「共感力は生まれつきの才能では?」
「相手の気持ちに寄り添えと言われても、具体的に何をすればいいのかわからない」
「わかったつもりで話を聞いていたのに、あとで『全然わかってない』と言われてしまった」
そんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
共感というと、どこかエモーショナルな、感覚的なものだと捉えられがちです。
「相手の気持ちに寄り添う」「相手の立場に立つ」
そう言われるほど、なんだか漠然としていて、
コツをつかみようがないものに感じてしまうかもしれません。
ですが、実は少し違うのではないかと私は考えています。
共感は、感覚ではなく「丁寧な作業」であると思うのです。
私たちは別の人間である以上、まったく同じ感覚を味わうことはできません。
育ってきた環境も、経験してきたことも、物事の受け取り方も違う。
それを前提として、同じように見て、同じように感じようとする。
それが共感という営みなのだと思います。
とはいえ、受容器も解釈も人によって異なる以上、
当然ですがどこまでいっても完全に一致することはありません。
そういう意味では「わかったつもり」になった瞬間が、実は一番危ういのかもしれません。
だからこそ、丁寧に共感をしようと思うなら、それは気合いや感情の問題ではなく、
「丁寧な作業」にしてしまうことで、むしろ確率が高まるのではないか、というのが私の考えです。
具体的な方法として、私が最もおすすめしているのは
「その人の好きな本を読む」ことです。
上司でも、部下でも、後輩でも、あるいはお客様でも構いません。
理解したいと思う相手が好きだと言っていた本を、実際に手に取ってみるのです。
対象となる人に好きな本がなければ、好きな場所に行ってみる、
好きな映画を見てみる、好きな音楽を聴いてみる、というのでも構いません。
要は、相手が時間とお金をかけて選び取っているものに、
自分も身を置いてみるということです。
このとき大切なのは、単純に楽しんでみるというのも大切なのですが、
「なぜこの人はこれが好きなんだろう」と、発見するつもりで臨むこと。
物語のどこに惹かれるのか。どの登場人物に感情移入しているのか。
文体なのか、テーマなのか、それとも世界観そのものなのか。
さほど難しいことは考えなくてよいのですが、仮説を立てながら読み進めていきます。
そして、読み終えたあとで、本人に感想を聞いてみる。
「答え合わせ」をするのです。
自分の感想を述べがてら、何処が好きなのかを聞いてみることで、
その人の感性や価値観が浮かび上がってくることがあるでしょう。
まさに仮説と検証です。
そして、この予想と実際とのギャップを獲得することこそが、
最も確かな共感の獲得だと私は思っています。
ギャップがあるからこそ、「自分にはなかった視点」が見えてくるからです。
ちなみにこれは相手を理解するだけの作業ではありません。
同時に、自分自身への理解にもつながります。
自分が普段どんな基準で物事を面白いと感じ、どんな基準でつまらないと切り捨てているのか(笑)
相手の「好き」を通して読むことで、自分の物差しの癖にも気づかされます。
そして面白いことに、最初はまったく興味がなかった、
むしろつまらないとさえ思っていたものが、意外と楽しくて、自分の世界を広げてくれることも少なくありません。
共感のために始めたはずの作業が、いつのまにか自分自身の視野を広げる時間になっている。
これも、この方法の大きな副産物です。
よく結婚後になんとなくパートナーの好きなものに触れたら自分も好きになったという話なんかも聞きますよね!
職場の人間関係でも、家庭でも、お客様との関係でも、応用できる考え方です。
まずは身近な一人を思い浮かべて、その人が好きなものに、ひとつだけ触れてみてください。
ぜひ、共感の旅に出るうまみを味わってみてくださいね!
人事コンサルタント
金森秀晃
