「乗合船 慶次郎縁側日記」 北原亞以子 新潮社
2014年3月に発売された作品、4月には読見終えていたはず
元同心の慶次郎のシリーズ最終作品
北原亞以子の作品は、全体に流れる空気が上品でいい
目先の幸せや体裁ばかり気にして本当の幸せに気付かない、というような内容の話
「おふくろ」
甘ったれで出来そこなった息子と、身の回りの事も気にせずに仕立て物をずっと続けて暮らしを立てている母のありがたさに気付けない息子
「吉次の値打ち」
早朝吉次の家に女が怒鳴り込んで来た。兄が島送り先で死んだ、無実の兄を殺しやがって!と暴れる女。まむしの吉次と呼ばれる嫌われ者の岡っ引だが、自分の仕事には自信があったが、思い返してみると調べの甘さが出てくる・・・。
最後の「冥きより(くらきより)」
恨みの塊の様になって慶次郎を見張っていた女が、佐七(慶次郎の家の下僕)の優しさに触れて心が揺らぐ。
女は、酔って馬を走らせた武家のせいで夫と娘が身体のきかない不具にされ、息子は死んでしまった。
女は、武家を庇い罪を問わずに事件をうやむやにしたは北町同心の秋山忠太郎だったのだが、女は慶次郎だと勘違いしていたのだった。
この話が絶筆となったとのことだが、病床で書いていたせいか?話の内容が何人称で書かれている?のか分かりづらい。
このシリーズは、登場人物のキャラクターもよく、慶次郎が娘を失い娘の許嫁を養子とする過程や、息子となった彼が迎えた妻との間に出来た孫娘を可愛がる様子、佐七と慶次郎とのやりとりや、まむしの吉次も年を重ねて少しまるくなってきたりとキャラクターもしっかりと年を重ねている事が内容に反映されている作品
シリーズを最初から読み返す価値のある作品
作者が亡くなったことでもう続きが読めないのが残念