先日3日、大阪は阿倍野区民センターで観たKOシーンが、不意に頭をよぎる…
僕は宮城竜太選手の応援に出かけたたのだが、当日のエントリーで報告したとおり、残念ながら1RTKO負けでフィリピンの東洋太平洋ランカーに敗れてしまったのだが、その興行のメインイベントに登場した闘将青木誠選手もまた、壮絶にマットに沈んだのである…
対戦相手はタイ人選手でシンデット・シットサイトーンという名のボクサーが対戦相手だった…
青木選手は脳を揺らされ、まさに、崩れるように膝を突いたわけでありますが、そのダメージの深刻さは相当なものであった…
その試合を決定付けたカウンターパンチはやや距離が縮んだ局面、両者にとってパンチを打ち込むのに最適な距離で炸裂した…
俗に言われる『噛み合う・噛み合わない』と表現されるボクサーの『相性』と呼ばれるものの多くは、この『距離感』が大きく影響していることはいうまでもない…
そして、奇しくも同じ日にラスベガスで開催されていたのは、世界中のボクシングがファンが待ちに待ったスーパーファイトであった…
元4階級制覇王者で、前戦であのデラ・ホーヤを破ったマニー・パッキャオがIBOチャンピオンで元2階級制覇王者のリッキー・ハットンとの戦い…
初回からパッキャオの切れ味抜群の右フックが豪腕ハットンの左を狙ってカウンターで打ち込まれ、それは絵に描いたようにザックリと抉りこまれた…
そして、初回に2度立て続けにダウンを奪ったパッキャオは、続くR2に衝撃の左フックカウンターをハットンの顎先目掛けて思い切り打ち込み、これを喰ったハットンは大の字に倒れ、ピクリともせずに試合終了を宣告されたのでありますが、この試合における『距離感』とはパッキャオにとっての絶好なものとなり、まさに、そのスピードとフットワーク、勇気がなければ決して放てない右フックカウンターを駆使して、それを構築し尽した結果が、決定打となったKOパンチへと繋がった、と思われるわけですが、改めて、感じるのは、この『距離感』の重要性でありますね…
大きく振りかぶったパンチよりも、練りに練られた鍛え上げられたパンチよりも、実はこの『距離感』の方が結果的に相手を倒してしまうほどの攻撃力を秘めているとは、実に興味深い…
で、度々生観戦していると、この『距離感』を通じて、後のKOシーンが不意に脳髄に奥でフラッシュのように浮かぶことが実はある…
例えば、最近浮かんだそれでありますが、元日本フライ級1位の金城智哉選手が当時ノーランカーだった殿村雅史選手にワンパンチKOを喰ってKO負けした試合がありましたが、「これ、なんだか危なさそう」って思いながら観ていたのですね…
つまり、初回から絶妙なタイミングで繰り出されたパッキャオの右フックでありますが、それはダウンを奪う前からすでに何発も抉りこまれていて、そのタイミングは試合開始直後からかなりの正確さで合っていた…
そして、それは上に挙げた「金城×殿村」戦でも実は似たような感触を僕は感じていた…
これ、もしかしたら戦っている選手自身も感じながら戦っているのかなぁ…と考えてみたりするわけですが、しかし、もしかしたらそのような「不穏」を感じながらも、『どうにもできない』場合も多いのかな…とも思う。
試合の「流れ」を変えなくちゃダメだ…
なんて局面もまた度々目撃しますが、これを変えられる選手とは、実はかなりの知性とセンスを備えた選手なのだ…と改めて感じる。
「流れ」を変える、つまり、分の悪い『距離感』を覆せる選手こそ、才能のある選手…ということになるのか?
さらに言えば、この『距離感』なるものをどのような相手に対しても「構築」できちゃう選手こそが、「強い」選手…ということになるのでしょうね。
で、一番冒頭に登場した青木選手でありますが、こちらは「倒しに行った」ところを逆に狙い撃ちされてしまったわけでありますが、その「距離感」はその時点ではまだどちらにとっても優位性を発揮していない状況であったのですが、これが裏目に出た…
しかし、突破口を作ろうとするのは当然のことで、腰の引けた相手を追い込むのに大胆に攻め込むのは常套手段であります…
う~ん…
ボクシングとは本当に奥が深い…
ド派手なワンパンチKOシーンの向こうに存在するもの、それはやはり「距離感」であります…
この「距離感」の奪い合い、「凌ぎ合い」があるわけでありますが、この主導権争いの面白さを知れば知るほど、この『ボクシング観戦道』は深みを増してゆく…
しかし、この「距離感」を通じて圧倒的優位を築き上げても、それが「砂の城」のごとく崩壊する局面もまた、本当に感動的な場合が多い…
そのような不利を覆す精神力と手数が実った時の衝撃もまた、これ、本当にぐっ…と来るんですよねぇ?
テクニックが根性と精神力に粉砕される瞬間… これも本当に堪らない…
…ん!?
まぁ、とにかく、理屈ぬきにボクシングは面白いってことか…!!
御愛読感謝
つづく