WOWOWエキサイトマッチは年末恒例の「ベストマッチトップ20」オンエアーでしたねぇ…
1位 WBAウェルター級タイトルマッチ ミゲール・コット×アントニオ・マルガリート
2位 ノンタイトル12回戦 オスカー・デラ・ホーヤ×マニー・パッキャオ
3位 WBCスーパーバンタム級タイトルマッチ イスラエル・バスケス×ラファエル・マルケス
なんて結果が出てましたが、さて、僕個人的の「年間最高試合」ってなんだろう…?
師走も押し迫った今夜は、こいつを考えたい。
2008年 『ザ・生観戦 最高試合ベスト10』!!!
先が長いのでとっとと行きますが、これは基本的に、自分の目で見た「生観戦」を通じてのベスト10であり、録画放送や生中継は含みません。
従って、本来「ベスト1」に輝いてもおかしくないWBA世界ライト級タイトルマッチ「アルファロ×小堀」…は番外にあたります…
ここはひとつ、「ボクシング生観戦道」を探求する僕としては、その場の空気とその場の臨場感にいかに打ち震えたか…って重さを重要視していますので、よろしくお願いします。
おしゃべりし過ぎたり、うっかりファイターチキンに夢中になっていると見逃してしまう、スローモーション再生の無い「生ファイト」の興奮を思い起こしてみたいと思います…
もちろん、独断と偏見に満ちた、「マイベスト10」であります…!!!
しかし、文字制限の都合上、生観戦再収録は「ベスト4」から…ってことになります!!!
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4位!!
2008 9 9 後楽園ホール
「トクホンVダッシュ第74弾」
「GOLDEN CHILD BOXING Vol.88」
日本ウェルター級タイトルマッチ
チャンピオン 沼田康司 14W9KO2L1D
×
挑戦者 同級8位 元東洋太平洋ウェルター級王者
山口裕司 16W10KO2L2D
このタイトルマッチがノーテレビだなんて、一体、テレビ局は見る目がないですな…
チャンピオンの沼田選手ですが、今年4月20日にあの難攻不落のチャンピオンといわれた湯場忠志選手が地元宮崎で凱旋防衛戦を開催、その敵地に乗り込み、まさに、「大番狂わせ」と言われた4RKO勝利で王座を奪取…
あの衝撃は忘れられません。湯場選手は顎を骨折したそうですが、破格のハードパンチャーであります…
その試合ですが、トクホン真闘ジムのHPのトップからその衝撃のKOシーンが見られるようですね…
沼田選手、なんと言ってもそのハードパンチが魅力…であります。打つ…というよりも、まさに、「殴りつける」という表現がぴったりの激闘派であります…
さて、対する挑戦者は元東洋太平洋ウェルター級チャンピオンの山口選手ですが、元々名門ヨネクラジムの選手だったのですが、2006年にあのサンティリャンから判定で奪った王座を関西の丸元選手にTKOで奪われてからJBスポーツジムへ移籍するも、その再起の道は泣かず飛ばず…
1敗1ドロー…
しかし、このチャンスが巡ってきました…
復活に燃える闘志に期待するも、僕は山口選手が東洋太平洋王座から陥落した丸元戦を生観戦しているのですが、あるわだかまりが正直残っていたのだ…
その時の試合ですが、技術的には優位に立ち、さらに途中にはダウンを奪う展開も、やがて丸元選手の気迫に徐々に押され、最後には7RTKO負けを喫してしまったわけですが、ある「打たれ弱さ」が印象に残っているのと、そう、「気持ちの作り方」にまだ改善の余地が残されているのではないか…? と、思っていたわけであります。
そして、なんと言っても再起後の「1敗1分」という戦績がそれを如実に反映しているのではないか…?と感じていました。
沼田選手のハードパンチが山口選手を思いっきり殴り倒す…が僕の予想でしたが、さて、では、試合を振り返ってみる…
1R 両者右構え 前へと出てくるチャンピオン沼田に対して挑戦者の山口は小気味よいワンツーで応戦、それも、かなり好戦的にとめどなく打ち続ける… 丁寧なそのジャブは気持ちよい… 沼田、空振りが多くなるもその空転に思わずどよめく…あんな右フック喰ったら絶対に失神しそうだなぁ… が、ここはテンポよくクリーンヒットを量産した山口の優勢 山口10-9
2R 山口、そのガードを上げて前へ出てくる沼田の両腕の隙間にワンツーを打ち込む… テンポに乗った… 一発では沼田だがその淀みないコンビネーションが山口の武器だ… 山口、右ストレートから左ボディーフック…とクリーンヒットを生み出してゆく… しかし、沼田、まったくひるむことがない… かなり入っているように見えるけれど… 沼田、攻めあぐねるも、単発の右アッパーを繰り出す…が、今夜の山口もひるまない… 打たれたら打ち返す!! 気合…十分である。ある種の気持ちの作り方への不安は杞憂に終わったようである… 山口がジャブを起点に攻め込む… ゴング間際、沼田のラッシュも見応えあったが、ここも手数積極性の山口とした… 山口10-9
3R 山口、パンチが入るせいか、ここで打って出た… 上下左右、もう余すことなくコンビネーションを叩き込む、もちろん、カウンター気味に沼田を捉える場面もあるが、沼田、びくともしない…で、この辺で、僕は沼田の異常なタフネスに驚愕しはじめた… 沼田のパンチは単発が多い…が、山口は数で圧倒している… と、山口が沼田の右に左をタイミングよく合わせた… すばらしいタイミングだ!! が、その上体こそ跳ね上がるも、ひるむことのないチャンピオン沼田… 沼田はさらに右をカウンターで打ち返す… が、浅い… 僅差で山口の10-9…
4R 今夜の山口は気持ちが強かった… 手数も旺盛だし、頭から飛び込んでくる沼田に対してその距離で勝負を挑む勇猛果敢が見える… 沼田のしつこいボディー連打をワンツーから跳ね返し、プレッシャーの厚い沼田を押し返す… ここで沼田カット、山口のヒッティングによる…ただし、ゴング間際の沼田の重いクリーンヒットも評価したいので互角の10-10
5R 山口、ワンツースリー!! とパンチをクリーンヒットさせるも、沼田、ひるむ気配がない… なんて頑丈なんだろうか? これ、山口にしてみればかなりの脅威ではなかったか? これでもか、これでもか…とパンチを打ち込み続けているわけで、それは再三チャンピオン沼田の顔面に、ボディーに打ち込み続けているのに、なぜだ…? って感じだったのではないか? 山口は気持ちこそ前面で燃え上がるも、やや打ち疲れから動きも鈍ってきたか?さらに、沼田の強烈なパンチを単発とはいえ喰い続けてもいる… と、このR最終盤、山口必死のコンビネーションの隙間に沼田の顔面へ右ストレートをカウンターでねじ込んだ!! 追撃の左フックも抜群だった、いい感じで入った…ように見えたが、逆に今度は沼田がボディー打ちから重い右フック、さらに怒涛の連打で山口を追い込んでゆく… 山口の足が止まった… 沼田の猛撃の前に山口ロープを背負う…
苦しい…
効いた…
さらに沼田の有効打で山口は左目をざっくりとカット… あわや、TKOの場面であったが、ゴングに救われた… かなりダメージが深刻であったため、またヒッティングによるカットもあったので、ここはの沼田10-8
6R 開始早々ドクターチェック、山口の傷は深い…
再開後、沼田は右強打から連打アタック!!!
山口、堪らずロープを背負ったまま尻をつく… が、立ち上がる… 再開、こうなると、底力の差が如実に、残酷なまでにリングに姿を現す… 沼田にはまだまだ力が漲っているのである… 沼田、猛追の連打!!! 再び山口がダウン…が、それでも立ち上がった… チャンピオン沼田がちらりと時計を見た… 残り約1分… 沼田が猛然と襲い掛かった…
挑戦者山口が3度目のダウンをしたタイムは、「6R 2:11」…であった。
KOでチャンピオン沼田康司選手の初防衛成功!!!
いやぁ、強い… 技巧派の山口選手、今夜は気合も体調も充実しているように見えましたが、まさに、「分厚い底力」を見せ付ける圧巻の豪腕KO防衛でした…
しかし、あの雨のような山口選手のワンツーを浴び続け、さらに、時にはカウンターで喰ってもまったくひるむことなくチャンスを待ち、確実に豪腕で挑戦者を屠ったチャンピオンですが、強烈なインパクトありますなぁ…
僕はそのタフネスと冷静に脱帽でありました…
さて、敗れたものの挑戦者の山口選手ですが、その気概、気迫、素晴らしかった…
最後まで打って出たが、ボクサーとしての「分厚さ」と「底力」の前に打ち負けた格好ですが、序盤の充実を以ってしてチャンピオンを打ち崩せなかったわけで、完敗と言えるかもしれませんが、しかし、「気持ち」は決して完全敗北ではなかった…
僕には「思い切り、強かった」…と素直に気持ちよく映りました。
負けはしたけれど、あっぱれ…でありました。
感動した。
山口選手、今夜は悔しくとも精一杯の表現ができたのではないでしょうか?
しかし、沼田選手、なんと「分厚いチャンピオン」なんだろう…って本当に思いましたねぇ。
ひるまない、気圧されない、思い切り殴りつけるハードパンチ… そして、なんと言っても破格のタフネス…
これからが本当に楽しみでありますなぁ…
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3位!!!
2008 4 21 ガッツファイティング 後楽園ホール
仕事の隙間に無理をして滑り込んでしまった…
それと言うのも、僕の好きなボクサー、本田秀伸選手があの恐怖のロシアン・ジャバー、サーシャ・バクティンに挑むからだ…
三十路の元日本ライトフライ級チャンピオン、ディフェンスマスター、頭脳派ボクサー…あのポンサクレックやムニョスとも戦った日本屈指の技巧派ボクサーである本田選手だが、前WBA世界スーパーフライ級王者の名城選手の無名時代に番狂わせで敗れ、一旦は引退するもその後再起、再始動… 引退式までやっての再始動である。
断ち切ることのできないリングへの未練… 想い… 夢のカケラ…
どうしてもそれを生で観たかったのだ…
さらに、相手があの無敗のサーシャである…
日本屈指のディフェンス技術と謳われた本田選手の技巧がどこまで通用するのか…?
非常に興味深くていてもたってもいられなかったのだ…
WBA4位 サーシャ・バクティン 18W7KO
×
OPBF・SF級5位 日本SF級1位 本田秀伸 29W14KO5L
1R サウスポー本田、サーシャのジャブを紙一重の距離で見切り、その打ち終わりに左ボディーストレートを突き刺す… が浅いか? 世界ランカーで無敗のサーシャの武器は電光石火の高速のワンツーである。本田、これを微妙な距離感で見極めながら自ら積極的に打って出る… お!? 対応してる… 凄い!!! が、中盤以降、そのサーシャのジャブに切れが増して行き、幾つか頭を跳ね上げられた… しかし、異常な速さと鋭さ… このジャブワンツーであるが、以前よりも硬質な印象ありましたねぇ… サーシャ 10-9
2R 本田、自分から攻めるも、サーシャの懐の深さの前にパンチが届かない印象… せいぜい左ボディーストレートを思い切るまでで、その白い顔にパンチが当たる場面は作れない… しかし、それでも微動だにしないでぎりぎりの距離でサーシャのジャブの射程外から瞬きもせずに見極める本田の集中力とやる気は本物… しかし、全てを見極めることはできない… 本田の顔が弾ける… 弾ける… くっ… サーシャ 10-9
3R 接近戦からサーシャの左ボディー(?)がカウンター気味に本田の腹をえぐった… 本田、コーナーに自ら背を預ける… 効いた…!! サーシャが追い討ちをかける!! 本田、背を丸めて全く動けない!! サーシャ、滅多打ち!!! この間、恐らく30秒~40秒(?)、本田は必死でダウンを拒み続けた… 恐らくはそのボディーが相当なダメージを及ぼし、地獄の責め苦となっていたのだろう… 良くぞ堪えた… あの本田が一歩も動けずに、ただ腰を折って耐えに耐えることしかできなかったのだ… 衝撃… というか、辛かったなぁ… ダウンシーンはなかったが、この計り知れないダメージはダウンに相当するものであった… サーシャ10-8
5 6R サーシャのワンツーが本田の見切りの及ばない光速で突き刺さる… 本田、腹を決めたのか、さらにガードを下げてそれを見極めながらその打ち終わりのカウンター狙いを実践するも、対応が効かない… 早過ぎるし、やはりフィジカル的にもバンタムのサーシャに押されざるを得ない… 弾ける本田の顔面…!! さらにジャブに留まらず、コンビネーションの右も当たり始める… あの絶頂期のムニョスの豪腕を空転させ続けた世界レベルのディフェンスであるが、光の槍のごときサーシャのワンツーには脆くも破壊された… 本田圧倒的な窮地の連続… サーシャ10-9
7R 一発逆転カウンター狙いに的を絞り、ガードを落とした本田であるが、サーシャのワンツーの前に後退… サーシャの光の槍が本田を貫く… ロープを背負った本田…
シャキィィィィ…ン!!!
サーシャの左が本田の顎先を打ち抜いた…
ディフェンスマスター・本田の膝がマットに落ちた…
と、ここで青コーナーからタオルが投入された…
7R 1:13 KOでサーシャ・バクティンの勝ち!!!
う…
ふてぶてしくて、クールで、一度は退きながらも、それでも恥も外聞もなくリングに帰ってきた日本屈指の技巧派ボクサー・本田秀伸…
その忘れ物を一緒に探したくて僕は無理やりにホールへ飛び込んだ…
痛い…
僕の胸もメチャクチャ痛かった…
世界王者級…と賞されるサーシャに積極性をもって挑んだけれど、完全に跳ね返された…
僕はこの戦い、心の中で本田選手にとっての「3度目の世界戦」…と言う位置付けをして観戦に臨みました…
それほどの強敵・強豪…であり、不利な戦いであった…
本田がKO負け… この胸の痛みはなんだ…!?
しかし、その序盤立ち上がりの積極性に僕は「本田の本気」を観たし、その劣勢の最中に肉を切らせて骨を断つ的な「勝負魂」を確かに見た…
完全敗北も、目一杯戦った…
本田選手よ、その胸の中に一体何が残ったのだろう…?
あるいは、何が見つかったのであろう…?
いや、それはまだこれからも探さなくちゃいけないものなのだろうか…?
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2位!!
2008 4 14 後楽園ホール ダイアモンドグローブ
これぞ、プロボクシング!!!
日本フライ級4位 金城智哉 14W6KO1L1D
×
日本フライ級3位 今宮佑介 16W4KO10L
1R 両者右構え 今宮は変則気味のファイタータイプ、距離を潰しにかかる…が、ボクサーファイター金城は鋭いワンツーを駆使、真っ直ぐ今宮を突き放す… 鋭い左ボディーと打ち下ろされた右が有効!! が、今宮のアグレッシブは相当なものだ… フックを振るいながら金城を押してゆく… ここは互角か…
2R 金城のワンツーがクリーンヒット、しかし、今宮もしつこくしつこく打って出る、そして、左ボディーフック!!! 金城がコンビネーションをまとめポイントを奪う…が、まだまだわからない。 金城10-9
3~7R 脅威の前進を見せる今宮…が、サークリング、距離を変えようと試みるも金城のワンツーはやはり鋭くて的確だ… しかし、ポイントこそ失うも今宮のパンチには「一発」が宿っている… しかし、金城はなんと美しいボクシングをするのだろう… まさに、画に描いたようなワンツーにボディー打ち… そのコンビネーションは瞬きもできない煌びやかな組み合わせ… しかし、今宮は腹が座っている…
16W4KO10L…
10敗… しながらも、このランクを得たボクサーなのだ… その根性は並大抵なものではない…
戦績だけでは多くを判断するな…とは良く聞く台詞ですが、しかし、彼のファイター魂とこの「10敗」を重ね合わせ、僕の心で何かがビリビリ…と痺れ始める…
不屈のボクサー…
今宮は鋭すぎる金城のワンツーに跳ね返されながらも、それでも距離を潰したところで強烈な左右フックをドカンと当てる… 手数のわりに単発が多く、続かないのが惜しいが、しかし、プレッシャー対決ならば互角かそれ以上の存在感を感じる…
しかし、有効打の数とそのダメージの深さが採点評価の大原則…
全て金城の10-9としました…
最終8R この試合の勝者が日本王座に挑戦することが決まっているという運命のラウンドが開始された… その鋭さは全く衰えることを知らない金城の左ボディーに右ストレート、一方脅威のアタックをし続ける今宮だがダメージも蓄積しているはずなのに打って出る… ズバズバズバ… 金城の綺麗なコンビネーション!!! と、金城、手応えを感じたのか、今宮にとっても格好の距離で倒しにかかる…
両者の腕が激しく交錯する!!!
残り20秒ほど…
ズドン!!!!
まともにカウンターを喰って倒れたのは金城…!!!
場内騒然!!!
カウントが入る…
うぉ… まさに、今宮の不屈の一発… ボクシング人生集大成ともいえる完璧な右フックカウンター…
金城、立ちあがるも目が虚ろ… レフェリーの再開の声も届かず、ぼんやりと電光掲示板を見ている… 今宮が突進する!!! 金城懸命のクリンチ…!!!
効いてる…!!!
残り10秒を切った…!!!
…試合終了のゴングが打ち鳴らされた。
8R 今宮10-8
higege91の採点 78-74 で勝者、金城智哉!!!
公式の採点 77-75 77-75 77-74 の3-0で、勝者、金城智哉~!!!
まさに、ドラマチックな一発だった…
これぞまさしく、「渾身の一発」…というやつだ…
これが観たくて僕はホールへ足を運ぶのだ… 参りました… やられました… 両者あっぱれでありました…
あぁ、思い出すとまた震えちゃいますなぁ…
これ、僕の中の年間最高試合候補だな…
まさに、不屈の今宮選手の一発に裏打ちされた「10度」の挫折を想う…
その「10度」の濃度を想う…
痺れる…
また、圧倒的な金城選手のコンビネーション… その卓越した攻撃力が今宮選手の「渾身の一発」を生み出させたわけですが、これ、全然、恥じる必要な無い!!!
人生を賭けた男の「渾身の一発」である…
よくぞ立ち上がった… よくぞ残り10秒を凌ぎ切った…
素晴らしい戦いであった!!!
大拍手である。大感涙である。
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1位!!
2008 10 24 ダイナミックグローブ 後楽園ホール
WBA世界フェザー級タイトルマッチ
チャンピオン クリス・ジョン 41W22KO1D
×
挑戦者 榎洋之 27W19KO2D
この注目の無敗対決の世界戦に挑むのは鋼鉄の左ジャブを持つ男、榎洋之…
迎え撃つチャンピオンはインドネシアの英雄、「超」テクニシャン、すでに連続防衛9度達成の名チャンピオン、クリス・ジョン…
…運命の一瞬が近づく
で、昨晩の世界戦、僕はメモを採点しか取れないほど応援に励んでしまったので、写真を幾つか掲載してゆきます…
…地上波オンエアーのない世界戦であったのは残念でした。
多くの方が新聞を目にしていると思いますが、結果は「明確な判定負け」でありました…
僕の採点は以下のようにメモが残っている…
ラウンド 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 計
ジョン 9 9 9 ・ 9 116
榎 9 9 9 9 9 9 ・ 9 113
公式の採点は「117-111」「118-110」「118-110」の3-0のユナニマスデシジョンであった…
しかし、会場となった後楽園ホールでありますが、9割9分が榎選手を応援する人々が溢れる状況であり、これ以上ない環境でのタイトル挑戦となりました…
さて、榎選手ですが、その最大の武器である左ジャブはもとより、右ストレート、左右フック、さらに強烈な左ボディーフック、せめぎ合いからのショートパンチ…とあらゆる攻撃を駆使し、それを打ち込むために前進、前進、前進…と過去最高のアグレッシブを発揮した…
そして、それはチャンピオン・ジョンに深いダメージを負わせて行った…
闘魂対決、ハート対決…この試合を顧みるならば、それは5分5分であったと僕の目には映った…
が、連続9度防衛の安定チャンピオン、ジョンの技巧とその滑らかさの前にポイントはことごとく奪われていったのだ…
完全に打ち抜かれた右ストレートに榎選手の顔面は大きく跳ね上げられ、その鋭いパンチに左瞼は僅か3Rで
塞がり始め、そして、榎選手が距離を潰した攻勢の先で待っていたのはジョンの右アッパーカットであった…
それは恐らく、「視覚の外」から突き上げられる鋭いパンチで、これがことごとく榎選手の喉元を抉り、さらに、顎を砕かんとするほどの角度で打ち抜かれ続けたのだ…
僕はその中盤、「ダメか…」と正直感じたのだ…
これだけ滑らかなコンビネーションで的確に打たれ続けてKOされないはずがない…と。
が、榎選手が発揮したど根性、その闘魂爆発の「圧倒的な熱量」であるが、それはジョンの眩いほどのコンビネーションによって蓄積しているはずのダメージを跳ね返し続けたのだ…
さらに、延々と研ぎ澄まし続けてきた左ジャブがジョンをのけ反らせ、その深く抉りこまれたボディショットにジョンがクリンチを余儀なくされ、その顔面を変形させていったのである…
6Rには有効打による右瞼をカットさせ、ポイントこそ奪われるも、しかし、KOの可能性を各ラウンド引っかき傷のように残し続けたのだ…
「奇蹟の予感と期待」…
に、ホールは震え上がった…
勝て、勝ってくれ、チャンピオンは確かに優れている、巧い、圧倒的だ…だけれど、「倒せない相手じゃない」…
そんな約2400名の応援者・支援者の想いがホールで一つになってゆくあの感覚はスペシャルである…
その熱い願いと声援、想いが榎選手の拳に宿る…
ジョンがのけ反る度に、榎選手の拳から発散されるのは我々の「想い」であり、これ以上の「恩返し」はない…
ボクシングがスポーツであり、「採点システム」が存在する以上、このタイトルマッチの結果は「完敗」の類に属する…
しかし、「観客の心」と「榎選手のアグレッシブ」が重なり合い、交じり合い、一つになってゆくという意味合いの「ドラマ性」「芸術性」「精神性」は過去に幾つか生観戦したタイトルマッチの中でも群を抜いていた…と言える感動が僕には残った…
技術の差…と呼ばれるものが残した傷跡は深い。
しかし、それ以上に、ボクサー・榎洋之の発揮した「闘魂」と「不屈」は過去に見たことがないほどのピークを維持したままフルラウンド36分間溢れ続けたわけですが、この感動の重さは特別な感触であった…
もちろん、僕には本人の気持ちは分からない…
でも、僕には『過去最高の榎洋之』が見えたし、そのガッツとアグレッシブに我々の声援が届き、それが響き渡った…という意味で、不満は全くない…
先ずはゆっくり身体を休めてください…
そして、じっくり考えていただきたい…
もう一度立ち上がると決意をされるならば、その「日本一固い拳」に、もう一度「声援」を乗せるために叫びたい…と感じました…
しかし、クリス・ジョン、憎らしくも素晴らしいチャンピオンであった…
榎選手のアグレッシブと爆発は「奇蹟的な充実」の領域に達していたように僕は感じたのだが、これを真っ向から受け止め、その眩いコンビネーションで弾き返したわけですが、その「奇跡的な充実」をねじ伏せる底力と巧さを生観戦できて本当に良かった…と心底感じました。
で、昨晩は試合後に呑みに出かけてこんな話題が挙がった…
先日、WBC世界フェザー級チャンピオンのオスカー・ラリオスに挑んでダウンを奪うも判定負けした粟生隆寛選手がジョンに挑み、逆に榎選手がラリオスに挑んでいたらどうなっていたのか…?
不毛だと思いながらも、そのどちらも是非見てみたい…と妄想が膨らみ始めたのは事実である…
もしかしたら、そのどちらもが世界チャンピオンの栄光を掴み取っていたのではないか…?
…酔いと悔しさに頭痛を抱えた状態であったが、いつまでも女々しくそんなことを考えてしまうのはマニアの性か…?
さて、昨晩は試合観戦後に数人で居酒屋になだれ込み、おんおん…と呑み始めたところで携帯を紛失していることに気がつき、慌ててホールへTEL…
あった…
慌てて戻り無事回収… と、偶然、坂本博之さんがいらっしゃり、握手をして貰いました…
榎選手、最高のファイトでしたが本当に残念でした…とお話したところ、坂本さんはこう仰いました…
…負けてもいいんです、皆様の心に感動が残れば、負けてもいいんです。
ぐっ…
この言葉を聴いて蘇ったのは、「平成のKOキング」と呼ばれたあの頃の坂本さんの現役時代の姿であった…
その4度の世界戦はいずれも敗れてしまったわけですが、しかし、それでも限界まで現役であることにこだわり続けた「坂本博之」という一人のアスリートとしての戦いであった…
重度の腰痛を患いメスをいれ、数年に及ぶリハビリの果てについにリングに上がるも壮絶な敗北を喫する…
それでも、それでも、「現役」にこだわり続け、さらに戦い続けた坂本さん…
その坂本さんの口から零れた、この言葉の意味は重い…
僕がなぜ、ここまでボクシングが好きになったか…?
まさに、坂本さんが改めて教えてくれた、この「感動」という一語に打ち震えながら、再び、おんおん…と、お酒を飲んでしましました。
で、最後に、いつかの坂本博之さんの壮絶を極めた「引退試合」のリンクを貼っておきます…
坂
本~愛してる!! 生観戦!!! 過去記事 坂本博之引退試合
この試合も本当に涙が溢れました…
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振り返ってみます…
10位 日本ライト級王座決定戦 石井一太郎×中森宏
9位 東洋太平洋ミドル級タイトルマッチ 佐藤幸治×江口啓二
8位 WBC世界スーパーバンタム級タイトルマッチ 西岡利晃×ナパポーン・ギャットッティサックチョークチャイ
7位 日本スーパーバンタム級タイトルマッチ 下田昭文×三浦数馬
6位 WBA世界ミニマム級タイトルマッチ 新井田豊×ローマン・ゴンザレス
5位 スーパーバンタム級10回戦 木村章司×瀬藤幹人
4位 日本ウェルター級タイトルマッチ 沼田康司×山口祐司
3位 バンタム級10回戦 サーシャ・バクティン×本田秀伸
2位 フライ級8回戦 今宮祐介×金城智哉
1位 WBA世界フェザー級タイトルマッチ クリス・ジョン×榎洋之
…こんな感じかなぁ
で、ここになぜ長谷川穂積選手なんかが入ってこないんだろう…とかって、我ながら思うわけですが、もしかしたら、やっぱり後楽園ホール興行って意味の重さが、やはり大きいのかな…って思っちゃうんですよね。
西岡選手の戴冠や新井田選手の陥落…に関しては、思い入れが大きいから上位にやっぱり来ますが、それ以外はやっぱりホール興行ですし、あの臨場感とリングと客席の距離感ってのは、なんといっても『超絶妙』なんですよねぇ…
ってことで、今夜はこんな感じでお疲れ様ですが、皆様にとっての「年間最高試合」はどの試合でしょうか?
明日はWBC世界フライ級タイトルマッチですが、この「生観戦ベスト10」に食い込むようなタイトルマッチになるでしょうか…?
お楽しみであります!!!
御愛読感謝
つづく