1974年10月29日 日大講堂
世界ジュニアウェルター級タイトルマッチ
チャンピオン アントニオ・セルバンテス
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挑戦者 世界4位 門田恭明
8度目の防衛戦となるセルバンテス、コロンビア初の世界チャンピオンだったそうですねぇ…
15回戦の、当日計量だった頃の、世界タイトルマッチ…
門田選手といえば、後の世界チャンピオン、鈴木石松さん(ガッツ石松)と「一勝一敗」で、ライト級の東洋太平洋チャンピオンでした…
また、このチャンピオンは超の付く名王者なんですよねぇ… 2度王座戴冠を果たしていますが、最初の王座を10度、2度目の王座を6度も防衛した凄いチャンピオンでした…
1R サウスポースタイルの挑戦者・門田、距離を取りながら軽いステップを踏む… 身長リーチで挑戦者を大きく上回る褐色のチャンピオン、不意に鋭く踏み込むと大きな左をフルスイング!! 門田、それをまともに喰う!!! さらに続くアッパーカットをまぶしたコンビネーションから左ストレートを浴びると倒れてしまう!!!
ダウンだ!!! まだ身体も暖まる前の、痛恨のダウン… 立ち上がる… 再開!!! 門田、なんとか凌いでゴングを聞く… チャンピオンはかなりの強打者… まともに打ち合うと危なさそうだけれど… で、当時の解説は矢尾板さんで、また、採点方法は「5点法」なんですねぇ… ってことで、セルバンテスの5-3…となりますね…
2R 腹を括った挑戦者、思い切り振り回す!!! チャンピオンにロープを背負わせ、左右フック!!! 逆にカウンターを浴びるも怯まない!! チャンピオンのダイレクトライトを喰うも、すかさず相打ち狙いの右をフルスイング!!! バランスを失うほどのフルスイングだ!!! 力みすぎか? しかし、まともに向き合っては勝てない… 何を突破口にすればいいんだ!? 倒せ、倒せば文句無し!!! 矢尾板「…しかし、いつものクールな門田くんじゃないですよ」 むむむ… 門田、思い切って身体をつんのめって左を狙う…とそこへ待ってましたとばかりに右を合わせたチャンピオン!!! 門田、バランスを崩す!!! 効いたか!? そこへセルバンテスの右がまっすぐ打ち抜かれる!!! ダウン!!! 門田、2度目のダウンだ!!! …立ち上がり、再開 すかさずゴング… セルバンテス5-3
3R 過去にサウスポーとは日本のライオン古山選手としか戦ったことのないというセルバンテスだが、非常に冷静だ… 両者、左右フックを強振!!! もみ合いから門田が尻餅をついた… なんと、これもダウンか!? 展開が悪いい… 矢尾板「これはダウンじゃないだろう!?」 が、カウントは進む!!!
再開!!! 門田、セルバンテスの大きなフックをダッキングしてかわすと右フックをその顔面に捻じ込んだ!!!
やっと綺麗なクリーンヒットが生まれた!!! しかし、チャンピオンは懐が深い… そして、射程距離が長い!!! 門田、得意の右フックは単発どまり… セルバンテスはクリンチも巧い… セルバンテス5-4(矢尾板さん、あれはダウンではない…とのこと)
4R 門田のパンチが届かない!!! が、全身全霊を込めた左右フックを放ち続ける!! どれもフルスイングだからカウンターも浴びてしまう… 一方のチャンピオン、こちらも勇敢にビックパンチを放つ!!! さらに、冷静で的確だ!!! 門田の両目が切れた!!! 空転、空転、空転…!!! 作戦!? 知るか!! 殴り倒すがボクシングの真髄!!! こんな風に開き直りたくなる展開… セルバンテス、ロープを背負いながらも右カウンターを狙い打った!!!
門田、まともにこれを喰う!! 膝が折れる… ダウン!!! 通算4度目のダウン… 苦しい… 立ち上がる… ゴング… セルバンテス5-3
5R 捨て身の門田の右フックが当たる!!! ガムシャラに攻め込む!!! セルバンテス、ロープを背負うもこれを巧みにクリンチ!!! …っと、このゼロ距離の状況でセルバンテスの「膝」が下から突き上げられた!!! これは反則だぁ!!! 会場がどよめく… しかし、レフェリーの目には映らなかったか? レフェリー、なぜか門田を注意!!! 門田、倒せるパンチを連発!!! が、またまたカウンターの右を正面から浴びるとダウン!!! 立ち上がる… ここでゴング… 毎回ダウンの苦しい展開… セルバンテス5-3
6R チャンピオンの冷酷なる強さがますます滲み出る展開… 門田、捨て身の猛アタックも勢いが切れた… というか、それをさせないチャンピオンの長い射程距離のワンツーが滅法鋭く炸裂し始める… 無駄のない、危険を犯さないボクシングになっている… セルバンテス5-4
7R 門田、セルバンテスの懐の深さの前にどうにもならない… セルバンテスは得意の距離感で的確なハードパンチを捻じ込む!!! しかし、5度のダウンを喫している門田は全く諦めないし、怯まない… 物凄い根性!!! が、その顔面は変形し、その瞼からは鮮血が溢れる… 苦しい、実に苦しい… もうチャンスは残されていないのか? これほどの大劣勢を跳ね返すには、どうしたらよいのか? セルバンテス 5-4
8R 開始早々、門田が打って出る!! 倒すしか勝ち目はない… さらに、このまま打たれ続けたらいつまでもつかもわからない… 猶予はない… 倒すか、倒されるか!? そんな門田の決意が伝わってくる… が、そんな悲壮感ただよう挑戦者の猛アタックを捌きながら、息一つ乱していないのは褐色のチャンピオンだ… セルバンテスは実に冷静であった… 無駄も危険も冒さない… そんな刹那…
ドシュッ!!!
門田、渾身の右フックに右クロスカウンターを綺麗に合わせたセルバンテス!!!
その身体から力が抜け落ち、そして、門田はマットに沈む…
カウントが進む… なんとか立ち上がった… しかし、物凄い強烈なカウンターだった… もうダメージの蓄積は限界を超えているはず…
再開!!!
チャンピオン、止めを刺そうと思い切りビックパンチを連打!!! 右、左!!! アッパーカット!!! 門田、防戦一方だ!!!
滅多打ち!!!
が、門田、倒れない!!! パンチを打ち返す!!! ただ、闇雲に、打ち返す!!!
チャンピオンの長い右ストレートが炸裂!!!
門田、このラウンド2度目のダウンだ!!! しかし、それでも立ち上がった…
再開!!!
門田は最後の右フックを、その全身全霊の力を込めて放った…が、そのパンチをとうの昔に見切ったチャンピオンは、パチン…と鋭い右をピンポイントでカウンターすると、門田はまるで土砂崩れする土石の塊かなにかのように、マットに倒れこんだ…
文字通り、大の字になって、「散った」…
8R 1:42 KO勝ちで、チャンピオン・セルバンテス、8度目の防衛成功!!!
通産して、8度のダウンを喫っした挑戦者、門田選手であった…
倒れても倒れても立ち上がり、そして、空振りしても空振りしても強烈なる右フックを放ち続けた門田選手であった…
しかし、このチャンピオン、強かったなぁ…
こういうチャンピオンと真っ向勝負をしたんだから昔のボクサーって凄いですよねぇ…
つまり、これは僕の感覚なんですが、「昔のチャンピオン」って、今よりも全然『穴がない』って思うんですよね…
微妙なチャンピオン…ってほとんどいないっていうか、まぁ、とにかく「強い」…
特にセルバンテス…なんてチャンピオンの戦いを見た直後だからそう思っちゃうのかもしれないけれど、まぁ、息が詰まるほどの「強さ」でした…
現在はファミリーフォーラムジム会長であられる門田さん、全身全霊の『空転の右フック』…ですが、本当に心に響きました…
当たれ、当たれ、当たれ!!!
そう念じながら懐かし映像を拝見しました…
名チャンピオンのセルバンテスには、その右の決定打は当たりませんでしたが、僕の心は何度もKOされましたねぇ…
まさに、倒れても倒れても…な、執念のタイトルマッチでありました。
そして、改めて、やはり、強いチャンピオンに挑むことの切実さに痺れました…
御愛読感謝
つづく