先月、ツイッター仲間と「赤い牙」について

少し盛り上がったので

改めて全部読み返してみました。

 

「赤い牙」シリーズは柴田昌弘先生のSF少女漫画です。

 

その中で特に「ブルーソネット」のラストでの

バードの最期の選択について引っ掛かっていました。

最期の最期でランよりソネットを選んだのか!?

という部分です。

初めて読んだ時にはかなりショックを受けました。

 

今、改めて通して読み返してみたら

少し違う印象が見えてきました。

 

バードはヒロイン・ランとは

第二作「鳥たちの午後」で出会いました。

全寮制の名門校の高等部3年生の時(1977年)

学生食堂で働いていたランと出会いました。

 

全寮制の名門校で長髪の不良、と言うところと

いじめられるヒロインをかばうという点が

「キャンディキャンディ」のテリィと共通します。

 

この時代のヒロインの相手役には

〝長髪で不良〟と言うパターンはよくありましたが

テリィと違う点は、バードは友達思いの〝良い奴〟でした。

ランの超能力を見ても

「他の人には無い才能があるだけ」と理解を示してくれて、

それが以後、彼はランの心の支えになります。

 

ランとタロンとの闘いの中で命を落としますが

その約一年後にタロンの手でサイボーグ化されて

再びランの前に現れます。

戦いの中で移動基地を爆破し、海に消えます。

 

その3年後、実は生きており、ランの近くに現れますが

会うことなく見守っています。

そんな中でソネットとも出会います。

敵でありながら、

目の前で地割れに飲み込まれていくのを見て

反射的に助けに行ってしまいます。

 

「鳥たちの午後」でも

暴走する車からランを助けています。

サイボーグ化される前から反射神経が良いのか、

目の前で危険な出来事があると

つい助けに走ってしまう性格なのでしょう。

 

バードはソネットとはサイボーグ同士の共感がありました。

ソネットの過去は知らなくとも

多分相当大変だったのだろう、と同情をしています。

バンド活動を一緒にすることで

〝仲間〟という意識に変わって行きました。

 

バードは電池残量=寿命の問題を抱えていました。

残りの電池でどうランを救うかしか考えていません。

ランの魂を救う為なら命を絶つことさえも覚悟しています。

 

ランはその事を全く知りません。

バードとの将来を儚い夢として心に秘めています。

 

「ブルーソネット」のラスト近くで

ようやくランと再会しますが

その時、彼女の隣にはイワンがいました。

 

ランとイワンは超能力者同士の共感があり良い仲間でした。

ラスト近くになって、お互い少し

意識し始めていたように見えます。

 

バードはイワンを信頼し、

ランの〝赤い牙〟の危険性を明かします。

 

阿蘇での最後の戦いの中で、心の読めるイワンは

バードが死を覚悟していることに気付きます。

それと、心底ソネットを哀れに思い

彼女を利用したタロンに怒りを感じていることにも気付きます。

 

バードは残りの寿命でソネットを止め、

サグとタランチュラを倒し、

できることは全てやり尽しました。

 

彼にとってはランの魂を救うことが目的でしたが

タロンに利用されたソネットの魂も

救ってやりたかったのでしょう。

 

もう恋愛とか、どっちを選ぶとかじゃなくて

ランもソネットも二人とも救ってやりたかった。

目の前で死のうとするソネットを

見捨てることができなかった。

 

それがバードという人間だということ。

誰であっても助けたい、命を守りたい、

そういう人だったのだとやっと理解できました。

 

ランのことはイワンに自分がだめだったら

「あとはたのむ」と言っています。

 

奈留の魂からの叫びと、彼女を通して

ランを愛するすべての人たちの思いがひとつになって

ランに届き〝赤い牙〟の暴走を止めました。

バードの最期の声もランに届いていました。

 

一方ランの方は〝赤い牙〟の暴走を止めて

魂は救われたけれど心が救われていない。

熊本は破壊するし、大勢死なせてしまったし、

イワンをおいて逃げる様に去ってしまいました。

 

クローバー クローバー クローバー クローバー クローバー クローバー クローバー クローバー クローバー クローバー クローバー クローバー クローバー クローバー 

 

その約8年後、ランはアメリカにいました。

アニメ化の際に描かれた短編「32ビート」です。

32ビートのベースを弾く若者がいると聞き

その秘密を探りに来ていました。

 

「あなたのベースは私の知っている人とそっくり」

と、バードのことを匂わせます。

 

その若者は人間の脳を原料とした薬で

超人的な才能を得ていました。

そのたくらみをぶっ潰し、ランはどこかに消えて行きました。

 

もしかしたら32ビートを弾く人間がいると聞いて

バードかも?と思って確かめに行ったのかも知れません。

 

バードは過去に2度も死んだと思ったら生きていたので

もしかしたら今度もどこかで生きているんじゃないか

二度あることは三度あるって言うし…と

ランがそう思っても不思議じゃない。

 

いないと分かっていながらバードのことを

つい探してしまっているのかな?

可哀そうなラン。

 

イワンはどうしているのでしょうか?

ランの気持ちが読めるので

そっとしておいてやりたいと思うか?

それとも探しているのか?

 

ランは今も若い姿のままで

世界のどこかで生きているのでしょうね。

 

たいへんな長寿なので、その長い人生の先で

生まれ変わったバードとふたたび出会い、

幸せになれる日が来たらいいのにと

願わずにはいられません。

 

 

※『ブルーソネット』のラストは

「花とゆめ」連載時にはページが足りずに描き切れておらず

コミックスでは大幅に手直しし、

愛蔵版出版の際にも手を入れているそうです。

私が持っているのは2000年に発行された

文庫版「赤い牙」・全11巻(メディアファクトリー)です。

全巻の最後にそういった当時の裏話がマンガで描かれています。

 

※2 「ブラックジャック・アライブ・第2巻」に

ブラックジャックとランの共演する作品を

柴田先生が描いているそうですが

私はまだ読んだことがありません。

機会があれば是非読んでみたいですね。