前中後と書いてきた、いわゆる「反緊縮」経済政策に関する論考である。
一回目は、松尾匡さんの講演の紹介と感想、
二回目は、中国経済が、まがりなりにも成長し続けたのは、この「反緊縮」政策のたまものではないか、という問題提起、だった

この最終回は、では、カネをどこにばらまくのか、という話である。

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3月は、何かとスタートアップの時期でもあり、

私が国や社会のことを「自分ごと」に思うきっかけになった、「3.11」の月でもある。

ブログをひっくり返すと、ちょうど5年前、ベーシックインカムに関する6本の記事をまとめて書いていた。(最初はこれ

そう、私は何度でもベーシックインカムという理想を持ち出すのである。

アベノミクスのように、銀行を通して企業に資金を貸し出しても、カネは企業と株式市場にたまるばかりである。
中国においては、不動産を高価格に維持するための、底なしの融資が、共産党の上層部=超富裕層を支えている。

 

反緊縮運動で、解放された円は、自由な「個人消費」に向かうべきであり、

そのためには、
個人の口座の「残高」が、定期的に、例外なく、無条件で増える、という

ベーシックインカム以上に、シンプルで効果的な方法はなかろう。

 

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もちろん、いきなり全国民に毎月5万円ずつ配る、などという荒行は、

むしろ混乱のもとになるだろう。

 

まずは、生まれてきた子供に配りだすのがよかろう。

「子ども手当」の、やり直しである。


最低賃金×8時間×一ヶ月20日が、親子二人分の生活費として、その半分、月7~8万円が、親の管理する子供の口座に振り込まれたとしたら、

親の意識はがらりと変わるだろう。

子供をつくりさえすれば、親が仕事を休もうが、保育料を払って子供を預けようが、より「豊か」な生活が送れる、と想像できるのではないか。

結婚すること、子どもを持つことが「贅沢」になってしまった哀れな日本に、これぞ、核心的な「少子化対策」であろう。

 

この金をもとに、保育サービス、若い家族向けの住環境、教育、娯楽、外食などの産業に、好景気が回ってくることも、容易に想像できる。

 

それは、若者のマンパワーを必要としている福祉の現場に、将来的な収入を心配せず飛び込んでもらうきっかけにもなるだろう。

「円」の「解放」は、
まず、「子育ての経済的な苦しみ」からの「解放」となり、

「少子高齢化におびえる縮小日本」から、国を「解放」するだろう。