田園に死す
寺山修司監督作品
菅貫太郎 高野浩幸 八千草薫 春川ますみ 原田芳雄 他出演
1974年公開の日本屈指の前衛映画の傑作
【あらすじ】Yahoo映画から
>寺山修司が自身の同名歌集をもとに映画化した、自らの少年時代を描いた自伝的色彩の強い作品。青森県の北端、下北半島・恐山のふもとの寒村。父に早く死なれた少年は、母と二人で暮している。母と二人だけの生活に嫌気のさしている少年の唯一の楽しみは恐山のイタコに父の口寄せをしてもらうこと。ある日、村にやってきたサーカス団の団員に遠い町の話を聞いた少年は隣家の憧れの娘に一緒に村を出ようと持ちかけるが……。少年時代の回想シーンが象徴的な映像で綴られていく。
前衛映画…と評してよいものか⁇
と、つい、考えてしまう
歌人であり、演劇家でもある、日本を代表する芸術家である寺山修司さんは、決して大衆とかけ離れた存在ではなくて、その異端なる作家性にもかかわらず、実は、かなり近しい肌触りもある人物…という印象が僕には強いからか⁇
それというのも…
永遠なる青春の名著 「書を捨てよ、町へ出よう」を読んだ時の親近感に由来するか…⁇
さて、「田園に死す」を初めて観たのは黄金町の名画座の寺山修司特集のスクリーンであったか
初見、まったく理解不能だったにもかかわらず、食い入るように観た
吸い込まれた
なんとか理解したい…の、一念で自分を総動員した映画だった、と思う
あまりに鮮烈なる色彩感覚と、どろどろと絡みつくようなJ.Aシーザー氏の音楽、そして、いわゆる劇映画の方程式を無視した語り口…
激動の昭和…を味わうならば寺山修司監督の、この「田園に死す」は、まさにその昭和の1番濃いところが凝縮されている、と思う
伝統文化と反抗と反骨…
土着性と斬新…
混沌の眩しさと美しさ…
日常と常識が壊れてゆく音を聴きながら、創造性の息吹を全身の毛穴から吸い込む
その大いなる衝撃…は、やがて、至福と快楽の極みに到達する
なんなんだ、これは⁈
あぁ、わからない
けど
今、僕は殻を一つ破ってしまった…という、新しい価値観の獲得、その興奮と喜びが確かにあった
難解とは、痛々し過ぎるほどの激情と丁寧の為せる技…かと
全部、あますことなく理解できなくてもよい
場面、場面、局部、局部の共感と実感があればそれでよい…とも思えた
非現実と憂い、そして、短歌…
この、奇妙奇天烈なる世界観…を体験せぬのはもったいない
これほどまでの「異世界」に飛び込まない手はない
絶対に新しい価値観を獲得できる映画である
僕は初見を映画館で体験できて幸運であった
映画と真っ向勝負できたからだ
停止させることも、巻き戻すことも出来ない映画館で体感できたからこそ、真剣勝負できたなぁ、と
また、日本映画史上、もっとも衝撃的なるラストシーンのひとつを体験せぬのも損というものだ
僕はしばらく席を立てなかった
あまりの衝撃に、時と場所を忘れたのだ
さぁ、30年振りに観るか⁈
もう一度観なくちゃもったいない映画だと感じる
あの時の僕はもういないはずだ
今の僕が感じられるはずのモノを、改めて、日本屈指の前衛「大衆」映画たる「田園に死す」より授かり直したい
どろどろと、まぶし過ぎる大傑作…に、もう一度挑みたい、と、最近よく考えてしまうのだ
御愛読感謝