好カード「榎洋之×李冽理」を想う… | ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

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人生の曲がり角に遭遇したボクシング&ロック・マニアhigege91。暇を見つけてはホール通い。ああ、俺は戦っているか!? ああ、俺は俺の求める『俺』に近づいているのか!?

昨年の10月24日にWBA世界フェザー級チャンピオン、当時連続防衛9度目であったクリス・ジョンに挑んだ榎洋之選手…


これ、個人的には榎選手のベストバウトと呼べるほどのアグレッシブと闘争心を発揮しましたが、残念な判定負けとなってしまった…


その左ジャブは鋼鉄のごとき硬さを秘めるKOハードパンチャーは、ここで、ついに大きな挫折を味わうも、しかし、再びリングに帰ってきたのは今年の3月…


28勝22KO1敗2分…


実に読み応えのある、本当に素晴らしい戦績…


そして、この再起2戦目の対戦相手が非常に興味深い日本ランカーが相手だ…


日本フェザー級6位 李冽理選手がその相手…


12勝7KO1敗1分の好戦績を誇るテクニシャン…


唯一の黒星は竜宮城選手に負傷判定で喫したもののみだ…


さて、この「世界前哨戦」と銘打たれた試合でありますが、日本ランカーを相手に選んだ榎陣営の気概にはちょっとぐっと来ますねぇ…


やはり、タイ人選手なんかが相手では本人のモチベーションにも支障がでるであろうし、元日本チャンピオン、元東洋太平洋チャンピオンとして、やはり、日本ランカーには負けられない…


一方、これに挑む形となる李選手でありますが、勝てば「世界ランク獲得」の快挙となり、さらに、日本屈指の実力者である榎選手を破ればその名は一気に轟くことになる…


さて、さらに注目すべきは、この両者が戦ったらどのような展開になるのか…?ということであります。


これ、実績では榎選手が断然優位でありますし、その最短距離を貫く左ジャブから始まるコンビネーションの破壊力が李選手を打ち砕く…って予想が最も多いかもしれない。


が、この李選手、かなり懐が深く、リーチもあり、距離感の優れた印象あります…


真っ向勝負で打ち合えば榎選手がKOすると考えますが、しかし、「距離」の主導権を李選手が奪った場合、大波乱が起こる可能性はないとも言えない…


これ、きっとノーテレビですので、会場へ足を運ばなくては観ることが出来ないでしょうねぇ…


再起2戦目で世界前哨戦と銘打たれているものの、日本ランカーと榎選手が戦うと言うことで、なんだかちょっと懐かしい「日本王座防衛戦」っぽい感じもしてきますねぇ…


また、個人的にそのボクシングセンスに魅せられている杉崎由夜選手も出場する…


楽しみであります…


最後に、いつかのWBA世界フェザー級タイトルマッチ、VS クリス・ジョン戦の生観戦記を再収録しておきます…


あれは本当に素晴らしい試合だったなぁ…


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2008 10 24 ダイナミックグローブ 後楽園ホール

WBA世界フェザー級タイトルマッチ


チャンピオン クリス・ジョン 41W22KO1D

×

挑戦者 榎洋之 27W19KO2D


この注目の無敗対決の世界戦に挑むのは鋼鉄の左ジャブを持つ男、榎洋之…



迎え撃つチャンピオンはインドネシアの英雄、「超」テクニシャン、すでに連続防衛9度達成の名チャンピオン、クリス・ジョン…




…運命の一瞬が近づく


で、昨晩の世界戦、僕はメモを採点しか取れないほど応援に励んでしまったので、写真を幾つか掲載してゆきます…



















<ボクシング>榎判定負け、王座獲得逃す WBAフェザー級 毎日新聞


榎世界獲り失敗プロ初黒星/ボクシング 日刊スポーツ


…地上波オンエアーのない世界戦であったのは残念でした。


多くの方が新聞を目にしていると思いますが、結果は「明確な判定負け」でありました…


僕の採点は以下のようにメモが残っている…

    

ラウンド 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 計

ジョン  9 9            9 ・    9  116

榎        9 9 9 9 9 9   ・  9    113


公式の採点は「117-111」「118-110」「118-110」の3-0のユナニマスデシジョンであった…


しかし、会場となった後楽園ホールでありますが、9割9分が榎選手を応援する人々が溢れる状況であり、これ以上ない環境でのタイトル挑戦となりました…


さて、榎選手ですが、その最大の武器である左ジャブはもとより、右ストレート、左右フック、さらに強烈な左ボディーフック、せめぎ合いからのショートパンチ…とあらゆる攻撃を駆使し、それを打ち込むために前進、前進、前進…と過去最高のアグレッシブを発揮した…


そして、それはチャンピオン・ジョンに深いダメージを負わせて行った…


闘魂対決、ハート対決…この試合を顧みるならば、それは5分5分であったと僕の目には映った…


が、連続9度防衛の安定チャンピオン、ジョンの技巧とその滑らかさの前にポイントはことごとく奪われていったのだ…


完全に打ち抜かれた右ストレートに榎選手の顔面は大きく跳ね上げられ、その鋭いパンチに左瞼は僅か3Rで

塞がり始め、そして、榎選手が距離を潰した攻勢の先で待っていたのはジョンの右アッパーカットであった…


それは恐らく、「視覚の外」から突き上げられる鋭いパンチで、これがことごとく榎選手の喉元を抉り、さらに、顎を砕かんとするほどの角度で打ち抜かれ続けたのだ…


僕はその中盤、「ダメか…」と正直感じたのだ…


これだけ滑らかなコンビネーションで的確に打たれ続けてKOされないはずがない…と。


が、榎選手が発揮したど根性、その闘魂爆発の「圧倒的な熱量」であるが、それはジョンの眩いほどのコンビネーションによって蓄積しているはずのダメージを跳ね返し続けたのだ…


さらに、延々と研ぎ澄まし続けてきた左ジャブがジョンをのけ反らせ、その深く抉りこまれたボディショットにジョンがクリンチを余儀なくされ、その顔面を変形させていったのである…


6Rには有効打による右瞼をカットさせ、ポイントこそ奪われるも、しかし、KOの可能性を各ラウンド引っかき傷のように残し続けたのだ…


「奇蹟の予感と期待」…


に、ホールは震え上がった…


勝て、勝ってくれ、チャンピオンは確かに優れている、巧い、圧倒的だ…だけれど、「倒せない相手じゃない」…


そんな約2400名の応援者・支援者の想いがホールで一つになってゆくあの感覚はスペシャルである…


その熱い願いと声援、想いが榎選手の拳に宿る…


ジョンがのけ反る度に、榎選手の拳から発散されるのは我々の「想い」であり、これ以上の「恩返し」はない…


ボクシングがスポーツであり、「採点システム」が存在する以上、このタイトルマッチの結果は「完敗」の類に属する…


しかし、「観客の心」と「榎選手のアグレッシブ」が重なり合い、交じり合い、一つになってゆくという意味合いの「ドラマ性」「芸術性」「精神性」は過去に幾つか生観戦したタイトルマッチの中でも群を抜いていた…と言える感動が僕には残った…


技術の差…と呼ばれるものが残した傷跡は深い。


しかし、それ以上に、ボクサー・榎洋之の発揮した「闘魂」と「不屈」は過去に見たことがないほどのピークを維持したままフルラウンド36分間溢れ続けたわけですが、この感動の重さは特別な感触であった…


もちろん、僕には本人の気持ちは分からない…


でも、僕には『過去最高の榎洋之』が見えたし、そのガッツとアグレッシブに我々の声援が届き、それが響き渡った…という意味で、不満は全くない…


先ずはゆっくり身体を休めてください…


そして、じっくり考えていただきたい…


もう一度立ち上がると決意をされるならば、その「日本一固い拳」に、もう一度「声援」を乗せるために叫びたい…と感じました…


しかし、クリス・ジョン、憎らしくも素晴らしいチャンピオンであった…


榎選手のアグレッシブと爆発は「奇蹟的な充実」の領域に達していたように僕は感じたのだが、これを真っ向から受け止め、その眩いコンビネーションで弾き返したわけですが、その「奇跡的な充実」をねじ伏せる底力と巧さを生観戦できて本当に良かった…と心底感じました。


で、昨晩は試合後に呑みに出かけてこんな話題が挙がった…


先日、WBC世界フェザー級チャンピオンのオスカー・ラリオスに挑んでダウンを奪うも判定負けした粟生隆寛選手がジョンに挑み、逆に榎選手がラリオスに挑んでいたらどうなっていたのか…?


不毛だと思いながらも、そのどちらも是非見てみたい…と妄想が膨らみ始めたのは事実である…


もしかしたら、そのどちらもが世界チャンピオンの栄光を掴み取っていたのではないか…?


…酔いと悔しさに頭痛を抱えた状態であったが、いつまでも女々しくそんなことを考えてしまうのはマニアの性か…?


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御愛読感謝


つづく