全く睡眠時間の与えられない「映画撮影」は過酷さを極め、握ったハンドルが揺れ、僕の助手なぞは高速道路を走行中にあるはずのない「赤信号」を4度も目撃したという…。
あまりにも寒い。なのに「化け物」に吸い込まれた人間が真冬の「那珂川」から浮かび上がる為、スタッフはその冷たい水の中に身を沈めるのだ。
恐怖映画は嫌いだ。関わりあうのに「恐怖表現」自体に全く興味がなく、とってつけた様な「人物」の生き様は「空洞」であり、「想い」を寄せる隙間もないのだ。
…が、それももう終わりだ。クランクアップは目前だ。
だから…、ボクシングだ!!
WBC世界ライト級9位の嶋田雄大(ヨネクラ)は20日夜、後楽園ホールでインドネシアS・フェザー級王者スマイル・ブラウンと対戦。圧倒的な技量差でブラウンを打ち続け、6回2分38秒、サラサス主審がストップした。これで18勝11KO3敗1分。「実力があるんだから。来年、何とか」(米倉健司会長)と、世界戦の実現をめざす。
記事抜粋
島田雄大は34歳、いや、もう35歳かも…。1階級下とはいえ、インドネシアs・fe級王者をTKOか。しかし、世界挑戦を宣言し、国内ライト級王座を返上してだいぶ経つな。でも、最強決定戦とも言える2人の挑戦者(現東洋太平洋王者・稲田千賢、元日本東洋太平洋王者・長嶋健吾)を退けてからの返上だったし、それに関しては文句を言われる筋合いもないだろう…。
こうしてコツコツと実績を積み上げるのも正直辛いよな。世界ランクを着実に上げながら、さらに守りながら待ち続ける…ってのは本当にきついだろうな…、と思うのだ。
来年6年ぶりに世界再挑戦が決定した「玄海のリュウ」こと、越本隆志も34歳だが、彼は東洋太平洋fe級王座を延々と連続度防衛し続けたながらチャンスを待ち続けて実現させたわけだが、並大抵の忍耐では耐え切れないほどの苦節と葛藤の連続だったであろう。…が、越本はチャンスをその手で掴んだ。
しかし、先の見えてこない三十路ボクサー・島田雄大はさらに辛い。負けなければランクは落ちないだろうが、年齢的なあらゆる場面での「減退」はきっと否めないし、さらに築き上げられるものにも「限界」がなくもない…。
嗚呼、坂本博之の再起戦…。坂本はもう36歳くらいだろうか?若いときの坂本の映像を時折無性に見たくなって見る。バッタバッタとなぎ倒して行くその「豪腕」も、次第に衰えていった。坂本を下した佐竹政一が引退し、柏木崇は東洋太平洋王座に挑戦するも1Rに3度倒されて撃沈してしまった。ボクシングは全く厳しい。坂本は復帰する。周りは関係ない。自分が自分である為に、自己を完成させる為に闘うその「姿勢」は尋常ではない。目を逸らしてはいけない。見つめなければならない。
…そして、西岡利晃(WBC1位・WBA3位)の世界前哨戦の対戦相手が決まったようなのだ。西岡はまだ29歳かもしれないが、世界挑戦4度のベテランボクサーだ。絵巻物のようなウィラポンとの4度の死闘はまさに『ドラマ』である。2敗2ドロー…。ああ、世界の頂点に指をかけるも、あと『1ポント』足らずに登りきることが出来なかった。
WBC中米カリブ同級王者、WBC22位のウーゴ・バルガス(メキシコ)と言う選手だそうだ。
(「沖縄マニアのボクシング観戦記」参照。しかし、マングローブさんの情報は速いですね。感動的です)
22位…。微妙だが、世界ランカーで、さらにWBC中南米カリブ王者とは、どのようなタイトルなのであろうか?タイトルホルダーにしては世界ランクはちょっと低い?…いや、わからないなぁ。どれほどのキャリアの選手なんだろう。わからないが負けは許されない。
西岡利晃ほど胸が詰まる存在もある意味いない。
打たれないボクシングから、「倒すか倒されるか」のボクシングへ移行していったのは、アキレス腱断裂後のウィラポン4からだったような気がするが、あのマケップリは凄まじいの一語に尽きる。
ボロキレのようになって負けた。もう倒れてしまえ!! そう思った。しかし、両の目をカットして血みどろになりながらも、最終12Rまで闘い通した。勝負は完敗だったが、その『気迫』は「芸術的」であった。ドローでは王者ではない。満を持しての4度目の挑戦が最も「惨敗」だったのだが、その「惨敗っぷり」が忘れられない。
そして、挑んでも挑んでも跳ね返されたウィラポンは長谷川穂積に3-0の完封負けで王座陥落。長谷川戦のウィラポンは体調が悪かったとも言われるが(本人は否定、さすが模範王者)、全盛期のウィラポンと長谷川が戦っていたらどうであっただろうか?
時の流れ、巡り合わせとは、時に、「残酷」に見えてくるときがある。
…が、もう後がない。振り返ってなぞいられない。
ファンとして、不安があるか?…と言えば、はっきり言って「ある」。
好戦的な新しい西岡は「肉を斬らせて骨を断つ」接近戦も辞さないカウンターパンチャーだ。だが、線の細い西岡はS・バンタム級においては、ハードパンチャーではない。カウンターの左がモロ決まればもちろん倒れるだろうが、世界レベルのリングではそうは簡単には許してくれるはずもない。
中島吉兼戦では実際に倒せなかったし(中島がタフすぎたとも言えるがこの際それは棚に置く)、ぺドリト・ローレンテ戦は幻のダウンを奪われるなど不安は残った。もっとも、後半の追い上げは凄まじく攻めに攻めて倒しに行ったそのガッツはかなり評価できる。
ぐだぐだ書いたが、西岡には「KO勝ち」して欲しい。そして、世界再再再再再挑戦を実現して欲しいのだ。
派手に勝てばもう再挑戦にむけて大きく前進できる。…で、西岡と一緒に泣きたいのだ。世界の頂点を獲って、その同じ喜びを分かち合いたいのだ。
ああ、来年は仕事するよりもボクシングを観たい。
三十路ボクサーたちのがんばりを「生」で観ながら、自分の「未来」の糧にして行きたい。
奇麗事ではない。真面目に、その「ガッツ」と「闘志」を吸収して、取り込まなくては僕も前進できない。
それほどに、僕は西岡のこれからに期待して止まないのだ。
御愛読感謝。
つづく