ようそこ、ひでちぇろブログへ。

 

今回は、

「トランスパーソナル心理学」と音楽についてです。

 

分野としてあまり知られていない名前ですが、

 

ロジャーズやマズローの人間性心理学の次に出てきたもので、

マズローと

チェコ生まれのスタニスラフ・グロフという心理学者が提唱し始めたものです。

 

 

理論的には、

個人の心を超えた、集合的無意識とか、神とかの領域を想定していて、

そういう領域まで含めて、自分の心に統合していこうとする試みです。

 

ある意味、宗教の修行に近いです。

 

 

トランスパーソナル心理学におけるセラピーは、

クライアントを変性意識状態に導いて、

今まで自分が切り捨てていた側面を統合していくというものです。

 

例えば、

長らく国際トランスパーソナル心理学会の会長を務めた、

グロフの開発した、

ホロトロピックセラピーの場合、

 

当初はLSDを投与していましたが、

法的に禁止されたこともあり、

音楽と呼吸を使います。

 

クライアントに楽な姿勢を取らせ、

過呼吸な状態と強いリズムの音楽で自我の守りを弱めて

変性意識状態を作り出し、

心の傷や癒されていない深い部分を

表に出します。

そしてそれが自然に収束した後で、

傷の部分が自我に統合されて癒されるという訳です。

 

ここで作り出される変性意識にも段階があって、

 

審美的領域:軽いイメージの世界

 

自伝的無意識の領域:個人の抑圧された過去の感情

 

出生前後の領域:出生前後のトラウマ体験

 

トランスパーソナルな領域:輪廻転生、未来、神との合一等の体験

 

 

という風に、

特にトランスパーソナルな領域を否定せずに、

積極的に治療に用いています。

 

 

ここで音楽の話ですが、

 

こういう、トランスパーソナルな心の領域を体験すると

癒しや治癒が起こるというのは、

音楽の世界にもあるのではないでしょうか。

 

例えば、

ベートーベンの運命。

4楽章は神との合一レベルの光り輝く体験に遭遇できます。

 

マーラーの交響曲第9番

出生前後とは対極の死の淵までを体験できます。

 

ブルックナーの交響曲全般、

自然を通した神を感じることが出来ます。

 

他にもいろいろあるかと思いますが、

 

音楽のすごいところは、何百、何千の人が、

同時にトランスパーソナルな体験を共有できるところです。

 

よく、

この指揮者のここがこうだったとか、

オケが、ホールが等々いろいろな評論を見かけますが、

 

まずは、トランスパーソナルな領域まで含めた

心の深い部分を

同時に体験できることが、

もっとも重要かつすごいところなのではないか、

そして、そこをもっと議論すべきではないか

と思います。

 

そして、

それを積極的に作り出すことのできる

演奏者の側に立てるのは、

幸せだと思います。

 

また、今自分が、

心のどういう領域を聴き手の方々と共有しようと

しているのかということについて

自覚的でありつつ、

演奏していく様にしていけたらと思います。

 

それでは。