昨夜のNHKBSプレミアム英雄たちの選択・九戸の乱(山城)について、以下に感想を記していきます。
まず感じたのが、出演した博識者たちがあまりにも九戸政実が東北の戦国大名であることにこだわっていたことに疑問を感じました。当時の地方大名たちは、別に東北でなくても全国を統治すべきだった足利幕府が長年無力化していたため独立性が強く、兵農分離もどこもそれほど進んでいなかったからです。だからこそ織田信長は経済的にも戦略的にも優位に立って中央で台頭できたわけであり、豊臣秀吉が最後に対戦した相手が東北にいたということで、必要以上に見下したり逆に気を使うようなコメントは、東北にその時代を生きた人たちに失礼だったように感じました。
要は秀吉は自身を頂点とした中央集権統治を実現したかったわけで、それは逆に言えば地域の事情に応じてそれぞれの大名たちに一定の自治を認める地方分権統治を絶対に認めなかったということです。ですが結果的に徳川家康が構築した地方分権統治のシステムの方が、265年にわたる平和な世が継続したわけですから、秀吉がやったことは新しいように見えて、実は日本国の本当の実情にフィットしていなかったことになります。また秀吉の中央集権統治とは彼個人に権力が集中し過ぎたため、病死した途端にあっけなく崩壊してしまったではありませんか。これは現代社会の企業に置き換えてもわかることで、組織が大きく拡大すればトップの目が届かないようになるのは当然であり、そのためには権限を委譲することが不可欠だと言うことです。まあこの小田原征伐や九戸の乱の数年前に起こった九州平定や四国平定は地方分権統治の考え方(理想)を家康と共有していた豊臣秀長が健在でしたから、九戸の乱のような残酷なだまし討ちのようなことはなく、島津氏も長宗我部氏も豊臣政権の大名として無事に生き残っていきました。秀吉の構築した組織とは自分個人とだけに繋がる組織であり、家康がつくったような跡継ぎが多少ボンクラでも崩壊することのない本当の組織ではなかったというわけです。
どうも今回の番組は準備不足で、テーマの本質がわかりづらい印象でした。