フランスの巨匠、ロベール・ブレッソン監督の遺作にして異端なる傑作、1983年公開の作品
原作はロシアの文豪トルストイ
カンヌ国際映画祭にて監督賞受賞
以下はYahoo映画のあらすじ・解説ね
> 小遣いに不足したブルジョワ少年は、友人に唆されて偽札を写真店で使った。偽札をつかまされた店の主人夫婦は、これを燃料店への支払いに使う。結果、何も知らずに食堂で偽札を使った従業員イヴォンは、告発され失職してしまう。彼は仕方なく知人の強盗の運び屋をし、未然に逮捕され3年の実刑を受ける。その間に愛娘が病死、妻の心は彼を離れる……。不運にも偽札をつかまされたことからすべてを失う青年の姿をドキュメント・タッチで描いた作品。
…これ、ひとことで言って、かなり
かなり…
「ヤバイ映画」
である
ちなみに「ラルジャン」とは「お金」である
一枚の「偽札」が負の連鎖を生み、流れ流れて、これ以上ないほどの、あまりの悲劇に漂着する
あまりのシュールと不条理までもが、「必然」となってしまうことの「グロテスク」…
もしかしたら、観終わったら吐き気を催すほどの不快感に苛まれるかも…
ハッキリ言って、「難解」極まりない映画であります
ただ、しかし、突き刺さる
この「慟哭」、ただごとではない…のであります
僕はどの映画を観るか⁇ は、基本的にその映画の監督を基準に決める
スターの演技やテーマ性よりも、その映画監督の「哲学」を分かち合いたいか、否か、が基準というわけだ
そういう観点から映画を観てきたけど、中でも特別スペシャルな存在が、まさに、このロベール・ブレッソンなる異能者的異端の巨匠なのである
どの映画も、誰も真似できない独特を湛えつつ、まるで、深淵のさらなる奥底を見つめる映画ばかりだ
僕の中で、ロベール・ブレッソンという映画監督は「孤高の頂」に君臨する神域の存在である
我らが日本映画の世界的巨匠、小津安二郎監督と双璧、人類の叡智の極み…と崇めとります
キューブリックより、タルコフスキーより、ベルイマンより、黒沢明より、溝口健二より…危険なる領域にブレッソンは踏み込んでいるような感覚ある
圧倒的なるソリッド…
「バルタザールよどこへゆく」、「少女ムシェット」、「抵抗」、「スリ」…
どれも「危険すぎる」映画たちだなぁ
あのね
そこまでかくいう僕も、しかし、その全ての作品を鑑賞できているわけではないのですが、もうね、とにかく「えぐって」きます
まるで、解剖学の先生が淡々と生き物にメスを入れるように、世界を「えぐる」
そして、臓物を取り出し、さらに切り開き、皮肉をめくってゆく…
僕はブレッソン監督作品を観る度、背筋を凍らせ、そんな寒々しい感覚を抱いてきた
ざざざっ…と困惑と恐怖に身も心も凍ってしまうほどの、鋭過ぎる映画…
映像の美しさ…にはあまり頓着せず、ただ、ひたすらに「真実」と「核心」への追求と哲学に邁進するという、この「純度」は映画史上最高域にあるのかなぁ、と
俗にこんな言い方ある
映画には2種類ある…と
娯楽映画と芸術映画…
バランスよくその二つの領域を跨げることが、ひとつの理想かも知れない…
が、この「ラルジャン」は跨がない
かと言って、芸術性を追求するわけでもない
ただ、「解剖学的哲学」を貫き、この世界を暴こうとする映画…なのだ
ただ、ひたすらに「真実」なるものを目指す映画かと
世界とは、私とは、一体、何なのか…⁇
あぁ
四半世紀ぶりに、絶対にもう一度観なくてなならない…と、脅迫されているかのような、実に「恐るべき映画」なのである
傑作の極地…にある、至高の一本であります
御愛読感謝