3階にある病室を覗いたが、
ベッドは空だった。
お向かいの方に聞いたらリハビリ中、とのこと。
花をベッドに置きお守りだけを持って、
一階にあるというリハビリ室へ向かう。
来るときに病室を聞いた同じカウンターで、
先ほどとは違う青年に今度はリハビリ室を聞いた。
(ここの病院はカウンターが男性のコンシェルジュのような立ち振る舞いだ)
一転、
リハビリ室の待合室は、
救急の待合も兼ねているようで、
さながら戦線における医局のような混雑ぶりだ。
リハビリが終わるのを待って座っている僕の横に、
頭を包帯で巻いた車椅子の男性が看護士に連れてこられた。
意識が朦朧としているのか、
次の戦場へ向かって席をはずした看護士に対して、
どのように痛くて我慢できないのか、を子供のように話し続けている。
年の頃でいえば、
僕と父の真ん中くらい、
社会においては、
その持ち得るエネルギーを最も発揮しているに違いない。
……
まただ。
病院に来ると必ず聞こえてくる音がまた聞こえて来た。
(理由は分からない)
小さい頃から、
病院は慣れ親しんだ場所のはずなのに。
少し、
滞在時間が長過ぎたようだ。
僕は、
立ち上がってリハビリ室のドアを開けた……