寝台特急「北斗星」の深き沼 その9
毎度ご覧いただきありがとうございます。
大変お待たせいたしました。「北斗星」JR北海道編成が無事入線してきましたので、運行再開です。
今回は予告通り、「ロイヤル・デュエット」です。
何度か繰り返しになりますが、「北斗星」運行開始当初、高価な「ロイヤル」は利用率がどの程度になるか見えない状態でした。そこで、JR北海道が用意したのが、二人用B寝台個室と組み合わせた「ロイヤル・デュエット」になります。
今回はこれについて、いろいろ書いていこうと思います。
第四章 ロイヤル・デュエット
「ロイヤル・デュエット」はJR北海道が北斗星開業に合わせて用意した、一人用特別A個室の「ロイヤル」とB寝台二人個室の「デュエット」の合造車です。
1989年に1年間の運用実績からJR東日本でも導入され、「北斗星」全列車に連結される様になりました。
「ロイヤル」についての詳細は、前回の「その8」をご覧いただくとして、今回初登場になる「デュエット」について軽く解説します。
「デュエット」はB寝台の二人用個室で、解放式B寝台と同じ値段でありながら、身内だけでプライバシーが確保できる個室となっています。前回紹介の「ソロ」の二人用版と言えばわかりやすいでしょうか。
1階席と2階席が互い違いに並ぶ中二階構造で、基本的にB寝台なので広さや設備は最低限となっています。室内は70cmの寝台2つが枕木方向に並行に配置されているほか、オーディオコンソールがあります。寝台部分は上下階座席と重なっているため天地が狭く、二つの寝台の間のみ直立できる様になっており、2階席は中央が階段となっています。
発展形として、JR西日本では中央通路としてベッドを線路方向に並べて2段とし、スペースを少し広く確保した「ツイン」などが存在しています。
さて、「ロイヤル・デュエット」車は以下の形式区分番台となっています。
・オロハネ25形550番台
・オロハネ24形550番台
このうち、オロハネ25形がJR北海道所属、オロハネ24形がJR東日本所属となっています。解りやすいですねw
たった2形式番台区分しかないのでシンプルかと思いきや、そう簡単に行かないのがみんな大好きJR北海道ですwwww
前回も書いた通り、オロハネ25形550番台は相当な食わせ者ですwwwww
それでは、個々の車両について詳しく見ていきましょう。
・オロハネ25形550番台(551〜554)
毎回JR東日本の車両から紹介して来ましたが、今回は歴史的経緯も含めてJR北海道車からの紹介ですw
オロハネ25形550番台は、JR北海道が1988年に、「北斗星」運転開始に備えて用意した「ロイヤル・デュエット」車です。
このオロハネ25形550番台、JR北海道車らしく、なかなか一筋縄で行かない混沌とした型式番台区分になっています。
前回記事を見ていただいた方には繰り返しになりますが、小タイトルに551〜554とありますが、555〜は何者かというと・・・・・「ロイヤル・ソロ」車(上写真奥側)なのですwww
JR北海道は事もあろうに、設備レイアウトの異なる「ロイヤル・デュエット」と「ロイヤル・ソロ」を同じ番台区分に押し込んで、「ロイヤル・ソロ」車を「ロイヤル・デュエット」車の続番にしてしまったのです!
これにより、鉄道ファン初心者を混乱に陥れる難解な型式番台区分になりましたww
さらに、このオロハネ25形550番台は「北斗星」の優等車両としては珍しく、
・運行開始に備えて1988年に製造した「ロイヤル・デュエット」(551〜553)
・3・4号定期化に備えて1989年に増備した「ロイヤル・デュエット」(554)と「ロイヤル・ソロ」(555)
・ロイヤル好評のため1・2号増結及び予備捻出用として1990年に増備した「ロイヤル・ソロ」(556〜558)
と3回に分けて増備が行われているのですが、3グループでそれぞれ細かな仕様が異なっているのです!
さらに、この中の「ロイヤル・デュエット」の(551〜554)の中で仕様が統一されていれば解りやすいのですが、「たった4両なのに3形態に分かれる」変態ぶりですwwww
さすが苗穂の匠、モデラーをスパルタ教育してくれますwwwww
室内レイアウトは、「ロイヤル・ソロ」でJR東日本が伝統的な合造車スタイルとしたのに対してJR北海道は既成概念を取り払い、「ロイヤル」を乗り心地の良い車体中央に配置した上で、前後を二人用B寝台個室の「デュエット」で挟むレイアウトにしました。乗り心地優先の合理的なスタイルと言えるでしょう。
1年間の使用実績からJR北海道方式の方がメリットが大きいことが実証されたようで、JR東日本も1989年に「ロイヤル・デュエット」を新設する際にJR北海道方式を取り入れています。
模型で再現するとこんな感じです。まだ内装工事を入れてないので真っ白けですが、ご参考まで。模型ではライトユニットの導光材を通すため2階席が省かれていますが、概ね雰囲気は伝わるかと思います。ロイヤルが中央に位置していますね。
さて、オロハネ25形550番台は上でも少し触れた通り、1988年に3両登場(551〜553)しましたが、1989年に3・4号定期化に備えて1両(554番)登場しています。その際に細かな仕様を変更しており、一番大きな所はロイヤル部分の窓がひとまわり大きくなっており、より高級感を引き立てているところです。そのほか、ロイヤル室内のシャワー室側壁面のレイアウトに微妙な変化があるようです。
ここで一旦、オロハネ25形550番台(〜554)の生い立ち触れてみたいと思います。
1988年に「北斗星」開業と同時に登場した3両のオロハネ25形550番台はJR北海道担当の1・2号で使用されました。1989年にモノクラスの臨時列車として運行していた3・4号をロイヤル入りの定期列車にするにあたり1両増備が行われています。見た目や細かな点は若干異なるものの大きな仕様に変化はないため、4両とも1・2号及び3・4号の北海道編成で区別なく使用される様になりました。細かくは後述しますが、これに際してJR東日本がオロハネ25形550番台を参考に、ほぼ同じ仕様のオロハネ24形550番台を登場させています。また、JR北海道でも前回書いた通り、「デュエット」部分を「ソロ」とした増備車も登場しました。
1999年の定期2往復化に伴い、定期運用は1・2号のみとなって運用に余裕がでたため、臨時列車や団体列車にも使用されたほか、JR東日本の「夢空間」の随伴も勤めました。また、2004〜2007年にはJR東日本担当の3・4号が閑散期には優等寝台車を2両ずつ連結する様になったのに伴い、「ツインDX」車や「ロイヤル・ソロ」車と共に助っ人して活躍することもありました。(所定4両使用のところをJR東日本には4両しか所有がなく予備がない状態となった為、予備車捻出のためJR東日本に貸し出されたというわけです。)
しかしながら、2008年に1往復化された時点で運用を失って廃車となり、全車がミャンマーに旅立って行きました。
さて、上でもちょっと触れた通り、形態的に見ると、実にモデラー泣かせな車両となっていますww
通路側はこんな感じです。
・・・と言いたいところですが、実はこれだけだと足りませんw
551〜553の種車はオハネ25形なのですが、JR北海道はオハネ25形をあまり持っていなかった為、554はJR北海道得意?のオハネ14形500番台からの改造ですw
いきなり続き番号なのに種車違いで形態が違うとか、まるで旧型客車並の混沌ぶりですwwww
こういう状況なので、551〜553・554ではいきなり窓配置が違います。前者はオハネ25形を踏襲した窓配置(ドア横に狭窓がある)となっているのに対し、後者は写真の様に14形500番台由来(ドア横の狭窓がない)の窓配置となっています。非常口も551〜553は完全に埋まっているのに対し、554は窓のみ残っています。
さらに、551・552はシンプルな3本帯にエンブレムという状態なのに対し、553は同じオハネ25由来ながら4本帯+縦帯の通称「アルコン帯」と若干豪華な雰囲気になってます。追加増備の554はもちろん?「アルコン帯」です。
ドアは14系改造の554のみHゴム窓、他は押さえ金具窓でHゴムがありません。
つまり、554は1両1形態の珍車というわけですねwwwww
ちなみにこの模型は554です。551〜553は仮に入手することがあれば改めてアップします。
客室側はこの通りです。
「ロイヤル・ソロ」同様、互い違いの窓の中央にロイヤルの大きな窓が見えます。デュエット部分の窓はソロより横長ですね。
模型は554なのでドアに14系由来のHゴムが見えます。エンブレムは「ロイヤル・ソロ」の555〜と同様車体中央に存在し、ロイヤルの窓の大きさがも一緒です。一方、写真はありませんが551〜553はトイレ部分にエンブレムがあり、一見して異なっています。また、ロイヤル部分の窓はこの写真よりひとまわり小さな、通路側の窓と同じ大きさのものです。(興味があればgoogle先生に教えてもらってくださいww)
例によって551・552と553は帯のパターンが違うので番号によって形態がバラバラということになります。
さらに、1997年頃からJR北海道得意?のトイレ窓閉鎖も行われているので、各車とも時代によってトイレ窓の有無が存在することになります。
いやぁ、モデラー泣かせの深い沼ですねwwww
555〜同様に表にまとめると、以下の様になります。
番号 | 種車 | 通路側窓配置 | ロイヤル窓 | 帯 |
---|---|---|---|---|
551 | オハネ25-0 | ドア横狭窓あり・非常口跡窓なし | 小 | 三本 |
552 | オハネ25-0 | ドア横狭窓あり・非常口跡窓なし | 小 | 三本 |
553 | オハネ25-0 | ドア横狭窓あり・非常口跡窓なし | 小 | アルコン |
554 | オハネ14-500 | ドア横狭窓なし・非常口跡窓あり | 大 | アルコン |
555〜に比べると、551と552が同じだけマシですかねwwww
Hゴムについては1989年までの改造ということもあってか、全車とも灰色の様です。
模型の方はTomixが551/552をトイレ窓付きで、553をトイレ窓のない近年タイプで、554をトイレ窓付きでモデル化しています。Tomixさん凄いww
553は製品としては古いもので、安定の黒Hゴムになってますww
551・552は伝説の瞬殺セットに入っていたもので、Hゴムは灰色ですが入手は難しいかもしれません。
554は現行で売られているセットに入っており、Tomixもわざわざ「554番を製品化」としていて各部が忠実に再現されている様です。まだ市場在庫があるので、入手は楽でしょう。特定ナンバーで売られている時点ですでに沼ですねwww
一方、KATOからも開業当初の北斗星を旧製品で製品化していて、552がモデルになっています。こちらは灰色Hゴムでトイレ窓付きです。やったね!古い製品なので入手性は難ありの様です。
・オロハネ24形550番台
こちらは1989年の3・4号定期化及び、5・6号のロイヤル増結に合わせてJR東日本から登場したものです。
JR北海道の「ロイヤル・デュエット」を参考にしているだけあってオロハネ25形550番台とよく似ており、さしづめ「JR東日本版オロハネ25形550番台」と言った風情となっています。
基本的な設備はJR北海道の「ロイヤル・デュエット」と揃えられています。当時の3・4号が交互運行となり、両社でできるだけ仕様を揃えている為だと思われます。
「JR北海道のオロハネ25形550番台と揃えた」この車両ですが、いろんな意味で「似て非なる」車両です。
混沌の極みにあるJR北海道車に対し、JR東日本車は全車がオハネ24形からの改造車で、全部で4両(551〜554)存在しますが、全て仕様が揃っています。
いやぁ、全く対照的でモデラーに優しいですねwww
基本的に「北海道車の色違い」ですが、ロイヤルは木目調で、オロネ25形500番台と同様かなり重厚感があります。
他方、デュエットは本当にモケットの色が異なるだけと言った雰囲気です。2階席は室内に階段があるのが判るかと思います。
本来であれば階段の両脇にベッドがあるのですが、純正品の室内灯ユニットの都合で省略されてます。いずれ自作室内灯にする予定なので、2階席も作り込んでみましょうかねw
通路側の室内は配置が基本的に同じにもかかわらず、カラースキームが違うだけでだいぶイメージが異なります。
JR東日本はオリエント急行などを思わせる木目調で、どこか欧風客車を思わせる趣となっています。この辺りは両社の考え方の違いが出ていて面白いところですね。余談ですが、個室の扉の鍵はJR北海道がシリンダー錠なのに対して、JR東日本はカードキーとなっています。こんなところも似て非なるものになっていて面白いところです。
オロハネ24形550番台の生い立ちは、1989年にJR東日本の「北斗星」に追加投入された形で登場。一気に4両増備され、5・6号と3・4号のJR東日本編成で活躍しました。1999年の2往復化後は3・4号及び臨時列車・団臨などで活躍、「夢空間」にも連結されました。閑散期には1編成に2両連結され、ゴージャスさアップに貢献していました。
JR北海道車とは対照的に1往復化後も活躍をつづけ、2015年の臨時化後は再び2両使用されました。その後「北斗星」終焉と共に廃車となっています。幸い全車解体は逃れていて、551がヒロサワレールパークに保存されて現在もその姿を見ることができます。
さて、上にも書いた通り、形態的には個体差がほとんどなく、実質同じと思って良さそうです。
通路側はこんな感じです。24系24形準拠・・・と思いきや、ドア横の狭窓が「北斗星」向けのオハネ24形では埋められているのに対し、こちらは若干客室寄りに移設されて存在しています。
また、非常口は完全に埋められています。これは、洗面所側の仕切り扉が、通路に並行に設置されている開戸から、通路と直交する引き戸の自動ドアに変更されたことも影響していそうです。
以上から、オロハネ25 551〜554のどれとも異なる窓配置になっています。
客室側はこんな感じです。同社の「ロイヤル・ソロ」オロハネ25形500番台より若干小さい「ロイヤル」の窓と言い、デュエットでロイヤルを挟んだ配置といい、上に載せたオロハネ25 554とそっくりであることがわかります。しかしながら、ドア窓にはHゴムがなく、帯は東日本特有の4本帯でエンブレムはありません。また、オロハネ25形550番台と大きく違うのが2階部分の屋根の端の処理で、
こんなところも、JR北海道車と「似て非なる」ものですねw
模型の方は、TomixのJR東日本仕様編成セットには大抵含まれています。入手難易度はかなり低く、バラシ品も安価です。KATOの方もDX編成セットに含まれています。各製品とも黒Hゴムですが、実車が全て黒Hゴムなので安心ですww
今回はとりあえずここまで。
いやぁ、今回もディープでしたね。JR北海道、恐るべしですww
次回は「北斗星」の寝台車群に華を添える「ロビーカー/ソロ・ロビー」について書いてみようと思います。