大阪地判令和3年(ワ)10032【チップ型ヒューズ】<武宮>

*実験合戦となり、同一の作用効果が認められなかった。
⇒均等論第2要件×

被告製品の「密閉された空間」と本件発明の「消弧材部」の各作用効果の対比自体を行うものではない…、被告…試験報告書…と相反する結果。

※なお、構成要件を一部欠く場合も均等成立し得るという一般論を判示した。(★東京地判H24(ワ)31523<長谷川>では、構成要件の一部を欠くイ号製品につき均等成立!!)

(判旨抜粋)
 原告は、被告製品の構成cの「接着剤で接着することにより形成された密閉された空間26」が本件発明の構成要件Cの 「消弧材部」と同一の作用効果(消弧作用)を有することを示す実験報告書等…を証拠提出する。これらは、被告製品と同じ構造を有する製品につき、ヒューズエレメント部が密閉構造である場合と、非密閉構造である場合又は端子一体型ヒューズ素子を取り出して遮断試験用基板に実装して遮断試験を行った場合の、各アーク放電の持続時間を対比した結果、密閉構造のものは、非密閉構造等のものに比べ、同持続時間が2分の1ないし3分の1になったというものである。しかし、これらは、被告製品の「密閉された空間」と本件発明の「消弧材部」の各作用効果の対比自体を行うものではないことに加え、被告が証拠提出する試験報告書…によれば、被告製品、被告製品に消弧材部を設けたヒューズ及び被告製品のヒューズ素子のみを対象として、アーク放電の持続時間を記録したところ、被告製品が最も同時間が長かったという結果であったことが認められ、被告製品とヒューズ素子の各アーク放電の持続時間について、原告が提出する実験報告書…と相反する結果となっている。そうすると、 原告が提出する前記証拠その他の事情等から、被告製品の構成cが本件発明の構成要件Cと同様の作用効果を有するとまでは認め難いから、少なくとも第2要件が満たされるとはいえない。

 対象製品等が特許発明の構成要件の一部を欠く場合であっても、当該一部が特許発明の本質的部分ではなく、かつ前記均等の他の要件を充足するときは、均等侵害が成立し得るものと解される。これに対し、被告は、対象製品等が構成要件の一部を欠く場合に均等論を適用することは、特許請求の範囲の拡張の主張であって許されない旨を主張するが、構成要件の一部を他の構成に置換した場合と構成要件の一部を欠く場合とで区別すべき合理的理由はない…。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/171/092171_hanrei.pdf