お勧めの本を聞かれたから北方謙三氏の水滸伝を紹介しておいた。
不覚にも、
北方氏のイメージというのが、
今まで、ハードボイルドのおっさん、
アクション映画の監督、みたいなもので、
ちょっと敬遠していたのが一変して、
彼の著書を読むようになったきっかけの本だ。
108人の賊が結束して体制に立ち向かっていく、
という雰囲気でしか水滸伝は知らなかったんだけど、
読んでみてびっくり!
最初の数ページでグイグイ引き込まれて、
組織の作り方は参考になる、と自ら気になった箇所を書き取る始末だ。
大きな理由はリアリティ。
たとえば、
今まで水滸伝を描いたものの人物描写では、
単に腕っぷしが強く直情的な人間が、
死なせてしまった妻への哀しみのために死に場所を探すリーダーに…
単に酒乱の乱暴者と描かれていた人間が、
世直しの檄文をもって忍耐強く人物を説得する知恵者に…
最初に出てきて大活躍するけどすぐ忘れ去られる人間が、
強さを持て余して孤独にさいなまれている若者に…
強い、と思われている人間の、
「強さの所以」の裏側を実情をもって丁寧に描かれているのさ。
特に、
ハンサムで正義感に溢れ虎を素手で倒すエピソードを持つ、武松という男。
醜い兄から兄嫁を救い…
みたいな話が今までの通説なんだけど、
北方水滸伝になると、
兄は特に醜くない、
その兄嫁を慕う武松は酔った勢いで犯してしまう。
彼女は貞節を守れなかったことを悔いて自ら命は絶つが武松の名は明かさない。
ひそかに武松を想っていたからだ。
しかし、武松はそれを知らずに良心の呵責にさいなまれ虎と闘って死のうとする。
が、生き残っていたのは自分だった…
といった具合になる。
僕は昔から、
主人公だけがやたら強くて後はザコのように描く、
勧善懲悪の漫画とか小説が大っキライだったんだけど、
108人の賊(梁山泊という)達が闘う、
体制側の官も悩みや欠点多きファイターとして、
劇的に描かれている北方水滸伝は、
男の子だけじゃなくて、
女性にもお勧めできるよ。
是非、
感想を聞きたいな。