「学資保険はいらない」は本当か!? その3 | 池上秀司のブログ

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学資保険や住宅ローンに関する投稿をするのに過去の金利推移を調べましたが、興味深かったのは預金金利です。教育資金の準備をお考えの方達には、ぜひそれを確認していただきたいと思います。

以前書いた記事ですが、日本生命の学資保険は12,180円を18年間払い、その後5年掛けて合計300万円を受け取ります。厳密には18年後に300万円になっているのではなく、その後学資金として取り崩していく反面で最終的な受取総額は300万円になります。ここではわかりやすく、18年後に300万円として考えますが、12,180円が300万円になるというのは金利1.75%程度です(半年複利・20%課税:以下同条件)。

この12,180円には保険料が含まれています。厳密にはいくらかわかりませんが、300万円・20年の定期保険の月払保険料が675円なので、12,180円からそれを引くと残りは11,505円。これが18年後に300万円になるということは金利2.48%程度です。

例えば普通預金は現在0.02%。毎月11,505円を0.02%で積み立てると18年後は248.9万円です。投資元金が248.5万円なので18年でたった4千円の利息です。仮に、積み立てはストップしますが、その248.9万円をそのまま0.02%で預け入れたままにした場合、50年後は251万円で利息は2万円。ですから、300万円になるのは相当先です。まぁ、私自身もこの0.02%が永遠に長く続くとは思っていませんが、0.02%という金利がどれだけ低いかは簡単にご理解いただけるでしょう。

こういうと「普通預金は将来金利が上がれば挽回できる」という反論が返ってきそうですし、それはその通りですが、以下は私が生まれた昭和43年から今年まで45年間の普通預金の金利推移です。

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これらはこちらで確認できます⇒総務省統計局(14-1:主要金利水準 参照)

2.48%を越えているのは私が幼稚園から小学校の頃の5年しかありません。バブル絶頂期の1990年で2.1%程度。これらからいえるのは、普通預金で学資保険並みの金利を獲得するのは簡単な話とはいえず、「日本で過去に例を見ない高金利の継続」に賭けるしかありません。

定期預金にすればこれよりはマシですが、現在どこを見渡しても1%未満です。個人向け国債はどうなっているかというと、現在変動3年だけを募集していますが0.1%です。こう考えれば、学資保険は低金利の中、長い期間高い金利を約束している金融商品といえます

先日美容院で読んだ「女性自身11月19日号」では、経済ジャーナリスト(?)の荻原博子さんがこの話題に触れていて、以下のように書いてありました。

子供が生まれてすぐに加入した場合、大学入学までの18年間、途中でお金を自由にできないリスクと返戻率を天秤にかけてみましょう。

考え方は人それぞれとはいえ、これは逆ではないでしょうか?お子さんが大学に入るというのは予見できます。どうしようもない事情があれば別ですが、そうでなければ途中で別の用途に使ってしまうことの方がリスクの高い選択ではないでしょうか。

お子さんの誕生後から積み立てを始めるからこそ時間が味方になり、月々の積立額が少なくて済みます。18年後300万円を貯めようと考えた場合、低金利の今でも預貯金なら月13,000円台の額を確保すれば済みます。それが学資保険なら前述のように12,000円ちょっとで済みます(30歳・男性の場合)。

一方、10年後から始めた場合は8年しかないのでひと月30,000円程度の額が必要です。期間が短いから利息収入も減る可能性があります。こちらの方が客観的に見て大変です。「大学進学」と目的がしっかりと決まっているのですから、それに合わせた計画的な行動にまでケチをつける必要があるのでしょうか。片側のデメリットだけ過剰に取り上げ、対案のデメリットは無視するというただの偏見にしか見えません。

私は、教育資金はコツコツ貯金で貯めていただきたいと思っています。

これが間違いです。荻原さんがどう思うかは必要ありません。どうやって準備するかは各ご家庭の考え方で決めるもの。そして、その判断材料として数字を出すということが求められます。以前の投稿にもいえますが「とりあえず保険を否定していればいい」という論調の場合、必ずといっていいほど具体的な数字が一切出てきません。それは助言の域に達していません。

保険の利回りはバブルの頃よりも下がっていますが、預金金利も下がっています。確かに預金金利が上昇する可能性も、それが継続する可能性もある訳ですが、それをどう考えるかはあくまでご本人(ご家族)です。その考えを確認をせず、一方的に学資保険を否定して利回りの低い預貯金に安易に誘導できる方達は、その仕事のやり方から考え直すべきではないでしょうか。

【参考】
「学資保険はいらない」は本当か!?
「学資保険はいらない」は本当か!? その2