生命保険の考え方あれこれ 続き | 池上秀司のブログ

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前回の続きです。

終身保険プランの月払保険料は21,780円。終身保険部分を定期保険にすると、月払保険料は5,156円。ひと月16,624円削減できます。では、その16,624円を30年間運用したらどうなるかを考えてみましょう。運用原資は598万円です。

預金や国債といった元本保証の商品の金利は今現在1%未満。16,624円を1%複利で30年運用しても678万円(受け取り時20%課税)にしかならず、終身保険プランの解約返戻金808万円には届きません。低金利の今では、「保険料を掛け捨てる」ということの影響の大きさが、これでおわかりいただけると思います(なので、付加保険料とか手数料など、どうでもいい話)。

保険の利回りが下がっているといいますが、それは取りも直さず預貯金の金利も下がっているのですから、この場合は、将来の金利上昇に賭ける必要があります。ですから、以下の助言など雑なのです。

「学資保険はいらない」は本当か!? その2

元本保証のない投資商品は808万円どころではなく1,000万円、1億円になる可能性がある反面、808万円に到達しない可能性もあります。後者の場合は、洒落になりません。

65歳未満で保険事故が発生した場合を考えてみると、終身保険プランは受け取れるのは保険金だけですが、定期保険プランなら保険金とその時点まで積み立てたお金(保険料の差額)が受け取れます。65歳以降は、終身保険プランは解約しなければ死亡保険金もしくは解約返戻金の残りの金額が、定期保険プランはその時点の預貯金等の残りがご遺族に引き継がれます。

どちらの選択にも一長一短があるので、こういった比較を通じて、あとは各個人の生き方、考え方に合わせていけばいいのではないでしょうか。「自分は確定拠出年金や投資信託を活用して資産を増やそう」と思うなら、掛け捨ての保険を選んでいただけばいいでしょう。

その場合、最近はタバコを吸わない、BMI指数や血圧が保険会社の指定した範囲内であれば保険料が安くなる「非喫煙優良体」という料率があります。参考までにチューリッヒ生命で試算をしたら、定期保険が2,550円、収入保障保険が1,960円、合計4,510円と前述の5,156円よりも10%程度安くなります。目標利回りを少しで低く設定できるので、安心度は増すでしょう。やはり健康第一です。

もちろん、「投資商品でリスクを負わずに、終身保険を活用して掛け捨てを確実に減らそう」と考えてもいいでしょう。その際、前述終身保険プランは払込期間中の解約返戻金を少なくしている「低解約返戻金型」で試算しているので、払込満了までキチンと払い込めるかどうかというのが最大のポイントです。

月々の保険料が気になるならば、保険金額を下げてもいいでしょうし、負担をクリアできると考えるならば、1,000万円といわず1,500万円、2,000万円と保険金額を増やせば、収入保障保険の保険期間を60歳や55歳と短くして保険料を削減し、さらに掛け捨てを少なくするということも可能になります。

今回取り上げた終身保険プランは、解約返戻金が1,000万円、1億円に到達しませんが、その時期に到達すれば808万円というお金を手にできます。65歳時点で解約しないでそのままにしておいた場合は1,000万円の保障が継続されていますし、解約返戻金も増えていきます。運用成果を期待したいなら、変額保険(終身型)も選択肢に入ってきます。

「貯金があれば医療保険は要らない」という方達がいますが、では、その貯金をどうやって貯めていくかまでは触れません(踏み込みが甘い)。預金商品では利回りが低いのに保険料を掛け捨てては、なかなか貯まりません。ここで取り上げた終身保険プランのようなカタチでお金を貯めていってもいいのではないでしょうか(まぁ、現実にはただの保険嫌いなので、こういうプランも否定するでしょう…)。掛け捨てない医療保険メディカルキットRという商品もあります。

「保険はギャンブル」でお馴染み、自称保険コンサルタントの後田亨さんは「保険は掛け捨てにして、投資商品で運用した方がいい」とおっしゃいます。「払込期間中に解約した場合に、解約返戻金が払込保険料を下回っているから損だ」という理屈ですが、投資商品だってその状況になる可能性、もっといえば保険の解約返戻金以下になっている可能性もあります。それこそがギャンブルです。

月々の負担が重荷になり保険を続けるのが困難になることもあるでしょうが、投資商品の積立を継続するのが困難な状況もあるかもしれません。そんなときに元本割れしている可能性だって当然あります。

しかし、彼はそれを指摘すると自分の仕事に差し支えがあるので、一生それはいいません。後田さんはお客様のことなんて考えておらず、保険を止めさせることを主張しないと自分の立ち位置を確保できないだけのこと。彼が主催しているセミナーの講師陣を見れば一目瞭然。自分の主張のために、将来の解約返戻金を確実に上回る提案をせず、とりあえず保険を解約させて損を出させるという暴挙などもっての外(日経新聞のコラムにて実践)。下衆の極みです。

私は上記の「終身保険プラン」「定期保険プラン」のどちらの方向性でも構わないので、お客様がどんな考えなのかをお聞きして、その方針に合わせて商品を選んでいけばよく、そうやって対応しています。

一方で、エセ専門家の「保険は掛け捨て。貯蓄型は損だ!」という論調は到底受け入れがたく、それをいうなら今回私が提示した、終身保険プランを「確実に」上回る方法を示してください。ただ、彼(彼女)らはそれをしませんから、それはただの無責任にしか思えません。