変動金利引き下げのニュース | 池上秀司のブログ

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以下について、補足をしたいと思います。

住宅ローン変動金利最低に 大手4行が1月引き下げ
2015年12月30日 17時35分


 大手銀行が来年1月に適用する住宅ローン金利が30日出そろった。三菱東京UFJ、三井住友、みずほ、三井住友信託の4行は、変動型の最優遇金利を過去最低に引き下げた。インターネット専業銀行などとの競争激化を背景に、申し込みの増える来春に向けて魅力的な金利を提供し、顧客を獲得する狙いがある。

 三菱東京UFJ銀行は変動型の最優遇金利を2年5カ月ぶりに引き下げ、現行よりも0・15%低い年0・625%にする。三井住友、みずほ銀行も0・15%下げて0・625%にする。

 三井住友信託銀行は、1月15日から0・025%引き下げ、過去最低の0・6%で提供する。

上記の記事が昨日流れましたが、これに該当するのはこれから借り入れをする方で、今借りている方ではありません。

住宅ローン金利を考える際は、以下の3点を確認します。

①店頭金利 = 金利の定価
②引き下げ※ = 金利のサービス
③適用金利 = 実際に使う金利

算数で表すと

①-②=③

となります(※記事では「優遇」となっていますが、今では「優遇」という言葉は使われておらず、「引き下げ」「軽減」という表記に変わっています)。

実際にお客様が使う金利が変化する要因は

①の店頭金利が変化する
②の引き下げ幅が変化する


の二種類が考えられます。そして、それぞれの違いは、

①の店頭金利が変化する場合=「定価」が変化するので、変動金利で借り入れている方全員に関係する

②の引き下げ幅が変化する場合=新規で購入する場合の「サービス額」が変化するので、これから変動金利で借り入れする方にのみ関係する

ということになります。

そこで、冒頭のニュースですが、今回は①「店頭金利」が下がるのではなく、②「引き下げ」幅が拡大するので、今変動金利で借り入れている方は変化なく、今後借り入れる方に適用されるということになります。

具体的には、店頭金利は2009年から2.475%です。2013年からは引き下げ幅は1.7%。ですから、適用金利は0.775%でした。来年1月からは店頭金利は変わらず、引き下げ幅が1.85%(+0.15%)となるので、適用金利が0.625%となります。

そして、ついでといってはなんですが、1999年からの変動金利の推移をグラフにしました。




一目瞭然、金利の引き上げ幅が拡大されたことによって、お客様のお使いになる金利が下がっているということです。今は2006年まで店頭金利(定価)は0.1%高いのですが、引き下げ幅(サービス)が拡大されているので、適用金利(実際に使う金利)が下がっています。

当ブログで「変動金利は日銀の金融政策の影響を受ける」と書いてきましたが、そこで指しているのは「店頭金利」です(グラフの緑の線)。引き下げ幅は銀行の営業戦略で決まります。金利引き下げ幅が拡大されてきたということは、それだけ競争が激化してきたといえるでしょう。

ですから、借り入れした後の金利の変化については、当ブログで散々記述してきた通り、日銀の金融政策をチェックしていけばいいということになります。

これは大事なことですし、ニュース記事ではここまで書けませんし、なにより、世間のFPは変動金利のプラスの情報は一切提供しませんので、大晦日ですが補足しておきました。

それでは、今年一年、大変お世話になりました。来年も今年と変わらないスタンスで業務を行いますので、何卒、よろしくお願いいたします。皆様、よいお年をお迎えください。

【追伸】
拙著「住宅ローンの教科書」がお陰さまで重版となり、来年2月頃に改訂版が発売される予定です。大きな改訂はありませんが、「住宅ローンと教育費の関係」について追加します。教育費のデータなども記載してありますので、「これから子育てを」という方達のお役に立てれば幸いです。