このところ、ライドシェアという言葉が盛んに聞かれるようになりました。
令和5年8月に菅前首相が「観光地が悲鳴を上げている、現実問題としてタクシーが足りない、これだけ運転手が人手不足になってきたらライドシェア導入に向けた議論も必要だ」と発言をされてから急速に導入に向けた議論が進展し、メディアにも数多く取り上げられるようになりました。
さて、ライドシェアとは何でしょうか?
ライドシェアとは二種免許を持たない一般ドライバーが自家用車を使って有償で人を目的地まで運ぶサービスのことです。我が国ではこれを“白タク”といって長い間禁じてきました。それは過当競争の抑制とドライバー品質の担保が主な理由です。これに対し、海外のライドシェアはスマホの配車アプリを介し、運転手と乗客をつなぐマッチングサービスとして成り立っています。これを今、日本に導入しようとする動きが出てきたのです。白タクとの違いはアプリを介するか否かだけです。
ライドシェアを推進する方々は「先進国でライドシェアをやっていないのは日本だけだ」と言いますが、EU諸国や韓国では全て禁止されており、ライドシェアを導入している国では台数や運賃を規制する事例が世界中で相次いでいます。
まずはどうしてEU諸国や韓国で禁止したのか、その理由を知る必要があります。とりわけ、フランスや韓国では一度導入したものの、その後禁止しています。
やはり、メリットとデメリットを双方提示してそのうえで判断を求めるのでなければ、公正とはいえません、片手落ちというものです。
ライドシェアを推進する方々はメリットしか口にしませんが、一番多く導入している米国では暴行、傷害、強盗、殺人などが多発しています。ライドシェアが走っている国のタクシーはサービスが低下しているようですが、日本のタクシーのサービスは世界的にも高水準と言われます。そうした状況であっても問題を起こすドライバーがいます。それが一般人のライドシェアとなれば、トラブルや苦情はタクシーの比ではないことは火を見るよりも明らかです。
また、ライドシェアはギグワークといって、企業に属さずに短時間の単発の仕事を請け負いながら報酬を受け取る働き方となりますが、ギグワーカーは個人事業主として扱われることから、アルバイトや派遣社員を受け入れる際に必要な福利厚生に関する手続きも不要のため、ギグワーカーに労働者の権利を与える法律が出来たり、偽装請負を認定する最高裁判決がフランスや英国で出ています。
このように、問題を多く抱える制度をそのまま、日本に導入すれば混乱が起きることは間違いありません。
ライドシェアを推進する方々は「タクシー会社は既得権を手放したくないから反対している」と発言されていますが、決してそんな単純な話しではないのです。
上述しましたとおり、拙速に導入すると、①責任の所在が曖昧であり、乗客の安全が脅かされる、②ドライバーの雇用が不安定になる、③低賃金労働を固定化させてしまう、④特定の地域でバスやタクシーが消滅する等の恐れがあるからに他なりません。
このように、海外のライドシェアの制度をそのまま取り入れると様々な問題が生じることから、この度、国交省はタクシー会社による日本型ライドシェアを導入することでタクシー不足を解消することを認めました。
ドア・ツー・ドア輸送を担うタクシーは、ビジネスや観光はもとより高齢者の通院や買い物等に欠かせない移動手段として地域の経済や社会、日常生活を支えています。
万が一、海外型のライドシェアが全面解禁となれば、バスやタクシーは大打撃を受けその結果、これから超高齢化社会を迎える中、車を持たない方々の「移動の足」の確保が出来なくなる事態が起きる危険性を秘めています。これは皆さんの身近な問題となります。
↓詳細は下記の動画をご覧ください↓
ちなみに、在ロサンゼルス日本総領事館の「安全の手引」にはライドシェアに関する注意喚起が現在でも継続して記載されています。
渡航者に注意喚起が必要な制度を、なぜ我が国に導入しようとしているのか、私たちはよくよく注視しなければなりません。
