小説みたいなもの(短編)--物語・伝説--その4 | ひでごんの独り言&小説みたいなもの

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何か気ままに
書いていこうと思います。

 百合子の話から、数日がたった。
 竜二は、満開の桜を見上げている。
傍らには、冨美子がちょこんと立っていた。
 「綺麗だね。」
 竜二は、とくに返事もしないまま歩き出した。その後を追う、冨美子。
そして、いつもと違う家路であった。冨美子は、黙ってついて歩いている。やや、うつむきかげんで。
竜二も、同様であった。
 どことなく、ぎこちない二人であった。
 二人とも、先日の百合子の話のせいで、へんに意識しているのであった。
 「ねぇ。どこ行くの?。」
 冨美子が、たまりかねて声をかけた。
 「公園。」
 ぼそりと、返事が返ってきた。
 二人のいつもの家路から少し外れた所に、小さな公園がある。竜二は、そこを目指しているようであった。
ほどなく、二人は公園のベンチに座っていた。
 「まぁ、こないだのバーの話、どう思う?。」
 「え?。なに、急に。」
 冨美子は、竜二の顔を覗き込んだ。
 「大変だとは思うんだけど、俺、やってみたいんだ。夢みたいなもんかな。」
 ここで竜二が、冨美子の方を見た。
ジッと見つめ合う二人。
 「でもやるとなると、しばらく東京に修行に行かないとならない。」
 「うん。」
 胸が締め付けられる、冨美子。
そうである。やるとなれば、お酒の事とかを、どこかで学ばなければならない。
それは、1年ぐらいかそれとも、数年か。それを思うと、胸が苦しかった。
 そんなことは、イヤであった。離れたくない。
これからもっと、楽しい思い出を作りたいと、思う冨美子であった。
 でも、夢と言われてしまった。
 好きな人の、夢。それは、かなえてやりたかった。
 自然と、涙があふれ出した。
 「おい、何で泣くんだよ。」
 冨美子が泣き出した理由が解らず、あたふたする竜二。
そして、ポケットにあったハンカチを取りだし、冨美子に渡した。それを受け取った冨美子は、何度も涙を拭った。
でも、涙は止まらない。
 「だって、東京行っちゃうんでしょ。そうなったら、何年も逢えないじゃない。」
 やっと、涙の理由を理解した竜二であった。そして、なんともいえない表情になった。
 「なぁ、それで、えーと・・・。」
 竜二が、口ごもりだした。
冨美子が、涙を拭きながらその様子を見つめた。
 「えーとさ。・・・・・・。待っていて、ほしいんだ。帰ってくるの。」
 真剣な眼差しで、冨美子を見つめる竜二。それを、真正面から受け止めている、冨美子であった。
 「そして、二人で・・・。」
 それは、竜二の精一杯の愛の告白だったのかもしれない。
ハッとして、冨美子が立ち上がった。
 「ダメ!。」
 「ダメって。・・・」
 「違う。それ以上、今は言わないで。」
 涙は、なんとか止まっていた。
そして、照れくさそうに振り返った。その頬は、紅く染まっていた。
 「その続きは、明日聞きたい。ある場所で。」
 照れくさそうに、うつむいた。
 竜二が一つ、ため息をついた。
そして、「それって、学校の桜の下か?。」と、聞こうと思ってやめた。
冨美子が、百合子から吹き込まれているのは明白である。しかし、竜二は言葉をのんだ。
冨美子がそうしたいと言ってるのだから、そうしてやればいい。
 そしてそこで、永遠の愛を告げよう。
そして百合子の思惑通り、伝説になってやろうと竜二は、考えていた。
 ”それも、良いか。”
 「じゃぁ、今日は、帰ろう。」
 竜二はそう言うと、すくっと立ち上がり冨美子の傍らに立った。
二人とも、これ以上ないような笑顔であった。
 そして、次の日竜二は朝からあくびの連続であった。今日の事を考えると、ほとんど寝られないで朝をむかえていた。
 眠気となんとか戦いながら、2時間目をクリアーしたとき、無表情の百合子が、教室に入ってきた。
そして、竜二の席の前に立ち止まった。その顔は、蒼白と化している。
 そしてその口から、信じられない言葉が発せられた。
 冨美子が、死んだと。