歴史番組・紀行番組とも、クイズ仕立てやバラエティ化など、いろいろある中で、NHKの「英雄たちの選択」が、あまり知られていない史実の紹介や、学術的な見解をわかりやすく織り込んだりして面白い。

1月に放送されていた、そのスペシャル番組「紫式部 千年の孤独」を、先日、再放送の録画で見た。
紫式部の生涯については、その死没年・本名も含めて、わかっていないことが多すぎるのだが、
史学的な到達点、いわゆる「定説」をきちんと提示していたうえで、文学的なテーマ(選択肢)が提示されていた。
フィクションとして視聴者を引き付けることに徹した大河ドラマと比較することもでき、なかなか考えさせられた。


コメンテーターは、国文学者、政治学者など。

高橋源三郎が、源氏物語は「世界最古にして最高の小説」と言い切って、番組は始まる。

まずはその生涯、生年は973年説が採られている。
知られたエピソード、越前への下向(996年)と、藤原宣孝との結婚(998年)、翌年娘(大弐三位)の出産、2001年夫との死別、が紹介され、その後帚木3帖(「帚木」「空蝉」「夕顔」が書かれて作者としての名声が知られるようになる、とする。

1006年、または1007年の暮れから、道長の推薦で中宮彰子付きの女房として出仕、

その役目が、源氏物語を書き足し書き継ぐことで一条天皇の心をつかみ、ひいては彰子に男子を産ませる、というものだという。

彰子以前から中宮であった定子を忘れられない一条天皇の心をつかむため、
寵愛が過ぎて死に至る桐壷更衣を造形したり、
幼くして高貴な人の妻となって成長していく紫の上を主人公にしたり、

「藤裏葉」までの源氏第一部は、道長の命により書かれたものである、とする。

にしても

源氏と藤壺との不義の子が冷泉帝となるとか
後宮で読まれる物語として、あまりにも不適当ではないか。

 

その後も式部は、より深く、そして辛らつに、貴族社会と男たち女たちを描いていく。

この番組は番組として、やはりひとつの「物語」を読ませられたようにも思う。

誰の指示にも従わず、作者紫式部の想定さえ超えて、登場人物が生き生きと動き出すことで、

空前絶後の小説世界をつくりあげた「源氏」

多くの読者を引き込み、はねつけ、

凛として建つ、日本文学の金字塔なのである。

 

 

 

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