小説みたいなもの(短編)--祈り願われるだけの者--その8 | ひでごんの独り言&小説みたいなもの

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何か気ままに
書いていこうと思います。

 大木は、何事も無かったかのようにただそこに立っていた。
夜響は、しばしその大木を睨みつけたままでいた。恵美は、傷口を押さえたまま、夜響を見つめている。
不思議と恵美は、冷静であった。たった今、人外の出来事があったというのにである。
恵美本人も、自分の冷静さに驚いていた。
 姉の日記を読んで、ここで何かが有ったのはわかっていた。
しかし、普通ならとても信じられるような出来事でない。
木が喋り、自分を襲おうとした者がいる。夜響の言葉をかりるなら、自分を喰らおうとした者がいるのである。
 それでも何故か、落ち着いていた。
 何故か、自分はもう平凡な日常に帰れない気がしていた。
何故だろう?。恵美は、自問自答していた。
 答えは、でない。
 不意に、涼しい風が駆け抜けた。
恵美は、夜響から視線を海とは反対側の山へと向けた。
山は、黄金色に染まりだしていた。
 恵美は、驚いた。先ほどの出来事は、いったいどれだけの時間を有していたのか。
いつの間にか、数時間の時が過ぎていた。
 「ありがとう。もういいよ。」
 突然の、夜響の優しげなこえであった。
 ハッとして、夜響に視線を戻す恵美であった。
そこには、初めて見る優しい瞳があった。
 その夜響が、自分の頬に置かれた恵美の手をそっと自分の手を置いた。
冷たい手であった。
 慌てて、恵美は手を引いた。
もう、血は止まっているようであった。
否。傷口が、消えていた。
 「傷口が・・・」
 恵美は、言葉を飲み込んだ。
 先ほどいたエリンの、言葉を思い出していた。
エリンは、夜響の事を、人間じゃないと言っていた。
 「あの二人、・・・」
 恵美は、言葉が思いつかなかった。
 夜響は、少し考えていた。
何となく、気まずい空気が流れた。恵美が、何か言おうとしたとき、夜響が口を開いた。
 「さすが、夜雲の血筋だな。」
 少し、呆れているかのようであった。
口元が、少し笑っていた。
それを見て、不思議と安堵感がわいてくる恵美であった。

 薄暗い、倉庫の中に二人の人影があった。
この場所に似つかわしくない、一対のソファーに向かい合って座っていた。
 エリンと、メグであった。
 「彼奴、何者なんだろう。」
 エリンが、つまらなさそうにつぶやいた。
メグは、腰まである黒髪をいじりながら黙っている。
 「私の、手刀かわされたの初めて。」
 「私の、蹴りも受けられたわ。」
 二人が、お互いを見合った。
 「人間じゃないって、言ってたわね。」
 「うん。」
 メグが、中を見上げた。
何か、遠い昔を思い出しているかのようである。
 「彼、どんな臭いがしたの?。」
 静かな、メグの声であった。相変わらず、中を見つめている。
 「んー・・・。あのね、・・・」
 エリンが、少し言葉を濁らせる。
 「私と、同じ匂いだったのね。」
 「うん。」
 メグが、笑った。その表情は、どんな極悪人も背筋を凍らせるかのような笑顔であった。
 「夜響。」
 メグが、つぶやいた。嬉しそうに。
 「彼奴、何者なの?。メグ、知ってるの?。」
 「えぇ、知ってるわ。悪魔よ。」
 メグが、心底嬉しそうに笑った。
 「エリン。箱より面白い物が見つかったみたいよ。」
 宙を見据えたままメグは、恍惚の表情を作った。
その瞳は、紅く怪しい光をおびていた。