
下垣内教授の江戸 青山文平
「下垣内教授の江戸」青山文平 講談社
2025年1月に読了
江戸時代から明治、大正、昭和と時代の大きな転換期を生き抜いた日本美術の目利きと称された下垣内邦雄が1931年に亡くなった
その死の4年前に新聞記者の単独取材の中で思いがけない発言をする
「俺は人を斬ろうとしたことがあるんだよ」
幕末の武州を舞台に、時代は米からお金を中心としての経済へと変貌する世の中で、終焉を迎える武家社会
豪農の次男であった邦雄が青年へと成長して行く過程で
人を三人斬った事があると言う下垣内家の跡取りである兄(昌邦)の想いを知るために
自らも人を斬る旅に出る
22頁辺りまでは退屈な文章が続きます
私はサーッと流し読みしました(特に問題なかったです)
邦雄の回想に入ると、やっと時代小説の世界に
武州での生活の描写は大河ドラマ「青天を衝け」と似ているので、頭の中で映像化しやすかったです
人斬りの旅に出てからは若い邦雄が旅の連れになる浪人家族の美しい妻に気持ちを奪われる様は可笑しく、また幕末が舞台の小説では扱われなかった当時の地方に多くいた浪人達の生活苦やそれによって治安が悪くなっていた事など興味深い