元日本チャンピオン、吉田拳畤選手の再起2戦目、録画中継観ました…
あの内藤大助選手をあと一歩まで追い詰めた清水智信選手に日本王座を追われ、その再起戦は世界ランカー中広大悟選手と戦うも僅差判定負け…
その2連敗からの再起戦…
対するはフィリピンの24歳、真っ赤なハイソックスを履いたWBC世界ランク20位(テレビではこう紹介されてました…)、リチャード・ガルシア…
吉田選手といえば、そのアグレッシブすぎる荒くれファイトが度を越えてしまい、不名誉な「反則チャンピオン」なる称号を得てしまったものの、しかし、清水選手に王座を追われたその再起戦の中広戦では生まれ変わったボクシングを披露…
フットワークを使い、丁寧なジャブを突き、得意だった(!?)レスリング行為も姿を消し、「ボクシングだけで真っ向勝負」を演じ、その精神力と忍耐力に磨きをかけて復活したのだ…
苦労人…
過去に交通事故にあって3年以上もリングから遠ざかる不運を乗り越え、幾度も幾度も敗北を喫しながらもその迫力ある体力を活かした分厚いボクシングを作り上げ、そして、ついに掴んだ日本チャンピオンベルトであったが、しかし、チャンピオンになった後、2度の防衛を果たすも、その「荒れたボクシング」には批判が集まった…
しかし、日本タイトル敗北を期に再び生まれ変わったのだ…
さて、そして、迎えたこの再起2戦目…であるが、これ、痛烈な苦々しい内容となってしまった…
実はこの試合は急遽カードが変わっている。
それというのも、今度、内藤大助選手に挑む山口真吾選手との対戦予定であったのだが、急転直下、山口選手は世界戦出場の為にこの試合をキャンセル、そして、招聘されたのがこのガルシアであった…
このガルシア、日本では未公認であるが、現PABAフライ級チャンピオンで、世界ランク上位者であったラタナポンを破っていたりする…
さて、試合ですが、録画はカット部分が多くてはっきりは解りませんが、立ち上がりは互角、吉田選手はテクニックを駆使したボクシングを発揮、一方のガルシアは強烈な一発は持っていないようだが、しかし、吉田選手の激しいアグレッシブに呑まれることなく対応しているようである…
試合が大きく動いたのは4R、双方距離が詰まった瞬間、その刹那、それぞれが繰り出した右フックが交錯…!!
そのドンピシャのカウンターであるが、吉田選手の顎先を打ち砕いたのはガルシアの右であった…
吉田選手、立ち上がるも苦しい展開…
ガルシア、その後追い上げを目論む吉田選手を投げ飛ばし、突き放すレスリング行為で減点を受け、さらに、吉田選手もレスリング行為で減点を受けてしまう…
6R、再びのダウンを喫した吉田選手、苦しい…
最終ラウンドも両者揉み合いから双方ラフファイトを我慢できない展開であった…
判定は3-0で2度までもダウンを奪われた吉田選手の負けであった…
思わず、唸ってしまう苦々しい内容…
吉田選手の「クリーンファイト」を引っさげて返ってきた心意気が感じられただけに、この結果はなんとも胸が痛い…というか、視聴者であるこちらもかなり複雑であった…
ちょっと前の再起戦、VS中広戦の観戦メモを掘り起こす…
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2008 7 30 代々木第一体育館
WBC・SF級10位 中広大悟 17W8KO2L
×
前日本王者・現日本5位 吉田拳畤 13W5KO7L
1R 中広が積極的に前へ打って出る、と、ここで吉田がこれに対して迎撃のカウンター戦法、これは予想と逆の展開?中広空転、吉田のボディ打ち、さらにコーナーに詰めるアグレッシブを評価。吉田10-9
2R 吉田がフットワークを駆使、なんと技巧派・中広のお株を奪うアウトボクシングを展開… ワンツーを打ち込み、さらに微妙な距離になると身体を合わせて中広の攻撃を寸断、老獪にして、作戦を感じる吉田のアグレッシブを評価。10-9
3 4R キレと鋭さが武器の中広、開始直後からその積極性は感じられたがずっと空転、しかし、ついにその左ストレートが打ちぬかれ、吉田の膝が僅かだが揺れたような… さらに前へ出る中広の打ち下ろしの右… 中広10-9(それぞれ)
5R 中広が追いたて、吉田が距離を残す意外な展開は変わらない。ここでバッティング発生、吉田が右目上をカット… 吉田のカウンター戦法から中広を押し込んだアグレッシブを採る。吉田10-9
6R 思い通りに戦えない中広、イライラが募ったか? もみ合いから中広が吉田を投げ飛ばしかける… 中広、採点決着の分の悪さを感じてか、前へ前へと出る、が、右ストレートをカウンター気味に叩き込むんだのは吉田… 吉田10-9
7R 中広はやる気マンマンだが、この積極性をかわすアウトボックス、また、クリンチで寸断する吉田。しかし、手数が減った吉田、ここは単発の吉田よりも終始攻め立てた中広の攻勢を採る。中広10-9
8R これ、中広危険… その「勝ちへのこだわり」は止まらない積極性から感じられるが、吉田の距離と老獪クリンチに遮断され続けた… もみ合いが続く… 噛み合わない… が、ここは中広のアグレッシブを採る…
終了のゴングが鳴り、吉田が両腕を挙げ、逆にうつむいたのは中広…
僕の採点はドローであった…
公式の採点 77-76×3 中広を支持…
中広選手も冷や汗モノの勝利だったのではないか?その技術とキレは内藤選手や坂田選手の引けをとらない…というマニアの評価を一般の方々に見せ付けることは叶わなかったが、この吉田選手の徹底的なアウトボクシングは予想外だったか?
この採点発表後に自分の応援団の下にやってきた吉田選手、両腕を高々と挙げ、敗北こそ喫したものの、それでも「満足」…というアピール。
日本王者時代に「反則チャンピオン」…の汚名を一身に浴びた吉田選手。恐らく、技巧と想いのアンバランスが冷静さを欠いたダーティファイトに繋がってしまい、負の連鎖的荒くれファイトに飲み込まれてしまったのであろう、しかし、今夜はクリンチこそ多かったが、間違いなく「ボクシング」であった…
そして、この「達成感」こそが、両腕を彼に高々と掲げさせたのではないか…?
そう言う意味で、この試合は吉田選手の試合であった…と、僕は感じました。
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…そう、あの再起戦であるが、敗北を喫するも、清々しく胸を張ってリングを降りた吉田選手の姿が頭に浮かぶ。
そして、観客席に向かって両腕を高々と挙げた姿を僕は客席から観ていたのだが、胸が熱くなった覚えがある…
例え敗れても、自分の納得のできる戦いが出来たことの『誇り』が溢れてくるガッツポーズ…
そう、そして、このガルシア戦ですが、その立ち上がりはそんな自信に溢れていたように見えた…
今、元日本チャンピオンの吉田選手はどんな気持ちなんだろうか…?
実力的にも今回のガルシア戦は完敗であった…が、その最大の武器であるアグレッシブのベクトルを少し変えただけでもっともっと先が見えてくるような気がしていますが…
…日本王座陥落をあわせて3連敗。
これは苦しい…
再起してくれるんだろうか…!?
レスリング行為をお互いに犯してしまった為に、試合そのものは荒れてしまったようですが、しかし、そのR1の吉田選手の意気込みとそのボクシングスタイルであるが、僕には輝いて見える部分を確かに感じた…
苦しい自己問答と自己批判、新しい『自分』を見つけるために作り上げた『新しいボクシング』と、その軌跡…が感じられるぶんだけ、僕は吉田選手にもう一度期待したい気持ちになったのであります…
でも、相手も酷かったけれど、投げたらやっぱりいかんですよねぇ…
御愛読感謝
つづく