小説「神田 直子/ようこそ!私の奇跡」第31話(緑色の目を持つ警察官) | ひでおん

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2023年8月より、童話に続けて小説を投稿し始めました。
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適当によろしく~

神田直子(37)は中国出張からの帰国便で大事故に遭ってしまうが、ひと月の昏睡状態から奇跡の生還を果たすことが出来た。

 

そして直子は高度な読心術と電撃能力を手に入れる。

自分自身の体の中を出入りする宇宙人のバモスとテレサとのドタバタ生活が始まったのだ。

 

これは、愉快痛快!ポンコツ小説なのです。

 

 

直子は正志の胸の上にまたがり、両手で頬をつかみ揺さぶりながら大泣きで喚(わめ)いた。

 

「ま、まさし―― 戻れ―― ばか、ばか、ばか―― わたしを、ひとりにしないで――」

 

うっうう…… ぽた、ぽた、ぽたと、大粒の涙が正志の顔に止めどなく落ちていく。

 

驚いたバモスは、大急ぎで着ている服を全部脱ぎ捨てると正志の体の中に飛び込んで行った。

 

しかし宿っている雷神の力は思っている以上に衰えていたのだ。

 

 

「神田 直子/ようこそ!私の奇跡

第31話 (緑色の目を持つ警察官)

 

 

死んでしまった正志の中にバモスが入っている時間は、とてもとても長く感じた。

 

直子は死後硬直がわずかに始まりだしたように思える正志の手を握った。

 

その不安でいっぱいの背中をテレサが後ろから抱きしめてくれていた。

(小玉スイカおっぱいが背中に当たり気持ちが良かった……)

 

「ナオコさん、だいじょぶ、大丈夫だから…… バモス、きっと生き返らせてくれる……」

 

「う、うん……あ、ありがとう」

 

しかし、その思いは叶わなかったのだ。

 

するすると、口から出てきたバモスの動きは確かに遅くなっていた。

いつもならそこから大きくなる完全変態(注1)は一瞬のことで、まず人の目では分からないのに。

 

「ダメだ…… どうにもならない!」

 

その言葉を聞いたとたんに興奮してしまった直子は

 

「どうにもならないって、なによ! どうにかしてよ! あんた達のせいなのよ! あんた達が、いなければ……、ま、正志は死なずにすんだのよ!」

 

と気が動転して言ってしまった自分に驚いてしまった。

 

「ごめんよ……」「ごめんなさい、ナオコさん」と、がっくりとうな垂れている、ふたりの宇宙人を言ってはいけない言葉で責めてしまったのだ。

 

(考えてみれば、このふたりが航空事故の時に頭に飛び込んでくれてなければ私は死んでいたんだよ……)

 

大泣きしながら、ふたりに抱きついて謝った。

 

……ごめんね、本当にごめんなさい」

 

 

 

それから直子は何をしたら良いのか分からないまま、救急車を呼んだのだ。

 

バモスが治せないないのに、いまさら病院で助けられるはずはないけど……もしかしたらという気持ちはわずかながらにあった。

 

しかし駆けつけてきた隊員は遺体を少しだけ調べると、警察へ連絡して帰っていったのだ。

 

代わりに警察官が来るということで、そして少し事情聴取と現場検証が必要になること。

それで特に事件性が無いことが分かれば死亡診断書が発行されるから、特に心配することはありませんよと簡単に説明をしてくれて帰っていった。

 

直子は考えた…… 正志は至って健康だった。

 

亡くなる前にお風呂に入って、缶ビールを2本くらいと私が作った、きんぴら牛蒡を食べてたくらいだ。

 

今日は元気は無かったけど何を言いたかったのだろう? そして私から出てきた宇宙人を見てショックで気絶した。

 

その後は鼾をかいて寝ていただけだ…… あれか? 無呼吸症候群ってやつ?

 

はあ―、説明出来る分けないよね……。

 

このふたりは誰ですか? なんて聞かれたら……。

 

いや聞かないわけないでしょ! 親戚ですよ……、友達です……、たまたま家に遊びに来ていた外人です……、どこの誰ですか? どこの国の人? パスポート見せてください! という流れになるわよね。

 

そうよ全部、嘘じゃない! 「警察はゴマかせない」と酔っ払って自転車を盗んで捕まった大学時代の友人の話しが蘇(よみがえ)る。

 

あー、警察なんて道を聞きに交番に入ったくらいだし、それさえドキドキしたんだから絶対無理だわ。

まして、このふたりが居たら大変なことになる。

 

ミクロ化になればバモスの体の負担になるわけだから、ふたりは警察が来る前にマンションの公園に行ってもらおう。

 

散らかっているテーブルの上などを片付けて、お弁当の空箱などをゴミ袋に投げ入れた。

 

お茶の支度をしながら、正志の側まで行き再び顔を除き込んだ。

(あー、本当に死んでしまったの…… 私をおいて……)

 

と目頭がうるんできたと思ったとたん玄関のチャイムが鳴ったので、警察が来たのだと思い涙を拭いドアを開けた。

 

そこにいたのは、3人の警察官だ。しかし、ひとりの警官はとてつもなく大きな男だ。

 

メジャーリーガー並みに大きくなったバモスよりもさらに背が高く、ドアの上部に頭が当たる為、潜(くぐ)って入ってきたのだ。

 

ぐぐっ…… その風貌(ふうぼう)に少し怯(おび)え、たじろいでしまった。

(でも、この人、白人じゃないの! 日本の警察に外人はいないはず?)

 

と思って顔を見るとハリウッドスターのような美男子だ。しかもバモスと同じ緑色の目だったのだ。

 

 

完全変態(注1)

チョウのように蛹を経て成虫になる様式を完全変態といい、セミのように蛹を経ずに成虫になる様式を不完全変態という。詳しくはググってください。

 

 

32話へ続く

 

 

主な「登場人物」

 

神田直子:物語の主人公 37歳

神田正志:直子の夫

バモス:アラヤダ星人

テレサ:アラヤダ星人、アラヤダ国の王女

 

 

おまけのはなし

自選リブログ:71話 クレヨンしんちゃんにハマルおっさん

 

2021年4月に投稿したお話です。

 

しんちゃんのコミックは全巻揃えました。

いまでもたまに寝る前に読んでます。

 

良かったら、読んでくださいね。

 

 

 

作者からのお礼

 

コメントありがとうございます。元気と執筆パワーを頂けます!

 

頼みの綱であったバモスの能力で、夫の正志を生き返らせることが出来ませんでした。

今回登場した、バモスより背の高い外人の警察官は何者なんでしょうか?

 

次回もお楽しみくださいね。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

 

では、また来週