11/6 (土) 15時より、日本の多くの小説に当初は心惹かれなかったという村上春樹さんのお話と、上田正樹「悲しい色やね」、安全地帯「あの頃へ」、ゴッドファーザー愛のテーマなどを歌います!
https://twitcasting.tv/c:tohman
ご期待ください!
==
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20211105/01/hidetake-yamakawa/e1/4d/j/o1478110815026515624.jpg?caw=800)
村上春樹さんは1993-95年ごろにボストンのタフツ大学に来ておられ、ニューベリーストリートの本屋で自作についての講演をするのを聞きに行きお会いしたことがある。
その後、「走ることについて語るときに僕の語ること」という本にボストンのチャールズ河について次のように書かれている箇所を見つけて感心した。
「滔々とした水の流れが、ボストン湾に向かって音もなく進んで行く。それは川岸を浸し、緑の夏草を繁らせ、水鳥たちを養い、石造りの古い橋の下をくぐり、夏空の雲を映し(冬には氷を浮かべ)、特に急ぎもせず、休むことなく、多くの検証をくぐり抜けてきた揺らぎのない観念のように、ただ黙々と海に向かう。」
よく知って私も長年親しんできたチャールズ河について、正に村上春樹氏の独自の文体でこのような言語表現に落とし込んでいる。特にアメリカの古都を流れる河に「多くの検証をくぐり抜けてきた揺らぎのない観念のように」と形容する箇所の秀逸さ。
==
私は特定の詩人を敬愛するような感覚で、村上春樹氏の「肉声」ともいえる文体とその独自のポエジーに畏怖を感じていたが、彼に魅かれる引力にはなかなか説明できない部分が多かった。
==
最近、雑誌 BRUTUS で 2週にわたって彼についての内容の濃い特集があり、その流れで「若い読者のための短編小説案内」という本にたどりついた。この本の導入でもともと日本の小説というものにはあまり心惹かれてこなく (「僕はいわゆる自然主義的な小説、あるいは私小説はほぼ駄目でした。太宰治も駄目、三島由紀夫も駄目でした」)、唯一心惹かれたのは「第三の新人」といわれる安岡章太郎、小島信夫、吉行淳之介、庄野潤三、遠藤周作といった人々だったこと。海外に居を移し、プリンストン大学やボストンのタフツ大学で教えているときに、学生にこれらの作家の作品をベースにディスカッションを行う授業を行ったことなどが色々書かれていた。
そんな内容から、私が彼に魅かれる引力について色々なことがわかった気がするので、そのこともお話できればと思います!
==
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20211105/01/hidetake-yamakawa/23/22/j/o1478110815026515645.jpg?caw=800)
「悲しい色やね」は、正に内容とその全体の曲調が "ブルース" ともいえる名曲。
玉置浩二さんの懐かしさと哀しさで深く包み込まれる「あの頃へ」。最近初めて知った曲なんですが、雪がふる季節にむけて本当に心に沁みてきます。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20211105/01/hidetake-yamakawa/6b/ed/j/o0440037715026515657.jpg?caw=800)
(2021 11/6 追記)
上記でご紹介した村上春樹さんのチャールズ河の表現は、村上さんの作品『風の歌を聴け』に描かれている作家デレク・ハートフィールドが「ジャン・クリストフ」をリスペクトしていることからも、村上さんの何らかの大切な「ジャン・クリストフ」の読書体験があり、それが以下のジャン・クリストフの表現への敬意あふれるトリビュート、オマージュのようにさらにそれに村上さん独自の深みを加えた表現になっているように、勝手に憶測しております。。
「河は流れてゆく。..... 景色が変わる.... 。こんどは水の上に覗き出た木立。(中略) 次には種々な岩、立ち並んだ山、傾斜地の葡萄畑、小さな樅(もみ)の林、荒廃した城 (ブルク)....。そこからまた、平野、作物、小鳥、日の光....。
緑色の満々たる河水は、ただ一つの思想のように一体をなして、波も立てず、ほとんど皺も寄せず、脂ぎって光っている水型模様を見せながら、流れ続ける。」
(「ジャン・クリストフ」 (ロマン・ローラン作 豊島与志雄 訳より)
「滔々とした水の流れが、ボストン湾に向かって音もなく進んで行く。それは川岸を浸し、緑の夏草を繁らせ、水鳥たちを養い、石造りの古い橋の下をくぐり、夏空の雲を映し(冬には氷を浮かべ)、特に急ぎもせず、休むことなく、多くの検証をくぐり抜けてきた揺らぎのない観念のように、ただ黙々と海に向かう。」
(「走ることについて語るときに僕の語ること」) 村上春樹より