☆退廃的日常〜常態 | ☆ 占い師・画家…人間のようなもの ☆

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画家・伝説の魔術師☆ 相馬 英樹 の愉快な毎日♪

(※この日記は10年前から7年前頃までの日記を基にした回想録です。)


~前回からの続きです。


一般病棟…とは言っても保護隔離病室じゃないだけ。

で、男子閉鎖病棟。


朝、『相馬君、相馬君』と

カッちゃんが起こしに来る。


『何、何?』

『煙草、吸いに行こう。』

『煙草?無いよ。』

『俺のあげるから。』


早起きして、朝の看護士巡回が始まる前に、

3階洗い場にある鉄格子付きの扉を開け、

刺青のK山さんが隠し持っているライターでこっそり火を点け一服の時間。

至福のひととき。


8時15分から朝食なのだが…

此処は精神病院。

7時半頃になるとホールの東側には長蛇の列。


ホール前方のステージの様に一段高くなった所から、

並んだ者順にセルフサービスで配膳されるのだ。


早くから並んでる人は、いつも決まって居て、

その人達は多分、この病院で一生を終えるであろうと思われるタイプ。


何処がそう思える要素かは自分でも解らないが…

『何だか動物園みたいだな』、と思った。


カッちゃんは早く並ぶタイプの男で、

普段はニコニコと明るい表情をしているが…

そこに並んでいる時の眼は、一触即発。

ちょっと慌てたおじさんが割り込もうものなら…

物凄い形相で殴りかかって行く。


僕やK山さんは席に座ってテレビを観たり新聞を読んだり、

たまにK山さんは並んでる人達を見て、

やれやれ…という表情で苦笑いしていた。


割り込んだおじさんを突き飛ばしているカッちゃんを見て、

『ありゃ死ぬまで病院だな。』と言っていた。



そんな或る日、K山さんは男女混合の開放病棟へ行く事になってしまった。

朝の一服のライターは、

T嶋さんという礼文島出身の元警察官の人に引き継がれた。


K山さんは此処では僕にとって一番頼りに成る存在だった。


心細かったが、仕方が無い。

今度は、K山さんの舎弟みたいな感じの、

僕より10歳位歳上のI森さんという人が仲良くしてくれた。


閉鎖病棟だったが、僕やI森さんは午前中に外出許可を取れば

午後には財布と煙草を持って外出する事が出来た。


入院患者の入浴日は決まって居て、

週に二回。


ただ、食事の列と同じで数時間前から行列が出来る。

やはり行列の人達は、

この病院で一生を終えるであろうと思われるタイプ。

つまり、そういう意味でヤバそうな感じの人達ばかり。


先に入った人が浴槽で下痢糞を漏らしたり、

石鹸を喰って浴槽に吐き戻したり。


そんな事が日常茶飯事なので、

僕が入る頃には風呂の水は必要以上に濁って居り、

また濁って居なくても清潔な印象が持てない。


実質的に浴槽のお湯に浸かる事は出来ず、

身体だけ洗って出て来るしかないのだ。


そこで仲良しのI森さんと僕は、

夕方に病院から外出をして銭湯に浸かり、

脱衣場で缶ビールを2~3本飲んで帰って来るのが日課だった。


当然、

坑精神薬や坑鬱剤、安定剤や眠剤を多量摂取している僕達が、

外出時にアルコールを摂取して良い筈は無く、

院長にバレたら隔離病室に入れられるのは必至だった。


でも普通に、看護士は気付いてて、

『問診がある時は一本にしときなよ。』

なんてウインクしながら言ってくれた。


~つづく