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作家の東田直樹です
現在31歳。
自閉症という障害を抱えています。
お絵かきボードに書いていた頃
僕は文字が好きで、小さい頃から、看板や商品のロゴなどを見ては、お絵かきボードに書き写していました。
記憶した文字を書きたいというより、どちらかというと書かずにはいられない感じだったのです。
記憶するために書いていたのだと思います。
何度か書くと覚えられます。
学校の宿題をしてしまうように、記憶できると安心するのです。
お絵かきボードに書く文字は、僕がどこかで見かけた文字です。
頭に浮かんだ文字を忘れないように、その通りに僕はなぞります。
砂の上や空中にも文字を書く
お絵描きボードは、いつも僕の側にあるとは限りません。
お絵描きボードがない時には、砂の上や空中にも人差し指で文字を書きました。
家族に見つかると「また、そんなことをして」と叱られるので、僕は急いで書いていました。
書き始めると最後まで書かないと、おしまいにならないからです。
他のことをやっているときにも、突然文字が頭に浮かんでくるときがありました。
そのときには、自分がしていることを中断してでも空中に文字を書きました。
点つなぎや迷路
鉛筆が持てるようになると、点つなぎもしました。
数字にそって決められた順番につないでいく遊びです。
完成すると、色々な形や模様を描くことができましたが、僕は、出来上がった絵には、あまり関心はありませんでした。
数字を順番にたどっていくのが、楽しかったのです。
1の次は2、2の次は3、3の次は4を通るように鉛筆でつないでいくというルールが決まっているので、自分が次にやることがはっきりわかるからだと思います。
「めいろ」も好きでした。幼児用のプリントだったので、スタートからゴールまで楽しみながら鉛筆を動かすことができました。
僕が鉛筆を動かしているのですが、鉛筆が僕をゴールに連れて行ってくれるような感じでした。
僕の書くという行為の習得は、ここから始まったのです。