白熱の第10ラウンド、西岡利晃、剛打のローレンテを判定で下す… | ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

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西岡利晃世界前哨戦 9・3

2005 9 3 後楽園ホール

 熱い、久々に燃えだぎった!!この「緊張感」は負けたら「引退」の背水の陣で5度目の世界挑戦に挑まんとする西岡利晃(WBC1位 WBA4位 左ボクサーファイター)の世界前哨戦?であった。

対戦相手は元OPBF王者で、現PABA暫定王者のぺドリト・ローレンテ(右ボクサーファイター)。9・3 西岡対ローレンテ

 負けるわけにはいかない。負けたら終わりだ。今やランキングは最上位、こんな調整試合で破れたら全てが水泡と帰すのだ。ボクシングファンはみんなが信じている、西岡利晃の世界奪取を…。

 ローレンテ登場。昔、福島学戦を確かテレビで見たはずだが記憶あまりない。しかし、その時、福島を破ってOPBF王座を奪ったのがこのローレンテなのだ。油断大敵である。…お、いいからだしてるなぁ、腕、長いなぁ…。顔も小さいし、むむむ…。で、われらが西岡利晃入場!!…お、顔大きいなぁ、ローレンテよりも(…世間的には普通である)。腕の長さは負けてるなこりゃ…。まぁ大丈夫さ、俊敏なステップイン&アウトで翻弄しちゃうもんね、大丈夫さ。

R1 両者、静かな立ち上がりか、と思いきや、大きなフックを振り回すローレンテ。そのパンチがやたら重そうなのと、コンビネーションが早いのでちょっとビックリ。1っ発で形勢が変わってしまう「力」を秘めている。西岡は落ち着いている。先ずは観察。それでも、隙を見つけるやいなや早い右のジャブを刺す。これが適度にヒットするも、ダメージにはいたらない。しかし、終盤ローレンテのラッシュで西岡がロープを背負ってしまう場面もあり、その強打にぞっとする。互角に近いが、ローレンテの積極性を採る。 ローレンテ10-9

R2 西岡はその持ち味のスピードを発揮し始める。ローレンテはその腕の長さを生かしたアウトボクサー…なのだが、不意に強烈な連打(ラッシュ)をかけるのが怖い。しかし、西岡はそんな場面でもガードを固め、こらえる場面がありつつも、なんとか凌ぐ。そして、的確な右リードを鋭い踏み込みで突き刺して行く。さらに、ローレンテの大きなモーションを盗んでは必殺の左ストレートを叩き込む。これが「素晴らしい」のだ。僕は西岡の試合はVTRでしか知らなかったのだが、「ブラウン管」と「生観戦」ではその「強さ」の伝わり方がまるで違う。西岡の左は本当に早い!! こんな素晴らしい「左ストレート」は観たことがない。手数と有効だで西岡10-9…と、ここで2R終了後、突如西岡が仰向けになって倒れてしまう!! な、なにごとだぁ!? 裁定はゴング後の打撃とのことのようだが、客席からはダウンのように見えた。しかし、ゴング後にローレンテの大きなフックがテンプル辺りに入ったような気がしたのだが(後でG+でチェックしよう)、あの仰向けには参った。背筋が凍るような思いがした。この間の鳥海がクマトーンに倒されたR3を思い出した。HIGEGE91が応援するボクサーは近頃良く負けるのだ。そんな意味も含めて、ゾー…であった。ダメージはないのか?ああ、あれは嫌な倒れ方だったなぁ…。一瞬飛んでしまったような…。その証拠にスックと立ち上がった西岡は、ダメージはないってアピールするような立ち上がり方に見えたのは気のせい?

西岡対ローレンテだぁ

R3 心配な立ち上がりであった。…が、ダメージはないようだ。良かった。ローレンテの距離とパンチはもう分かった。西岡は右のリードで距離を牽制しながら踏み込んで左を突き刺す。この速さにはリーチでは優位のはずのローレンテも参っていたに違いない。・・・と、接近戦の揉みあいの中でローレンテが西岡の首を押さえつけてのショートの連打!!・・・あ、きったねぇ!! ふざけんなぁ!! レフリーに注意され、観客も馬鹿ヤローの怒声が飛ぶ。…そして、西岡の「闘争心」にもさらに火がつく。西岡10-9

R4 5 相変わらず大きなパンチを振るうローレンテ。縦のジャブは腕が長いためか遅く見える。西岡はその打ち終わりに踏み込んで打つ…のだが、時々ローレンテの大きなパンチが当たるのだ。切れやすい瞼が心配だ。しかし、あのウィラポンとの激戦をかいくぐってきた男は逃げも隠れもしない。ボクシングとは「どつき合い」なのだ。その境地を知った西岡は綺麗であろうとはもう思わない。血みどろになっても、たとえ無様な自分がそこに晒されようとも「勝つ」のだ。その燃え上がる気迫が全身から湧き上がってくる。さっきのお返しとばかりに、西岡はローレンテの頭を抱えてショートを加撃、やられたらやり返す。これが「どつき合い」じゃぁ!! 西岡10-9

R6 ローレンテの大きなクリーンヒットが決まる。西岡の頭から汗が飛び散って照明で輝く。ぞっとする。ローレンテは自分の距離を作れないのだが、それでも時折大きな長い右ストレートを西岡に炸裂させる。西岡は踏み込んでは左を刺すのだが、その打ち終わりに強気にローレンテも打ち返してくる。なるほど、暫定とはいえ、王者じゃ王者だ。このあたりはただの対戦相手でないことの証明であった。打たれ強いし、窮地に自分から打って出ていける強さが本当の「強さ」のバロメーターである。そういう意味では流石に「強い」。

ローレンテ10-9

R7 8 9 総体的に西岡が試合をコントロールしてゆく。さらに、ローレンテをロープ際に追い込んでのラッシュも時折見せる。早い連打が炸裂するも、相変わらずしぶとく長い右を西岡に当ててくるローレンテ。相当当たってるはずなのになぁ…。ポイントは西岡だが、不意にスカーン!!と飛んでくるローレンテのストレートは相変わらず怖い。R2の仰向けになった西岡が浮かんでしまう。気が抜けない。相手のパンチが大きかったり、強打だったりすると本当に緊張感が違う。西岡の左ストレートが当たるたびに観客もヒートアップして行く。ローレンテはしぶとい。彼のがんばりがあるため試合は盛り上がる。強さを認める…が、西岡は負けられないのだ。君に躓くわけにはいかんのだ。西岡10-9

R10 ラストラウンド。「倒して勝つ!!」その意気込みが炎のようになって西岡を包んでいた。ポイントは絶対有利。西岡は「勝ちの先」にあるものを見つめていた。それは「完全なKO勝利」であり、5度目の世界挑戦を実現させるための大きなアピールをしたいのだ。ただ勝つだけでは駄目なのだ。足りないのだ。関係者を、そして、ファンのみんなを、さらに現世界王者を唸らせなければならないのだ。西岡は今まで保ってきた距離を削って接近戦に持ち込む。今まで好きにさせてもらえなかったローレンテもその「危険な賭け」にもちろん応じる。世界ランク1位が手に入る。世界挑戦者になれる近道がこの西岡打倒の無効には待っているのだ。両者カウンター必死の左右連打の応酬に観客は騒然!! いっけー!! ブッタ押せ!! やっちまえー!!       HIGEGE91が喉がつぶれるほど叫んだのは言うまでもない。それにしてもかつてのスピードスター西岡利晃は泥臭くても倒して勝つ…の気迫を操れるようになったってのは大きい。こうなるとウィラポンにちょっと感謝しなければならない…?両腕を広げて打って来い、とローレンテを挑発。自分も顎先に喰らったらダウンの可能性だって、失神する可能性だってある。しかし、最終10ラウンドは凄まじかったし、その打ちあいは「美しかった」。ゴングが鳴り響く…。観客は腕を振り上げて歓喜した。


 採点は文句なし。HIGEGE91の採点では98-92

 公式の採点 98-95 97-94 99-93 で、西岡利晃の判定勝。


 ああ、良かった。西岡ほど期待され、そのドン底を味わったボクサーはいない。かの鉄壁の王者・ウィラポンに4度の世界王座を阻まれ、アキレス腱の断裂を乗り越え、さらに若手の台頭、そして、年齢との戦いも始まっている。まずは一安心だ。インタビューで言っていた。しつこいようだが、どうしても「世界」を獲りたいんだ…と。その実現が難しい。さらに王者を倒すことはもっと難しい。しかし、今夜の「第10ラウンド」の気迫の充実を観れば出来るような気がしてきた。観ているこっちがついつい消極的になってしまう。モンシプールだろうが、ラリオスだろうが、必ず打ち破れるさ。今夜の気迫をぶつけて敗れるのなら仕方ない。打ち破れるかもしれないってだけで「凄い」ことなのだ。がんばっておくれ、あ、そういえばまだ29歳だった?三十路の仲間に入れちゃってごめんなさい。でも、もうすぐ仲間ですな。感動をありがとう。更なる飛躍を祈って…。

 

 あと、同郷(埼玉県熊谷出身)のミニマム級WBC11位 三澤照夫もきっちり勝ったし、セミのスーパーバンタム級 下田昭文は最高に面白い「魅せる勝利」をリングで展開。悪童面の気の強いこのスピードスターはもうすぐ日本王座に絡んでくるぞ、まちがいない。彼は天性の才能に恵まれたかなり将来性のある選手だ。…しかし、憎たらしい顔してるなぁ。対戦相手はタイ国同級王者だったのだが、ノーランカーの下田が自由自在に試合を作って貫禄の?判定勝。ああ、これは楽しみな選手だ。

 

 …で、ここに「おまけ」コーナーで締めくくろう。

エルニーニョ・デ・オーロ ホルへ・リナレス

WBA世界フェザー級4位 WBC同級5位 WB0同級2位 「ベネズエラのゴールデンボーイ」ことホルへ・リナレスだ。強いのなんのって、テレビ画面でもこんなに強さが伝わる選手って凄い。デラ・ホーヤの6階級制覇を超える大記録を期待しちゃいまぁす。握手もして貰って、なんとツーショットまで撮っちゃいました…が、ホルへの顔があまりに小さくて、僕のファイティング原田級の顔面が鑑賞に耐えんのでここには掲載できませんが、いい人です。絶対に世界王者になりますから、この人は…。

15連続1ラウンドKO記録のエドウィン・バレロ

…と、この選手が今、密かに話題の15連続1RKO記録保持者のエドウィン・バレロ(ベネズエラ)選手だ。この選手はまだ戦いを見たことがないのだが、こうしてサインに応えて記念写真を撮らせるいい選手。やっぱし、あの名作「あしたのジョー」に登場した名選手・カーロス・リベラはベネズエラ出身の設定でしたね。なぁるほど、さすが梶原先生、ちば先生ですな。今度の長谷川、新井田の前座で日本初登場、そして、現在日本のA級ボクサーの対戦相手を募集中とのこと。なんとその相手には「1Rで倒されなかったら賞金100万円」で、さらに、このバレロに勝ったら「追加賞金100万円」だそうな…。そんな命知らずいる?おいしい話?

いや、うまい話には「棘(とげ)」があるって言いますし…。


 つづく