少し落ち着いたころに彼はタイミングを見計らって、
「では、質問を変えよう。君は働くときに誰の役に立ちたいのかね?」
誰かの役に立つ働きぶり?
それは勿論お客さんの為だと思うのだ。自分以外の人に役立ちたい――。
そう、思って僕は自信満々で答えた。
「お客さんや周囲の人の為ですね。相手の役に立ちたいです。」
「それはなぜかね?」とすかさず、しかもあっさり切り返された。鋭いくらいだ。
「それで喜ばれたら嬉しいと感じるのが人の本心じゃないですか。」と少し興奮気味で答えた。
「ああ、その通りだ。その姿勢は忘れずに居て欲しい。出来れば、見返りを期待せずに臨む事だ。」と嬉しそうに答えてくれた。
見返りについては意識して居なかったので驚いていると、
「相手に喜ばれ、たまたまでも見返りがあった時には常にその事を思い出して尽くそうとする者が居る。見返りを目的にしては本来の仕事の目的を見失ってしまっている。では、本来の仕事をこなす為に必要な事柄は何か分かるかね?」
「・・・コミュニケーションですか??」私が一番気にしている事でもある。
「そうだ、それもある。だが、それだけではない。他にチームワーク、自己啓発、人材の育成などがある。」と満足そうにうなずいている。
「そっか!人の役に立ちたいと行動した時には全部必要な事がはっきりするんだ!」私はことわざの『目からウロコ~』の意味をあらためて理解した。
「はっきりしたからには、どうするのかね?」とまたしても質問されてしまった。
私は「目標を持って取り組みます。」と答えてコーラを飲んだ。
彼は笑みを浮かべながら、
「ひとつだけ覚えておいて欲しいことがある。コミュニケーションを行う時は、相手が理解出来る言葉や手段を使わなければ伝わらないという事だ。情報や君の思いを伝えるだけではない。相手にその意味が伝わり、互いに理解出来たと感じられなければ信頼できる行動には結び付かないものだ。互いに信頼できれば、多くを話さずとも自然に普段から会話が増える。コミュニケーションの目標は相手からコミュニケーションを求められる機会を増やすことだ。」と楽しそうにアドバイスをしてくれた。
私は、目標のハードルがまた一段、高くなるのを肌で感じ苦笑せざるをえなかった。
つづく