【商標】令和5年(行ケ)10141「知財実務オンライン」<宮坂>

9類、41類、45類⇒識別力×

<出願人の主張>
①4万人超の知財関係者が不使用
②商品役務の特徴を間接的に表示するだけ
③造語
④審決が挙げる使用例も出所表示する
⑤定期刊行物の題号と同様に、内容と同時に出所も表示する

<判旨抜粋>
①商標出願人の「4万人超の知財関係者が不使用」という主張について
⇒本願商標は「知財実務」と「オンライン」の文字の意義及び「オンライン」の文字を末尾に付する標章の一般的な実情からみて、商品の品質又は役務の質を表示したものと認識されると認められ、この認定は、第三者が使用する事実があれば更に裏付けられるということはできても、第三者が使用する事実がないからといって左右されるものではない。

②商標出願人の「商品役務の特徴を間接的に表示するだけ」という主張について

③商標出願人の「造語」という主張について
⇒本願商標は「知的財産に関する実務の情報をオンラインで提供するもの」として需要者に認識され、その内容に一定の幅があるとしても、いずれにせよ商品の品質又は役務の質を表示したものと理解されることに変わりはなく、一定の意味を有しない造語であるとはいえない。

④商標出願人の「審決が挙げる使用例も出所表示する」という主張について
⇒別紙2の各事例は、「オンライン」の前の文字がそれ自体として出所識別標識として機能しているものを除き、「オンライン」の文字を付すことによって出所識別標識として認識される態様で使用されているとは認められない。事例16の「神社仏閣オンライン」に係る甲3のSNSの投稿は、この認定を左右するものではない。

⑤商標出願人の「定期刊行物の題号と同様に、内容と同時に出所も表示する」という主張について
⇒新聞、雑誌等の定期刊行物の商品については、個人の著作物である書籍と異なり、主として特定の新聞社・出版社が継続的に編集・発行するものであって、その内容は新聞社・出版社ごとに異なり(題号と関わりの薄い記事が掲載されることも含まれ。)、その題号が品質・内容を示すものであっても出所識別標識としての機能を果たし得るという、他の商品と異なる取引の実情が認められるものである(原告らの引用する大審院昭和7年6月16日判決も、これと同旨と解される。)。
 そして、このような定期刊行物を電子化した電子定期刊行物についてはともかく、本願指定商品役務について、定期刊行物と同様の取引の実情があると認めるに足りる証拠はない。
 例えば、オンラインによる映像等の提供を内容とする指定役務⑩、⑪についていえば、YouTubeなどに代表されるインターネット上の動画投稿・共有サービスは原則として誰もが簡便に動画を投稿できるものであるから、「知的財産に関する」、「各回異なる内容のものが定期的又は逐次的に提供される」といった限定が付されたからといって、新聞、雑誌等の定期刊行物と同様の取引の実情があると認めることはできない。
 原告らは、商標審査基準改訂における放送番組の番組名に係る議論に言及して、「番組」に関する商品・役務のうち「各回異なる内容のものが定期的又は逐次的に提供されること」が明確になっているものは定期刊行物と同様であると主張するが、そもそもオンラインによる映像等の提供については、映像等の内容、性質に多様なものが含まれることからすれば、「放送番組」の一部がオンラインでも提供されている現状を考慮しても、放送番組そのものと同様の取引の実情があるとは認められない。
 また、知的財産に関する定期的に発行される電子出版物(指定商品⑤)についても、このうち個人の著作する書籍に相当するものについては、直ちに新聞、雑誌等の定期刊行物と同視することはできない。
 なお、近年の電子技術や通信技術の発達に伴い、情報コンテンツ及びその伝達手段が拡大・多様化しており、新聞社・出版社による「定期刊行物」、テレビ局・ラジオ局による「放送番組」といった従来からの商品役務とそれ以外のオンラインにより伝達される情報コンテンツとの境界も変容しつつあることは事実であるが、そうであるからといって、従来からの取引において長年にわたり形成された「定期刊行物」に係る取引の実情が、オンラインによる映像等の提供について直ちに認められることにはならない。

 

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https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/967/092967_hanrei.pdf