマニ50形100番台車等と同じ落とし窓に変更されています。
予備車として1989年に登場していますが、カニ24形と混用されて幅広く活躍しました。東日本担当の「北斗星」5・6号や3・4号の他、臨時列車や「エルム」などにも使用されています。特筆すべきは1994年の「出雲」移管以降に「出雲」にも使用されていることで、東海道ブルトレの電源車としてはかなり異彩を放っていました。また、「夢空間」の電源車として活躍する場面も多く見られました。
1999年の定期2往復化以降は臨時列車の減少と共に徐々に活躍の場は減っていった様です。
それでもカニ24形と共に風変わりな電源荷物車として頑張ってきましたが、JR東日本は元々カニ24形の弾数に余裕があることもあり、2006年の「出雲」廃止で車種統一のトバッチリを受ける形で廃車となってしまいました。
 
・JR北海道
JR北海道のマニ24形はマニ50 2070を改造した502番です。基本的にJR東日本の501番と同じであるものの細かな特徴として、後部乗務員扉は種車由来のHゴム固定窓のものとなっていました。また、改造当初は全てHゴムが黒だったはずなのですが、経緯は経緯・時期は不明ながら少なくとも2003年以降に後部の3枚窓のうち左右の2枚が灰色に変更され(中央の1枚のみ黒)、特徴ある顔が更に個性的な物になりました。また、乗務員扉のうち1ヶ所だけ窓がやはり後天的に灰色Hゴムになっています。なお、詳細は不明ですが排気管の位置が501番とは異なっているそうです。
 
さて、JR北海道のマニ24形500番台もカニ24形と混用で活躍しますが、JR北海道のカニ24形は元々予備車が少ない事もあって、かなり頻繁に活躍する姿が見られました。JR北海道担当の1・2号を始め3・4号の北海道編成の他、「夢空間」を使った混成編成にも使用されています。1999年の定期列車2往復化後も臨時列車が運転されると予備車の無い状態となることからほぼレギュラーとして活躍しており、出番の減少した東日本の501番と対照的な活躍ぶりでした。しかしながら、2008年の定期列車1往復化により遂に定期運用を失い、カニ24 501、503と共に廃車となり、マニ24形はこの時点で形式消滅となりました。
マニ24形となってからは19年の生涯でしたが、種車のマニ50時代(9年間)よりも活躍期間は長く、十分に活躍したと言って良いでしょう。
 
さて、模型ですがTomixから501番がモデル化されており、「夢空間」セットに同梱されています。後部乗務員扉は写真の通り落とし窓となっていて501番の特徴が再現されています。「夢空間」は一度再生産を経ていることからそれなりに弾数はあり、旧ロットであれば中古市場でもそれほど高くありません。
KATOからはモデル化されていませんが、なんとマイクロエースから製品化されています。珍車好きのマイクロエースの面目躍如と言った所でしょうかw
こちらは「夢空間」セットの501番と「エルム」セットの502番がありますが、いずれも後部乗務員扉にHゴムがあるため、プロトタイプは502番であると思われます。 Hゴムは全て黒で、登場~2000年代初期の仕様といえそうです。
それにしても、こんな珍車がモデル化されるとは。良い時代になったものですw
 
今回はこれにておしまいです。
次回は車両紹介シリーズのいよいよラスト。フィナーレは「北斗星」ファミリーのスーパースターが飾ります。