待ち合わせ場所のコーヒーショップに現れた彼女はジーンズにコットンシャツというカジュアルな格好。
真珠のネックレスとピアスが装いの格を上げています。
日本では冠婚葬祭でつけるイメージのある真珠のネックレスですが、欧米では真珠は昼間のジュエリー。夜にはライトに輝くダイヤなどの石のジュエリーを合わせます。アメリカ育ちの彼女らしいジュエリーの選択です。5ミリほどの小さめの真珠が、思ったことは何でもずけずけ言う帰国子女に大和撫子の雰囲気をまとわせています。
ネックレスとピアスのセットはご主人からのプレゼントだそうです。「ピアスを片方なくしちゃってね」と数日前のことを話してくれました。
職場に着いて、お手洗いで鏡を見るとピアスが片方しかありません。
周囲を探しましたが見つかりません。家から駅まで10分ほど歩いて電車に乗ったので、途中で落としていたら絶望的です。
帰り道でもずっと下を見ながら歩いて、ため息をついて家に入りました。
夕食の支度をしていたらご主人が帰宅。「公園を通って帰ってきたら、これが落ちてたんだよね」手のひらにピアスが一つ。急いでもう片方のピアスと比べてみます。色も大きさも同じ。「私のだ」「やっぱりそうか、そんな気がしたんだよね」
朝から何時間もたっているのに、誰にも踏まれず、他の誰かに拾われることもなく、再び彼から渡されるなんて新婚夫婦らしいロマンティックな出来事です。
真珠は貝の中に虫や蟹、砂粒などの異物が偶然に混入して、異物を核として巻きながら真珠層を大きく成長させて天然真珠ができます。刺激物を自らの力で無害化する自己防衛の働きから美しい真珠が生じるかと思うと愛おしい。
紀元前から世界中の海や川で色々な種類の貝の中に真珠は発見されています。古代の人々は真珠は、神の涙,龍が吐き出した雨粒、女神誕生の際の雫(地域によって様々ですが)等が貝の中に入り、月の光が成長させて出来ると考えられていました。15世紀になっても科学者たちは自然現象の謎が解明できず、真珠は水からできると信じられていました。ところが14世紀にペルシャの詩人がこんな詩を残しています。
かの輝く貝殻に学び、汝の敵を愛し、汝に憂いをもたらす傷を真珠にしまい込め
時に感性の方が化学よりも真実に近いこともあるのですね。