今週の朝ドラ「らんまん」は

印刷屋が舞台でしたね。

 

私は長年印刷業界で働いて来たので

昔の印刷技術はどんなものかと

興味を持って見ていました。

 

図版を刷る石販印刷の原理が

ドラマで説明されていましたが

それは現代のオフセット印刷と

似たような原理でした。

今は石ではなくアルミ板を使用しています。

 

かつての浮世絵の技術者が

新しい印刷業で働き

「かつての自分を殺している」

と技術の変化を嘆いていましたが

その気持ちが良く分かります。

 

浮世絵の木版印刷から

石販や活版印刷への時代の変化は

アナログ製版からデジタルに変わった時と

似ているのだと感じます。

 

アナログの時代は、

版下を作るデザイン会社と

版下からフィルムへ製版する会社と

印刷をする会社と分かれていました。

それがデジタルになると

その垣根が崩れました。

 

そのおかげで製版会社の私が

デザインをする機会を得たのです。

 

私はアナログ製版工として

腕の良い技術者でしたが

長年培ってきた技術も

無用になってしまいました。

 

もっとも、製版の知識があった上で

印刷物のデザインを考えることができたので

全くの無駄ではなかったのかも知れませんが

淋しさを感じることは否めません。

 

ドラマで石に絵を描いていた人も

いずれ写真製版の技術が出てくるので

あの仕事も無くなります。

 

新たな技術が出てきて

今までの技術が不要になる。

そんな現象は色んな業界で

たくさん起こってきたことだし

この先も起こり続けます。

 

万太郎の言うように

新たな場所で芽吹けたら良いのですが

それもなかなか難しいんですよね。

 

製版工の技術で今、役に立っているのは

人形の服作りの型紙を切り抜く時に

カッターで曲線がキレイに

切れることくらいしかないんだよね。

 

ああ、もったいない。

技術の持ち腐れだな。