ああ、頭から離れない!! キムVS川崎戦において、隣の女性のお客さんの試合後の一言について | ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

人生の曲がり角に遭遇したボクシング&ロック・マニアhigege91。暇を見つけてはホール通い。ああ、俺は戦っているか!? ああ、俺は俺の求める『俺』に近づいているのか!?

 さて、明日はWBC世界フェザー級タイトルマッチ、王者・池仁珍 VS 挑戦者 越本隆志 戦だ。


 越本への「想い」は昨日書いた。今夜書きたいのは先日1月24日に行われたチャンピオンカーニバル、クレイジー・キムVS川崎タツキの2冠戦(OPBF・日本)についてで、僕は東側バルコニーで観戦していたのだが、隣にいた女性の観客の、試合後の『一言』についてなのだ。


 キムVS川崎3 …キムVS川崎。川崎は中盤以降「かなり打たれて」いた。


 その熾烈きわまる戦いについては(http://ameblo.jp/higege91/entry-10008361508.html )もう書いた。


 序盤攻め抜いた挑戦者・川崎であったが、王者・キムが4Rに「技あり」の右ストレートカウンターを川崎に叩き込んでダウンを奪った。…その後のRはキムがポイントを奪い続け、さらに「有効打により川崎も右瞼をカット」し、R9に負傷TKOで防衛に成功した…のだが、タイトルにもあるが、この結果を受けて、Higege91の隣で観戦していた女性ファンの一言がどうしても頭から離れないのだ。


 …なんか「納得」いかない、どうして倒れるまでやらないのかなぁ?(ある女性観戦者の声)


ぐ…


 川崎の出血は酷かった。右半分顔面は真っ赤。ドクターチェックも3度挟み、4度目で「続行不能」の宣告を受けて敗者になったわけであるが、その女性には『不満』が残ったようであった。


 これは非常に難しい『問題』を孕んでいるように思えてならないわけだ。


 『リング禍』という言葉がある。リング上、試合中に起こる『禍(わざわい)』という意味で、要するに『事故』である。


 昨年、日本スーパーフライ級タイトルマッチで当時王者だった「田中聖二」選手が挑戦者・名城信男選手にTKO負けを喫し、試合後容態が急変、『開頭手術』の甲斐なく亡くなってしまった。本当に残念な出来事であった。


 記憶に新しいところで言うと、日本フライ級ランカーだった藤掛真幸選手もフィリピンの王者(?)と10回戦を行い(http://ameblo.jp/higege91/entry-10004384125.html  藤掛選手について)、最終10Rに滅多打ちに合って田中選手同様、「開頭手術」を施され、一命は取りとめためたものの、生死の淵を彷徨った…という残念な試合もあった。


 その他にも、過去に遡ればたくさんの事例があるだろう。元祖浪速のロッキー赤井秀和さんもそうだった。


 つまり、ボクシングの醍醐味であるところの『ダイナミックなKO劇』と『選手の安全確保』の密接な関係についての『観客の認識』についてのモヤモヤが晴れずに困っているのだ。


 その女性の観客の『声』は無理もない一面は確かにある。彼女はもしかしたら「川崎タツキの逆転勝利」を願っていたのだろうし、彼女から見れば「川崎はまだ戦えた」のだし、「早すぎるストップ」であったのだろう。


 そんな「一言」を漏らした彼女の隣で僕はほぼ同じアングル、同じ距離感で観戦していたのであるが、僕の印象はといえば、「かわいそうだが川崎の逆転は厳しい」、そして、「あの出血は激しすぎ、3度もチェックはいってるし、失明したら次はおろかこの先の人生もあるからなぁ」、「川崎効いてる、これ以上やらせるのは危険だよな、このストップはまぁ『妥当』だなぁ…」であった。


 あれだけの試合を目にして、「物足りなさ」の苦言を耳にすると、どうにも行き場のない気持ちが胸を締め付けるのだ。


 これはボクシングが最も危険なスポーツであるにも拘わらず、「ショービジネス」として観客を喜ばせることを義務付けられている為にどうしても生ずる『大きなジレンマ』と言わざるを得ない。


 この『溝』の正体は一体何なのか…?


 また、僕と女性観客の『感想』の違い、その『差異』の正体はなんであるのか…?


 誰の目にも明らかな『KOシーン』は確かに激しい衝撃でもって観客を狂熱の境地へと誘ってくれる。しかし、藤掛選手の例を挙げれば、衝撃のKOではあったが、おかしな言い方だが「普通」にレフリーはストップしたのだ。「普通に」っていうのは曖昧だが、よくある「通常のタイミング」でのストップであり、特に「遅すぎた」という印象はなかったような印象が残っているが、選手は試合後に容態が急変する場合もあるし、どこに当たったどのパンチがどのように選手の『頭内』のどの部位を損傷したか…などを「見た目」で判断するのは非常に難しい…。


 従って観客には多少「消化不良」に見えても早い試合ストップは致し方ない…と思う。


 また、キムVS川崎に関して言えば、3度ドクターチェックが挟まっていたし(…ノンタイトル戦だったら2度目、3度目で確実に試合は続行不能の裁定が降ろされていたと思う)、その9Rでレフリーが両者に割って入った瞬間、川崎は右瞼の負傷も相当に深刻であったが、身体全体に蓄積していた(相当に被弾していた)ダメージも含まれていたように思う。僕の主観ではあの「ストップ」は『妥当』であったし、あのまま続けていたら川崎は「失明」してしまうかもしれないし、『リング禍』の犠牲になってしまう可能性は極めて高くなってしまったように思う。


 …とは言え、その女性観戦者を『非難』しているわけではない。僕は素人ファンだし、「玄人」ぶってあのジャッジ、ストップは妥当だった…などとうんちくを言っているつもりはないのであるが、この『溝』に関して言えば、選手の『身の危険』と『未来』『将来』に関わる問題だし、その一方でその女性観戦者のような一般のファン、そして、僕自身がより満足の行く「試合」「戦い」を観る為にお金を払い、ボクシングと言うスポーツが「ビジネス」になっているわけだから『根は深い』というわけだ。


 ミニマム級では「6オンス」のグローブが採用される…などという記事が話題になっているが、これは「KO率」を上げて比較的人気のない軽量級の人気に火をつける目的の他に、現在の8オンスのグローブで我慢強くズンズンビシビシとダメージを蓄積するよりも「1撃」で「派手」に勝敗が決した方が実は選手のダメージも少ないという説もあるそうだ。このダメージの話が事実ならば賛成だが、そこは是非とも慎重に決定してほしい。


 「ボクシングの人気復活」と「選手の安全と未来」を『天秤』にかけなくちゃならないなんて、本当に困ってしまいますなぁ…。


 当然、優先されるは「選手の安全と未来の確保」であって然るべきであるのだが、ここで重要になってくるのは「レフリー」の判断だ。さらに、その「価値観」「判断基準」の徹底した「均一化」であろう。また、観客ももうちょっと「選手の未来」を顧みなくてはならないと思う。命懸けでボクサーは戦っている。さらに「減量苦」とも戦い、選手によっては極端に体力の衰えた状態でリングに上っているのだ…と言うことも忘れてはならない。対戦相手との戦いの前に、「自分自身」と戦い続けるのがボクサーの宿命であり、この「階級制度」の目的はより平等な状態で選手を戦わせることにある。


 ボクシングとは、最も平等な「スポーツ」であり、「勝負」なのである。


 偉そうにグダグダと書いてしまったが、女性観戦者の気持ちも汲み取らなければならないが、その一方でこれだけ「切実な戦い」であり、「命を失うほどの危険性」を孕んでいる…というある側面も観客が理解しなければならない以上、ボクシング界はさらに悩み苦しむ必要があり、その露出方法と安全性の向上に努めていただきたいと切に願うものである。


 選手の「命」「未来」を奪うほどの「KOシーン」など僕は観なくてもいい。


 それほどの「危険」を孕んでいる…という認識を観客は持つべきであるが、そんな認識を一般的なものとして「質を損ねる」ことなく浸透させることもボクシング界の重要な使命であると感じる。


 そして、この「モヤモヤ」は越本隆志に勝利してもらって是非とも「晴らして」いただきます!!


 御愛読感謝


 つづく