ありとあらゆるものを失ってきた。
もう、
足も立たんし目もよく見えん。
じゃが、
同時にわしは大事なものを手にしてきた。
それは、
初めから与えられたものではない。
小さな、本当に小さな戦いを重ねて、
やっと手にしてきたものなんじゃ。
おそらく知性とは、
年とともに自動的に身につけられるものではないのだろう。
何もせずに、
年齢とともに得られるものなど何一つなかったといっていい。
ある時点を越えると、
もはや引き返せなくなることをたくさん経験したんじゃが、
まさに、
そこが行き着くべきところだったといっていい。
ただ、
わしには、
いまだに怖いことがあるんじゃ。
それは、
何もせずに立ち止まり、
快適さの中でそこにしがみつこうとする自分を感じること。
怖い…
それだけはどうしても怖い…
