入学時に東京在住の身元保証人を大学に届けなければなりませんでした。
東京に親戚が居なかったので、父の知人にご挨拶に伺う事になりました。
初めて行った六本木のおしゃれなレストランで母と待っていました。
その方は染色家という事なので染色に興味のあった私はお会いするのをとても楽しみにしていました。
「きっとお着物でいらっしゃるわよね」母とそう話している時、キャメル色のスーツに同色のハイヒールで
髪はアップにまとめた彼女がにこやかに現れました。
ゴールドのネックレスとイヤリングがキャメルに良く映えて、まるで映画の中から抜け出た様な姿に意表を突かれた私は、しばらく見とれてしまいました。
柔らかな関西弁で「これからは東京のお母さんやから」と。
その後、毎週末お宅に伺い、お茶の入れ方やお化粧の仕方など身だしなみについても色々と教えて頂きました。「洋装は布と革と金属で完成する」装いによって喜びや悲しみだけはでなく、相手への敬意も表せる事。「いつもなりふり構いなさい」

蒸し暑い日に黒っぽい服装で伺うと「夏は人から見て涼しげな格好をするように」と叱られた事もありました。

思えば彼女から着物の話が出たことはなく、ずいぶん経って私が着物を着てみたいと言って初めて「何や、あんたそう思てたんやな」と沢山着物を見せて下さり、勉強会にも参加させてもらったのです。