
「一万両の首 鍵屋ノ辻始末異聞」木内一裕
講談社
5月17日に読了していて感想メモも残していたのにずっと放置😅
始まりは寛永七年備前岡山藩…
寛永七年はどんな時代だったか?
家康が亡くなって14年将軍は家光、先代将軍秀忠は2年後に弟忠長は3年後に亡くなる、そんな時代
…主君の寵愛を受ける小姓が、友人でもあった河合又五郎に衆道を強要し、それを拒否した又五郎に対し逆上し刃を向けてくる
理由あって藩内で難しい立場にある河合家
(この過去の事件が後の騒動の火種となる)
小姓の策略で藩主に讒言でもされれば、又五郎(父も)の選ぶ道は死しかない
小姓を殺し、父に江戸へと逃れるよう諭された又五郎は国を出る
江戸に出た河合又五郎は、繋がりを付けた旗本・兼松又四郎に匿われる身となる
これが旗本と外様との争いの元になって行く
江戸幕府開府から15年が過ぎ将軍の世襲も滞りなく行われてはいるが
徳川を支え続けた譜代大名や旗本と関ヶ原以降に徳川の家臣となった外様大名との関係は危うい緊張感の上に成り立っている
武士であることへのつまらない見栄と矜持、老いてなお未だに戦いの炎を胸に秘めたままの関ヶ原の生き残りたち
これに加え江戸には関ヶ原以降に次々と藩を改易され浪人となった者達が溢れていた
旗本の元へ逃げ込んだ河合又五郎をどう扱うか?
問題を解決する方法を装いつつ、それぞれの思惑(幕府、旗本、外様大名、名誉と金をかけ戦いの駒となる浪人達)がぶつかり合う新たな戦いが始まる
1章 下手人 河合又五郎
2章 旗本 兼松又四郎
3章 側衆 松平伊豆守
4章 浪人 市岡誠一郎
4章の話ですが、松平伊豆守以外は他の章にも登場(特に市岡は主人公?とも言えるくらい)
幕府を支える冷静沈着な松平伊豆守信綱
ただの乱暴者と思われていた旗本・兼松又四郎が実は熱い男であったり
剣の腕は相当なものであるが過去を多くは語る事なく市井に上手く溶け込みながら、妻を第一にと暮らす、市岡誠一郎
市岡は義に熱い剣客という面と妻に優しい夫という両面が描かれていて、市岡が登場する場面の話は面白い
全てが終わった後に
日本三大仇討ちと言われる
「鍵屋の辻の決闘」へと繋がる
斬り合いの場面も迫力があるが、それ以上に怖いのが
江戸城内本丸御殿黒書院に集まり密談をする大物たち(松平伊豆守信綱、柳生但馬守宗矩、大久保彦左衛門忠教)
この時代、まだ生きてたのかい!
外様大名では伊達政宗も健在
何かあればいつでも取って代わろうと虎視眈々と天下を狙っている
この時代の江戸幕府はまだまだ盤石とは言えなかったのがよくわかる
史実に基づいた話を上手く小説にしている面白い内容だった